7話 第2の異世界訪問者
夢を見た。
エリナと公園に行く。でも、その公園はあまりにも静かで人が居なかった。
それが日曜日の公園とは思えないほど。
公園の奥に行くと人の死骸の山があった。あまりにも残酷で吐き気がした。そして、山の上には人影があった....。
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朝、目覚ましよりも早く目が覚めた。
頭が痛い。気分が悪い。何か夢を見た気がする。思い出せない。思い出そうとするとさらに頭が痛くなる。だから俺は夢を見ていないことにする。思い出すのがいけないことに思えた。
「おはよう。」
着替えを済ませリビングに行くとエリナがすでに朝食を作っていた。
「あ、おはよう望。もうちょっとでできるから。」
エリナが作ったのはフレンチトーストだった。
「この本を見て作って見たの。」
それは料理本だった。基本から本格料理まで。その本が読めたということはエリナが来た世界もどうやら同じ文字を使っているらしい。
朝食が終わりごちそうさまと言い片付けは俺がする。片付けが終わった後に今日はエリナを公園に連れて行こうと思った。その公園はかなり広く子供用の遊具から大人も遊べるアスレチック、池ではボートの貸し出しまでやっている大きな場所だ。昨日買い物に行くだけであれだけはしゃいでたんだから楽しめるだろう場所だ。
準備を済ませて公園へと出かける。エリナは道中なんども色々物に興味を示す。しかし今日はもっとすごいところだと俺は思っている。
「そういやさ、エリナって何歳?」
何を聞いているんだ俺は...。するとエリナは16歳ちなみに誕生日は1月30日だから。
今は12月末。覚えておこう。と思ったがよく考えるとエリナは俺と同じ誕生日だった。
「俺も今16...って同い年じゃねぇか!」
「そうなの?なんか嬉しい。今日なんてデートしてるみたいだし。」
デートみたいと聞いて俺は恥ずかしくなり顔を逸らす。
「どうしたの?」
彼女には自覚がないらしいが...。
そうこうしているうちに公園に着く。俺とエリナは公園に入るが俺は違和感を感じた。日曜日なのに静か過ぎる。それに人が全くいない。
「ここは人が居ない静かな場所ね。望はどこに連れて行ってくれるのかしら?」
エリナはウキウキとしている。俺はこの光景を見たことがある気がした。
「これは...」
嫌な予感がした。俺はエリナの手を引っ張って公園の出口に走る。
「何かあったの、ねぇ、望む?」
出入りに走る。早く外に出ないといけない気がする。何があるかは分からない。けれど頭痛が酷くなる。出入り口に走り公園から出る。
けれどそこは公園の外ではなくて公園の中だった。すぐ後ろを振り向けば出入り口がある。
「なんで...こんな...」
「ねぇ、望...もっと奥に行ってみない?何かあるかもしれない。もしかしたら前に言っていた人かも。」
アレル・ノノフェルト彼女の仕業だと俺も思った。俺とエレナを殺しに来たと思った。
「分かった。行こう...。」
しばらく進むと公園の中心に近く。それにつれて頭痛が酷くなる。心のどこかで行くな。と自分で自分に言っている気がする。
やがて木が無くなり視界が開ける。
そこには人の死骸の山があった。血を流している人の山。骨がありえない方向に曲がっている人、苦しげに呻いている人。
俺はこの光景を知っている。夢で見た。夢の内容を忘れていたんじゃなくてもしかしたら忘れようとしていたのかもしれない。
人の死骸の山の一番上を見る。そこには人影があった。
「なんで...なんであなたが居るのよ!やめて、やめてやめてやめてやめてやめてやめて!...お願い...来ないで....」
エリナが怯えてうずくまる。
「誰か助けてよ...。誰か...誰でもいいから...。」
エリナがパニックになっている。
そして、死骸の上に立っている人影から声が聞こえてくる。
「私だよ!この、ジンを覚えているだろう?クヒヒヒヒ、迎えに来たよ、エリナちゃん!えへっエヘヘ」
その笑いは物凄く不快だった。
「ほら、こんなに人を集めたよ。これで君も能力無しとは言われないよ。フヒヒヒヒ」
俺には何を言っているのか理解が出来ない。人を殺してエリナが能力なしとは言われないという意味が分からない。
「その男は誰だい?どういう関係?まさかとは思うけど恋人とかじゃないよね?そうなら殺すしそうでないなら君のために殺すよ、エリナ」
エリナは怯え、俺はどうすればいいのか分からない。考えろ俺、今、あいつと戦うことができるのは...!
「死ねぇぇぇぇ」
俺は反射的に目を瞑ってしまう。終わったかもしれない、こんな簡単に俺は死ぬかもしれない。魔法が俺に当たり死ぬんだろう。
ドゴォン!
死ぬと判断したその時物凄い衝撃と音が鳴り響いた。目を開けるとそこにはアレル・ノノフェルトがいた。魔法陣のような盾を使って俺を助けていたのだ。
「お前は...ノノフェルト?」
「他の誰に見える?それと僕のことはこの際名前で読んでくれ。アレルと。」
なぜ彼女が助けてくれたのか俺には全く理解ができなかった。
「君は俺を敵って...」
「話は後だ。魔法を使えるんだろ?ならやるべきことは1つじゃないのか?」
アレルは俺に魔法で戦えと言っているのだろう。でもどうして彼女が俺が魔法を使えるようになったことを知っているのだろうか。
「分かった。やってみる。」
俺の初めての魔法の戦いにして命の奪いあいが始まる