逃亡生活
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↑に登場人物の設定などがあります。
「ハァハァ……な、なんだったんだ!?」
黒い龍の襲撃から、からくも逃げられた俺は世界樹の上層部分から中層と下層の間辺りまで逃げてきていた。
「い、一応龍珠さんに緊急通信で援軍を頼んであるし、すぐに母様達が来てくれるだろう!」
そして、1週間が経った。
「だ、誰も来ない……
い、いやまだ1週間が経っただけだ、今頃こっちに向かってるのかも……」
あれから、俺は枝や葉に隠れて移動を繰り返していた。
一度白龍と黒龍を同時に視界にとらえたので、龍の眼で調べようと発動させた途端こちらにもの凄い勢いで向かってきて、焦って逃げたりしていたが、なんとか今のところ逃げる事に成功している。
「くっそー、力を発動させると何かを感知しているのかこっちに来やがる!」
龍の眼は完全にダメだった、かなり離れた所からでも見ようとした途端こちらに向かってくる。
羽も飛ぼうとすると近くに居ると感知されるようだった。
特に白い龍の方が関知能力が高いのか、たまに近くを通っただけの時にすら見つかりそうになった。
「何とかして相手の名前やステータスを確認できれば良いんだが……」
俺は逃げ回りながらも色々試し、出来るだけの情報を集めようとしていた。
「ううう……」
「セ、セレナ大丈夫か?」
「大丈夫か?ですって!?大丈夫な訳あると思っているのですか!?」
「セ、セレナ落ち着いて!」
「ああ、ドライト……どこに行ってしまったの?もう1週間よ!?1週間!!」
「だ、大丈夫だよ?俺と君の子だよ?この間だって、ドラゴンですら捕食すると言う世界樹大ムカデを撲殺してたからな!」
「……は?」
「ほら、この間惜しい所で逃げられたって話したろ?あの時にドライトの前に大ムカデが立ちはだかってな……」
「………………」
「それをみごとな右フックで殴り殺してたぞ!」
「そ」
「そ?」
「それは大ムカデがドライトを食べようとしていたって事でしょうが!あ、貴方はその時何をしていたのですか!?」
「もちろん、見守っていたとも!」
「フン!!」[ドゴォ!!]
「ギャアァァァァ……!」
「ハァハァ……あの人はあてになりません!ドライト……今母が助けに行ってあげますからね!?」
そんな逃亡生活はさらに1週間がすぎたのだった……
「どりゃあぁぁぁ!」[バキィ!]
「ハァハァ……く、数が多すぎる!ブレスか魔法が使えれば……!」
俺は世界樹に住む蜂であるクイーンビーとキングワスプの群れと戦っていた、俺にとっては大した敵ではないのだが、とにかくクイーンビーの数が多いい、それに共生しているキングワスプもだんだん増えてきてうっとおしいし……
針で刺されようが強力なアゴで嚙まれようが俺の龍鱗には傷1つ、つかないのだが数が多すぎて厄介なのだ。
ブレスか魔法を使かえれば一掃できるのだが、そうすると白龍と黒龍が気がついて襲ってくるので、パンチにキックにシッポなどの肉弾戦しか手がないのだった。
「おおぉぉぉ!」[ドガァ!]
「く、くっそー蜜を黙って貰おうとしただけなのに何故!」
蜜盗んで飲んでたんだけど流石に一週間連続だとバレタ、しかもかなり飲んでたので向こうは激怒していた……
いやまぁ自業自得と言えばそうなのだが、これがまた美味いんよ!
あとびっくりしたんだけど、俺のステータスが飲むたびに少し上がってるんだよね、巣に戻り結界内に逃げる為にも俺の力の底上げは必要だと思ったので毎日大量に飲んでいたんだよ!
「どっせぇぇぇい!」[ゴシャアア!]
っと、そんな時だった上空に2つの影を発見し、黒龍がブレスを放つのを見て俺は慌てて回避と逃亡に移ったのだった。
「……ディアン?」
「ハ、ハイ」
「今のは何?」
「い、いやドライトが危ないと思ってですね……」
「そう、ドライトが危ないと思ってブレスを放ったのですね?」
「ああ、蜂共を一掃できたろ?」
「ドライトにも当たりかけたでしょうが!このアホ亭主!」[ゴリィ!]
「く、首があぁぁぁ!」
「しかも、ブレスの影に隠れてまた逃げられてしまいました……」
「セ、セレナ落ち着いて」
「もう良いです」
「え?……い、いやドライトの捜索は頑張ってですね!」
「当たり前でしょう!一人で寂しく彷徨っている息子をすぐにでも我が胸に抱き締めたいのですよ!?諦めなどしません!!」
「な、なら何が良いんだ?」
「貴方では当てになりません、ですからもう良いと言ったのです」
「い、いや全力で探す「両親とお義父様とお義母様を呼びます」……は?」
「ですから、両親とお義父様とお義母様を呼ぶと言ったのです」
「ちょ、ちょっと待って!ならアーゲート達を呼」
「五月蠅い!」[ドガァァン!]
