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永遠対立関係  作者: P-Rin.
6章 要塞
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6-5 父と息子

 

  一方、ツバサとアルルが逃げた方向にいた魔術士はもう一方の2人組が遭遇した魔術士よりも遥かに優れていた。方方から飛んでくる光線を避けることで精一杯だった2人は逃亡が大変だった。


 「敵を私が引きつけるから、ツバサは先に逃げてて」

 「え、何でだよ」

 「ツバサはあんまり魔術使うと体が危ないんだから。私に任せなさい」


  アルルは階段の踊り場で立ち止まり、魔術士の集団を待ち構えた。そして、高速で両手に溜めた光のエネルギー源を集団に向かって大量に投げつけた。


 「閃光一撃(カエルム)!」


  光の一撃を集団に食らわせ、辺りは一気に眩しくなった。光は目眩し代わりにもなり、アルルは急いでツバサに追いついた。ありがとな、とツバサが簡単に礼を言うとアルルはツバサの背中をドンと叩いた。

  3階まで降りた時、そこには面をしていない1人の魔術士が居た。腕を組みながらこちらのことをじっと見つめていた。その男の周りには面をした魔術士が取り囲んでいた。2人はそこで足を止めた。


 「あ……」


  アルルは男と目が合うと、恐怖で足がすくみいつの間にかツバサの腕を掴んでいた。面をしていない魔術士は右手の人差し指をほんの少し動かした。その直後、アルルが気を失ってツバサの腕から離れた。ツバサは咄嗟にアルルの体を抱き抱えると、その魔術士に向き直った。


 「お前、死んでたんじゃねえのかよ」

 「その少女をここまで連れてきたことだけは誉めてやろう。ツバサ」

 「アルルはお前らなんかにやらない。何を考えている」

 「保護、に決まっているだろう?彼女に何も痛いことなんかするものか。やっと安全な我々の元へ、彼女はやって来たんだ。ちょっとは役に立てるようになったんだな」

 「お前に言われたって嬉しくも何ともない」

 「……連れていけ」


  周りにいた魔術士がツバサとアルルに近づいた。ツバサを無理やりアルルから引き離し、腹に膝蹴りをしてツバサの抵抗を阻止する。


 「やめろ!離せ!アルルに何をする気だ!触るな!」


  魔術を発動させようとしたツバサの腕にすばやく魔術士は防術ロープを巻いた。ツバサは舌打ちをする。途端に今度は足を強く蹴られ、膝からくずおれる。そこを手で思い切り押さえつけられ、ツバサは床に這いつくばったような姿勢になった。1人の魔術士が男に尋ねた。


 「良いんですか?このような事をして。実の息子なんじゃ……」

 「私の組織にも入らないような奴は息子でも何でもない。おまけに女1人守れないような使えない魔術士はな」

 「よくそんなことが言えるな!俺1人に対してこんな大勢でよってたかってよ。馬鹿馬鹿しい」


  ツバサが睨みつけながら叫ぶと、すぐに顔を足で蹴られた。口元から血が飛び散る。その時アルルは既に別室に連れていかれていた。しかしツバサは床に頬をつけながら、へへへと笑って見せた。


 「何だこいつ……笑っていますよ」

 「そうかい。気味の悪い息子が産まれてしまったものだなぁ」



  レイナが目を覚ました時、一番始めに視界に映ったのは格子だった。一瞬このようなプレイがレンは好きなのかと思った。格子の向こうにレンではない茶髪の青年が立っていた(そしてレンの何倍も色っぽくかっこいい青年だった)。パーマがかかったようなロングヘアで、レイナに気づくと、笑みを浮かべて格子を境にしゃがんだ。


 「やあ、お目覚めかい?ニセアルルちゃん」

 「ここは……どこ?私、誘拐されたの?」

 「そう。俺によって誘拐された。ミイラ取りがミイラになるとはまさしくこのこと。君は俺を眠らせようとしたけれど、お馬鹿な君は俺に眠らされた。ごめんね、レイナちゃん。俺もツバサ君から変身魔法を教えて貰っていたからさ。チューしたのはレンじゃなくて俺」

