8話 望の能力
火の玉をイメージする。それを手から出すイメージを頭に浮かべる。そのまま火の魔法が手から撃たれる。
「単純、単純過ぎるんだよ、大人しくしていれば優しく殺してやるのに。ふへへへへ」
こっちが魔法1発ずつしか撃てないのに対して向こうは何発もの魔法を撃ってくる。それをアレルが防ぐ。
「おい、アレルは攻撃魔法的なのは使えないのか?」
魔法を防ぎながらアレルは
「普通の人間は魔法を使えないんだ。それを自力で使えるようになってここまでの魔法を使えるようになったんだからそれだけで凄いと言って欲しいな。」
と言った。多数の弾丸のような魔法を防ぐアレルの顔はかなり余裕な感じだった。
「ってことは俺があいつに攻撃をなんとか当てるしか勝つ方法は無いのか...」
エリナの様子を一瞬だけ見るがエリナは怯えて動いてない。
「一体何があったんだよ。」
イメージする土を持ち上げてそのまま奴に当てるイメージを。出来るだけ大きく、できるだけ早く。
すると地面が割れて大きい石のようなものになりそのままジンに向かって一直線で飛んで行く。それでも簡単に弾かれる。
「もっと変わったイメージをするんだ!」
分かってる、でもこんな時にどんなイメージをしろって言うんだよ。
「本でいい、本の中のキャラクターの能力のイメージでもいいんだ!僕の防御は今は大丈夫だけどいつ魔力は無限じゃない!」
「本...。そうか!」
俺はアーサー王を思い浮かべる。最近図書室で読んだアーサー王伝説。よくアニメやゲームに登場するのでイメージしやすい。
俺はイメージする。エクスカリバー、アーサー王の剣実物は分からないがアニメをイメージする。光輝く剣を。
気づけば俺の手には光る剣があった。それを振り上げその剣に魔力を込めるイメージをする。
「アレル、避けろ!」
「えっ?」
アレルは驚きながらも俺の前から避ける。
魔法が飛んで来ているがそれより早くイメージする。体の中にある煙のようなものをまりょくのイメージとして剣にそれを注ぎ込む。
「エクス...カリバー!」
ジンが撃って来ている魔法を全て消しながら光が一直線にジンに向かって伸びていく。ジンは全て防御していたがその一撃は避ける。しかし、完全に避けることができたはずだったがジンの右肩が無くなっていた。
その一撃はジンにかなりのダメージを与えたがそれと同時に俺は全ての魔力を完全にその一撃に注ぎ込んでしまった。魔力を一気に使った反動で俺は耐えきれないレベルの喪失感を感じてしまい倒れる。
「僕だけじゃ勝てない!君が居ないと僕は戦うことができない!君が僕を助けるって言ったじゃないか!ここで君は倒れるのかい⁈」
意味の分からないことをアレルが言っている。戦わなきゃ殺される。それは分かっているがもう体が動かない。傷の1つ付いていないはずなのに。これが魔力を使い切るということだろうか。
俺の記憶はそこまでだった。
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とにかくここをなんとかしなければいけない。そう僕は思った。でも僕だけじゃなにも出来ない。ただ防ぐ事しか出来ない。まだ意識があって魔力を使えるのはエリナだった。
「エリナ!望は君のために戦ったんだ!それなのに君は何もしないのかい⁉︎」
「私は...!」
アレルの言葉にエリナが動かされる。
「人に戦わせて自分は怯えてうずくまっていくら能力が少ないからって努力くらいしたらどうなんだ⁉︎」
エリナが立ち上がる。
「私は...戦う!それに私は能力が無いわけじゃない!望は言ってくれた!この世界では料理ができるのはすごいことだって、褒められたことのない私を褒めてくれた!だから怖くても私は戦う!」
エリナは腕を構えて光の弓と矢を作る。それをジンに向かって射る。
「そうだ...君は得意だったね。魔力が小くてできるだけ魔法が撃てるようにすることが。でもなぜだい?なぜ僕のことを助けてくれないんだい?僕は君のことがこんなに好きなのに!」
「だって私はもう、望のことが好きになってしまったから!」
「なんで、なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで!もういい、君も殺すことにするよ。あれだけ僕の近くに居させてあげたのに!」
「何が僕の近くよ!地下部屋に閉じ込めて好きと言うまで出さないって言ってたくせに!」
「黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ、うるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!」
ジンは狂ったように魔法を撃つ。
僕はその魔法を防御するが、どこにそんな魔力があるのか。威力が高すぎてあと数発で防御魔法が壊れそうと言うところで気を失っていたはずの望が剣を持ってジンのところまで飛ぶ。ジンのところまで飛ぶと左肩も切り落とす。切り落とすと望は落ちる。ジンは痛みで気の狂ったかのように飛び木にぶつかり続けて落ちる。僕は落ちた望に近寄ると望は気を失っていた。
近くに落ちてきたジンは死んでいた。
「望は空を飛べないはず...。なのになんで飛べたの?」
心配そうにエリナも駆け寄って来る。そこでエリナは気づいた。魔法で作った物は本人の意識が無くなると消えるのに望が作った剣は残っていることに。
エリナが不思議そうにしていても僕は知っていた。なぜ剣が残っているのか。なぜ望が空を飛んだのか。
「とにかく望を家まで運ぼう。公園の異変を起こした本人を倒したんだ。公園はすぐに人が集まって騒ぎになる。だから空を飛んで家まで運ぶよ。」
「分かったわ」
僕とエリナは望を2人で抱え剣を持って臨の家に移動した。
僕は話さなければいけない。僕が何者で、望達がこれからどうなるのか、望の能力はなんなのかということを...。