6話 休日の過ごし方
目覚ましが鳴る。
今日は休みだがエリナとの約束がある。多分もうエリナは起きているだろう。
「さて...」
目覚ましを止め、着替えをすませる。そして彼女が待っているリビングへ。
リビングに行くとエリナは俺を見て動きが止まる。
「何か変?」
「違うの!望ってあの黒い服しか着ないのかなと思っていたの。」
そういえばエリナの前で私服は初めてだった。今の服装はズボンがジャージ、服は少し厚めのTシャツだった。休みの日は近所のスーパーに何日分かの食料を買いに行くだけなので特にちゃんとした服装をすることは少ない。
「そういえばエリナって服が変わってないけどどうしてるの?」
「どうしてるのって魔法で綺麗にしてるんだけど。」
「他の服を着てみたいとは思わないの?」
「本当はね、いろんな服を持ってたんだけど全部この世界に来るときに置いてきちゃったから。」
「こっちの世界の服でいいなら買ってあげるけど...」
俺は何を言ってるんだろう...。あって数日の女の子に何かを買ってあげるなんて...。本当に馬鹿だ。
「そんな、私、お金はちゃんと自分で稼いで自分の物は自分で買うわ。」
食品は俺持ちだけどな...。そんなことを思うが口にしない。口にはしないが仮に彼女にそんなことを言えば気を使って食べなくなる。本当に自分が稼ぐ方法を見つけて自分で金を稼がないと食べないだろう。それに、会って数日なのにエリナに何かをしたいなんてなぜ思うか分からない。
「君がお金を稼ぐのは難しいかもしれないな...。」
「どうして?」
「この世界は働くにはちゃんとした住所とか電話番号とかいろいろいるんだよ。」
「ジュウショとデンワバンゴウが何かは分からないけどそれは望のを借りるのはダメなの?」
「多分ダメだろ...」
エリナはどうして?という顔をしていたがキリが無さそうなので無理矢理話を変えることにした。
「エリナ、火の使い方が分からないって言っていたよね?」
「うん、魔法で料理なんて大変何だから教えて欲しい。」
教えて欲しいということはまた作るつもりなのだろうか。
「いいよ。教える。」
俺は最後の2つの卵をとって皿に割る。冷蔵庫の野菜室にあるネギを小さく切って割った卵に入れて混ぜる。
「ここから火を使う。」
俺はエリナに火の使い方を教える。エリナはなるほどと真剣に見ている。そこまで真剣に見るほどのものではないと思うんだが...。
「なるほど、使い方は簡単なのね。」
「うん、でも火を消すのは忘れないでね。」
「分かった。次からもっとちゃんとした料理を作るから楽しみにしていてね!」
昨日、俺がエリナの料理を褒めたのが嬉しかったのだろうか。
朝食を終えてエリナが何か言いたそうにしている。やっぱり彼女は分かりやすい。
「どうしたんだ?」
「その、ずっと家で留守番だったからちょっと外に出たいなと思って...。」
確かにエリナはここに来て外に出てない。今頃それに気づく。
「今日、飯の食材買いに行くけど一緒に行く?」
「行ってもいいの?」
「ダメなら言わないさ。」
俺は皿を洗い、準備をしてエリナと外にでる。
「あ。」
「どうしたの?」
「言うの忘れてだけど外で魔法を使うのはダメだからな?」
「分かった、というかその気になれば私よりも魔法が使えそうなあなたがいるのに私魔法なんてそう簡単に使いたくないわよ。でも魔法をもう教えないってわけじゃないからね?」
最後に俺を気遣うような感じのことを言う。
「魔法がエリナより使えそうか...」
「何か言った?」
「いや、なんでもない。早く行こう。」
俺がエリナよりも魔法が使えるかもしれないっていうのは複雑な気持ちになる。
「ついたよ。」
家から徒歩3分くらいのスーパーに着く。しかし、3分で着くスーパーには30分かかった。
最初に興味を持ったのは車。その後も色々興味深々にいろいろな物を聞いて来た。最終的には遠回りをしていたがエリナはとても楽しそうだったので特に問題とは感じない。
店の中に入るとエリナはさらにテンションを上げる。
「店の中では静かにね」
「いろいろあってつい興奮しちゃって。私の世界にはこんなところなかったから。」
落ち着いたようで全然落ち着かないエリナ。エリナは髪の色も服装も違う。他の人から見えたエリナが日本語がものすごくうまい外国人を見えていることを願う。
「さぁ、買い物をすませるぞ。」
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買い物を終え家に帰る。
疲れた。本当に疲れた。
エリナは本当に別世界から来たんだなとさらに実感するほどにエリナはいろんなものに興味を持っていた。なぜ徒歩3分が行き帰りで3時間になるのか...。
「迷惑じゃなければまた連れて行ってね?」
迷惑なはずなのにエリナとの行動は楽しいと思ってしまった。
「本当にどうしたんだろな...。」
「?」
「また、じゃなくて明日もだ。」
「本当に?ありがとう!今日の料理は昨日より頑張るわよ!」
エリナは嬉しそうに言った。それと料理をこれから作るのはエリナに自動的になったらしい。
「あぁ、楽しみにしてるよ。」
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エリナは昼食を作っている。そこで俺はあることに気づいた。
「なぁ、エリナって俺の家に来てから昼飯どうしてたんだ?」
「どうしてたって食べてないけど?」
「じゃあ、これからは冷蔵庫の中勝手に食べていいから。」
「それじゃあ、本当に私居候になっちゃうじゃない?それにお金だって...」
会って数日の人に金の心配をされるとは思わなかった。
「それなら問題ない。今は余裕があるから。」
俺の親は死んでしまった。その財産は俺へと引き継がれた。その後はいろいろあって今俺は1人暮らしをしている。今の状況からすると1人暮らしだったがただ強いかもしれないが。
昼食の後エリナに魔法を教わった。そして発覚、俺は空を飛ぶ力がない。それを見たエリナは少しホッとしていた。
こうして1日が終わる。明日は日曜日。明日は何をするか考えながら寝床に着く。
最初の試練が始まろうとしていることも知らないで...。
「フヘヘヘヘ、この世界にいるんだろ?なぁエレナ?」