大漁祭2
ヒャハー!進めぇ!進むのだぁ!
全てを薙ぎ払い、神聖キャロリン大王国を建国してキャロリンに幸せになってもらうのですよ!
【ドライト様、城壁部分も完全に抑えました!外部の各国連合軍も8割方降伏しました!都市部が少し手こずっていますが勝利は間近です!】
ウヒョー!ヒャハヒャハァー!
「にーちゃ、おかしなくなっちゃった……」
「にーちゃ、おかわりほしい……」
あ、すぐに出しますから待っててくださいね!お茶の御替わりも要りますか?……って、メルクルナさんあなたのこの腹下し食べたんですか?
「メ、メルクルナ様は大丈夫なんですか!?」
ああ、キャロ、大丈夫ですよ?メルクルナさんの腹は特別製なので、力の有る最上級神ですら腹を下すこの腹下しも、まったく効果が無いんですよ……
しかし、この駄神は本当にどうしたんですかね?
ドライト軍団はアレクスの市街地に突入していた、アレクス要塞部分はドライト達が居たので真っ先に占領されてしまい、城壁部分は要塞部分との繋がりをふさぐ前に要塞からあふれ出したドライト兵と、上空に居る超ド級魔導飛行船キャロリンから降りて来た空挺兵団によって、アッと言う間に占領されてしまったのだ。
今や残っているのは都市部分と、もはや抵抗らしい抵抗も出来なくなったアレクス軍だけだったのである。
アレクスの外では何とか逃げ出した市民はすでに捕まっており、クロワトル大陸の各国軍は慌てて連合軍を編成して対抗しようとしたが、あっと言う間に囲まれてしまい次々と捕まっている。
ちなみにここでも、
「我々はドライト軍団だ、お前達は隷属される、抵抗は無意味だ」
っと口々に言っている、結局ドライトは気に入ったようで設定を変えないままだった。
だがここで思わぬ障害が出てきた、アレクスの市街地部分だ。
ドライトもリュージュも地上部分と下水や上水、新しく造られた地下道はチェックしていたのだが、帝国時代と帝国から独立した頃に造られた地下道はあまりチェックしていなかったのである。
まさか今でも使えるとは思っていなかったのだが、アレクスは非常時の事を考えて整備していたのだ、そしてドライト丸が到着したのが早朝でまだアレクスの市民のほとんどが避難していなかったため、その地下道に逃げ込んでしまったのである。
その追跡と捜索にかなりのドライト軍団が駆り出され、迷路みたくなっているアレクスの都市部に配置するはずの兵力が、足りなくなっているのだった。
『とりあえず、外の方は大分落ち着いたかな?』
【はい、最早残っている連合軍は小隊や分隊規模でまともな命令系統もありませんね、外に居たアレクス市民達も大人しくしています】
『なら、外に展開している部隊の半分を都市部の制圧に向かわせるか……』
【それで大丈夫でしょう、元々都市部の制圧部隊も地下道や地下空間に多少手間取っているだけで、時間さえかければ確実に都市部を制圧できるのですから……】
『なら、亜空間から追加の部隊を出す必要は無いか……よし、第4から第6軍団は捕虜と市民の監視に、第7と第8軍団は都市部の地上部分を占領させるのだ!』
【かしこまりました、指揮は先任の第9軍団長にそのまま取らせます】
『ふふふ……ここアレクスを占領したら、次は周辺の都市国家だ!
キャロ……待っていてくれ……必ずや神聖キャロリン大王国を建国してみせるぞ!』
「い、いえ、ドライト様!私には過ぎたる物ですので……お止めください!」
「えーなんでですか?女王になりましょうよ~……そして一緒に怠惰に暮らすのですよ!」
「ドライト様、私はドライト様にお仕えできるだけで幸せなのです!」
【ドライト様、キャロリン様は照れているのですよ!】
『なんか、どっかで聞いたセリフだけどそれはないだろ?』
【まぁそうですよね!
ですが、それならなんでこんなに嫌がってるのですかね?】
『なぁ~、怠惰にグデーとして暮らせるのにな?』
【とりあえず、アレクスを占領してから話し合ってみてはいかがですか?】
『そーすっか!』
「あ、あのドライト様、なにか嫌な予感がするのですが?」
「何にも問題ないですよ!
龍珠と、とりあえずさっさとアレクスを占領しようと話してだけです!」
「嫌な予感が当たりました!ドライト様!その様な乱暴なことはお止めください!お願いします!」
「大丈夫ですよ?も~物凄く平和的に侵略してますから!」
「平和と侵略は両立しないと思うのですが!?」
ドライトとキャロリンがそんな話をしている間にドライト軍団はドシドシ都市部を侵略していた。
「我々はドライト軍団だ、お前達は隷属される、抵抗は無意味だ」
ドライト兵はそう言いながら10人で1組の分隊としてパトロールしていた。
そこに……
「ハァハァハァ……セ、セイネねぇちゃん、も、もう走れないよ……ハァハァハァ……」
「メ、メネミ、頑張れ!