「ブ、ブレスはやり過ぎだとおぉぉぉ……」
「我が龍珠よ急いで両親にお義父様とお義母様の龍珠に連絡して……!ドライトもうすぐ頼りになる方達が来ます、安心するのですよ……!」
「ジジイ共とババア共呼ぶのは勘弁し」[ドガアァァァァァン!]「ギャアァァァ!」
「皆早く来てください……!」
母様が援軍を呼んだなど知らず、さらに1週間経った俺は何していたかと言うと……
「ふぅ……太陽がいっぱいだぜ!」
日光浴をしていた。
丁度良い枝を見つけ、この前バカっぽい黒龍が放ったブレスで蜂が混乱しているドサクサにパクった蜂蜜と蜂の卵、たまに見つける世界樹の果実などを脇に置いてサンサンとふりそそぐ太陽の下に出て昼寝をしていたのだ。
……余裕あるな?って言いたいんだろうけどあれからも白龍と黒龍はしつこくこちらを探していて、特に黒龍は今までと違い何かに憑りつかれたかのように夜も探索する様になったので、こちらも寝ずに逃げ回る事になったのだった。
そんな時にふと気がついたんだけど、あの2頭中層の下の方から下層しか探していないっと。
そこで俺は上層の方に移動する事にしたのだ……そしてそれは大当たりだった、中層の下の方を抜けた辺りから遭遇率がかなり下がったのだ!
……はよ巣に帰れ?いやいやいや、ここでぼーっとしてる様に見えてぼーっとしてるんだけど、ちゃんと作戦も考えているんだよ!
相手は2頭、しかも同時にこちらを探しに出ているようなので、あの2頭が俺の居た巣から出て下層に居る時間は巣に短時間だが隙が出来ると言う事だ。
なら、居ない間に飛んで上層に向かえば良いと考えるんだが長い事飛ぶと捕捉されるんだわ、そして俺が現在居る中層の上の方に居るとバレればこちらに探査が伸びる、だから俺は飛ばずに上層を目指す事にしたんだよ、俺の手足には立派な爪が有るのでそれを使って見つからない様にカサカサっと登ってたんだけど、流石にちと疲れたので現在日光浴しながら休んでるのさ!
んで、今俺は元居た巣の方向から見えずらいけどこっちからはバッチリ監視できる位置で休んでた。
「俺の元居た巣は上層の中間辺りか……もう少し登って2頭が下層に向けて飛び立ったら巣に飛び込められる位置に行けそうだな……」
そんな風に上空を見つめていると4頭の龍が飛んで来るのが見えた、しかも今までの2頭とは別の龍で力も比べのが嫌になるほどの龍だった、俺はとうとう援軍が!っと思ったのだが、俺の巣の方から今まで居た2頭が飛び出しバカっぽい黒い龍が新たに来た龍3頭に叩き落とされていた。
そして少しして3頭の龍はそれぞれ下層に向けてとんでもない勢いで降りて行き、少し遅れてもう1頭が下層に向かうのが見えたが、残された白龍は巣の方向に戻って行ったのであった……
「セレナ!ドライトが居なくなったとはどー言う事じゃ!」
「セレナ殿、ディアンいったい何が有ったというのだ!」
「セレナ、母が来たからには安心なさい……こんなにやつれて……!」
「セレナちゃん安心なさい!貴女とドライトの敵は私が殲滅しつくしてあげます!」
「お、お父様!それにお母様にモリオンお義父様ヌーマお義母様!お待ちしていました!」
「ッチ!来やがったのか……新婚なんだから遠慮し」[ドガアアァァァァン!]「グワアアァァァァ!」
「ガンジス!モリオン!ヌーマ!お止めなさい!」
「レ、レムリアじゃが……!」
「今はそれよりもドライトの事です!セレナ、龍珠の連絡ではよく事態が呑み込めませんでした、貴女の口から説明して頂戴。」
「お母様……ううう……ドライトが、ドライトが……」
「なんじゃと……!」[ギラ!]
「セレナ殿申し訳ない……!」[ギラ!]
「セレナちゃん……!」[ギラ!]
凄まじい殺気が辺りを支配し合計6つの眼がディアンに向けられる。
「「「まずあのアホを始末」」」「黙りなさい!」
「レ、レムリア殿しかし……!」
「今はそれよりもドライトを探す事が重要です!皆で手分けして探すのです!」
「そうじゃった!」「むむ、我とした事が!」「そ、そうね!」
「セレナ、ドライトは中層の下方より下に居るのね?」
「はい……ただ最近全然見かけなくなってしまい……うぅぅ、ドライトォォ……」
「皆!中層の中間から下を徹底的に探すのよ!」
「うむ!」「了解じゃ!」「私はドライトの害になそうなのは殲滅して回るわ!」
「そうねヌーマ……皆!ドライトの安全が第一よ!」
そして3頭が飛び出すとセレナも下層に向かおうとしたが。
「セレナ、貴女はここに居なさい」
「私も探しに行きます!」
「セレナ……そんなにやつれていては皆心配で探索に集中できません」
「で、でも!」
「セレナ、双子の孫達はどうするのです?まだ卵ですが自我があるようですよ?」
「………!」
「それに、ドライトはここに帰ろうとしているかも知れません、ここは幼龍にとっては安心していられる最高の場所です、もし自力で帰ってきた時に貴女が居なくてどうするのですか?」
「か、かあ様……」
「フフフ……その呼び方は久しぶりですね、、、」
「母様……ドライトをよろしくお願いします!」
「ヌーマの言ったとおり害になりそうなのはすべて殲滅します!お任せなさい!」
最後にレムリアが中層に向けて飛び出した、こうして4頭の龍神による探索が始まったのである……
「ドライト……皆が来てくれました!安心して待っててくださいね!」
そして、俺はと言うと……
「あ、あかんどー考えても敵が増えた……無理ゲーだろこれ!?」
歴然とした力の差と巣の近くに居座る気でいる白龍を眺めて、ボー然としていたのであった……
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