正義の力
ヴア"ア"ア"アァァァーー!!!!
夜の森に凄まじい慟哭が響き、雷鳴が轟く。
「っ!?なんて力なの!!」
「お前は下がって動きを止めろ」
叫びをあげる人外の足元には少女が横たわっている。地面に伏した力ないその体はすでに命の灯が消えてしまっている。
男女は少女を殺めたその存在に立ち向かう。
「一気に決める。ヨギリ」
「はい!!」
二人が印を結び、ひとつ手を打ち鳴らす。すると男の手に光と共に刀が出で、女の手には弓が現れる。女が弦を引くとそこに光の矢が発生する。
「『四封聖矢』!!」
女が放った矢は凄まじい速さで人外へと向かい空中で4本に分裂する。別れた矢はそれぞれ人外の四肢に突き刺さり背後にあった大木に張り付けた。
「人に害なす悪鬼よ、灰塵と化して散れ」
刀が赤く怪しく光り、男の姿が背景に揺らめく。
「『灰塵の焔』」
人外に音もなく近づき撫でるように切り上げられた焔の斬撃は、大木と共に人外を焼き付くす。
ア"、ア"ア"アアァァァ……
人外は声をあげて燃え尽きていった。
「行くぞヨギリ。力の割りに呆気ないやつだったな」
「えぇ……」
二人は少女を置いて歩き出す。犠牲者は組織が事故死として処理するため、実行部隊の二人はなにもすることはない。彼らを必要とする場はまだまだある。ここもいくつもある出来事のなかのひとつに過ぎない。
ただ女には最後の声がとても悲しく、瞳は最後のときまで一時も少女から離すことが無かったように感じ、心に少しの引っ掛かりを残した。
〔……憐れな怪物よ。次こそ繋いで見せよ〕