 「どうして、依頼のことを……。ツバサが、絡んでるってこと?」

 「君に依頼をした魔術士は俺のボスだよ。残念だねー、6桁の報酬。まだ捕まっていないんだよ、レン・グレイは」

 「ここはどこ?」

 「俺達の要塞。紹介が遅れたね。俺の名前はカーター・サングスター。ここの組織のトップ3には余裕で入ってる」

 「トップ3?ホストか何か?」

 「どこまでも馬鹿だなぁレイナちゃんは。ホストだったら俺達、相当な接戦になるだろうな。皆それなりにイケメンだからね」


  カーターは長めの前髪をピンで留めて、額と大きな二重まぶたの瞳をあらわにした。レイナは何故かドキリとした。


 「残念ながらホストではないよ。俺は殺し屋のトップ3なんだ。わかる?」

 「殺し屋ですって……」

 「そう。そして俺達が今標的としているのは、君が恋しているらしいレン・グレイさ」

 「別に恋なんかしていない」

 「まあそうだよね。あのレン・グレイに恋している方が頭どうかしてると俺も思うよ。じゃあ君は誰が好きなの?」

 「は?」

 「誰が好き?もしくは……誰が君のことを好き?」


  好きな人は元から居ない。自分のことが好きな人、1人くらいはいるだろう。レイナは考えた。いつも一緒に居た友達の名前が次々に頭の中に浮かんでは消えていった。あのバトル以降、誰もレイナに駆け寄ってくる人は居なかった。応援してくれていた大勢の魔術士達は皆あっという間に帰っていった。


 「……居ない。誰も居ない」

 「ええ?!だって君、あのバトルの時、あんなに大勢に応援されていたじゃないか!俺はちゃんとこの目で見ていたよ?ちなみに君の方の客席に座ってた。まあ相手の方に座ると目立つからこっちに座っただけだけど」

 「多分初めから、友達でも何でもなかったんだと思う」

 「……可哀想な女の子だなぁ。友達が1人も居ない、独りぼっちだなんて。気の毒だよー、本当。君を引き取ってくれる人は居ないかなぁって思ってたんだけど。この危険な場所までやってきてね」

 「引き取ってくれる人が居ないんだとしたら、私はどうなるの?!」

 「ここの牢屋、君に当ててるのちょっと勿体ないんだよね。元々ここはレンを入れる予定だった牢屋だ。君は依頼を達成出来なかった。だからボスにはまずもって見放されているし……あっボスはね、仕事できない魔術士程嫌いなものは無いんだ。……うーん、参ったなぁ」


  カーターは悩んでいるような素振りを見せた。レイナが気の毒過ぎて笑いたくて仕方が無いようだ。口元がずっと笑っているカーターからレイナは視線を逸らした。その時、いきなりサイレンが鳴った。


 「侵入者!侵入者!A棟7階2-2室前!魔力感知!」

 「あれれ?もしかして君を追いかけてきた誰かが居るんじゃないの?俺も顔を拝みに行こうかなー」


  じゃあまた後でね、とカーターは言って部屋から出ていった。レイナの頭に浮かんだのは何故かツバサだった。


 「まさか、あいつが……でもあいつはもしかしたらこの要塞の人達と絡んでる可能性が……」


  1人になって考えることの他にやることがなくなったレイナは、次々に浮かぶ疑問の答えを探した。何故カーター達はレンを狙っているんだ?インビンシブルが結成された時、一番謎めいていたのはレンだった。それまでは学校にも通わず、素性もよく分からない。そしてグレイという名字をアルルさえも知らなかった。

  まだポケットの中に埋まっていたレンの写真を取り出し、レイナは思わず呟いた。


 「レン・グレイって……何者?」


次回は明日22時過ぎに投稿予定です。

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