ハァハァハァ……セイネねぇちゃん、も、もうすぐ、孤児院だね……」
「ハァハァハァ……!メネミ、ケリル、急いで!
こ、孤児院に行けばトリア院長とシスターセアースが居るから安全よ!」
セイネねぇちゃんと言われた10歳位の猫耳に猫のシッポの有る女の子は、おのれを鼓舞するように、後ろについてきている9歳位の女の子と男の子を見て、そう2人に言う。
だが犬耳に柴犬のようなシッポの有る小さな子達は疲労困憊だ、そこでセイネは3人と物影に隠れると荷物を置き休み始める。
その時だった、大通りの向こうからパトロールのドライト兵が突然現れたのだ!
「我々はドライト軍団だ、お前達は隷属される、抵抗は無意味だ」
そう言いながら辺りを警戒しつつセイネ達の方向に近づいて来る、セイネは慌てて2人を抱くと路地の奥に入って息を潜めた。
パトロールのドライト兵は時折立ち止まり辺りを探索し終わると、また隊列を組み歩き始める、だが1人のドライト兵が3人が置いた荷物に近づいて来た。
必死に息を殺す3人にドライト兵はドンドン近づいて来る!
そして!
「おーい!次の地区に行くぞー!」
「あ、ああ、誰も居ないか……」
ドライト兵はそうつぶやくと、仲間達の元に駆けて行き隊列に加わり、歩き去って行くのだった……
………………………………
路地の奥からセイネが顔を出して辺りを油断なく見まわす。
「いっ、行った?」
「セ、セイネねぇちゃん……」
「大丈夫よ居ないわ、さぁ、荷物を持って!急いで孤児院に帰りましょう!」
「う、うん、大事な食料だもんね……これだけあれば何日か持ちこたえれるよね?」
「でも……でも、お薬を忘れちゃったよ、どーしようセイネねぇちゃん」
「……暗くなったら私がまた、取りに行く!だから大丈夫……大丈夫よ!」
この3人はアレクスのスラム生まれの孤児だった、見た目は10歳位にしか見えないが13歳の猫人族のセイネ、見た目通り9歳の男の子がケリル、女の子がメネミと言う犬人族の2人の子供。
スラムで生まれ育ったセイネが10歳の時に捨てられていたケリルとメネミを拾い、ゴミ拾いや盗みをしながらなんとか生きて来た、セイネは小さな時から頭が良く身軽で手先が器用だったので、盗賊ギルドに目をつけられて盗賊としてのスキルを教えられ、ゴミ拾いや盗みをしながら情報を集めて盗賊ギルドに情報を渡す事でなんとか生きてきたのだが、同じ様な境遇のケリルとメネミを見捨てておけずに拾ってしまったのだ。
転機はセイネが12歳になった時に訪れた。
ある時期どうしても良い情報が得られずに飢え始めてしまったのだ、自分だけなら兎も角まだ幼い2人は耐えきれずに露店の果物を盗んでしまった。
店主や周りの商人に捕まった2人が暴行されると思ったセイネは、ナイフを持って乱入し、2人を庇いながら逃げようとしたが衛兵が現れ、3人共打ちのめされて捕まってしまったのだった……
そこに、
「そこの衛兵さん達?そんな幼い子供達に何してるんですか?」
「院長様、とりあえず殴れば良いかと思います」
っとメイスで衛兵を殴り飛ばすトリア院長と、ニコニコと笑いながら素手で衛兵をぶちのめすシスターセアースが現れて、助けてくれたのだ。
食べ物を盗んだ罰はトリア院長が衛兵達をメイスで物理的に説得して、帳消しにし。
何時の間にか居なくなっていたシスターセアースが、盗賊ギルドのギルドマスターを引きずってやってきて、セイネ達を盗賊ギルドから脱退させ盗んだ食べ物の代金を払わせて、ついでに孤児院の寄付金を物理的に徴収してセイネ達を保護してくれたのだ。
最初は中々懐けなかったが、今では尊敬するトリア院長とシスターセアースや同じ孤児達と幸せに暮らせている。
だが最近トリア院長が寝込みがちになった、3人はあんなに強いトリア院長だから大丈夫だと考えていたが、アレクスに巨大な魔物が現れ、孤児院の中からも生け贄の子が出てしまってからは完全に寝込んでしまっていた。
そこでセイネ達は院長に与える為に薬を盗んで来ようと、夜中に市街地に出ていたのだ。
セイネは生きていく為にケリルとメネミに盗賊の技術を教えていた、もう使う事はないだろうっと考えていた技術を、まさかまた使う事になるとは……
でも昔は自分を縛っていた、この技術のおかげでトリア院長が元気になると思うとセイネは複雑な気分だった。
何にしろ明け方に忍び込んだのは、よく孤児院と教会に寄付してくれる裕福な商人、ミストスの家だった。
そして、逃げ出す準備をしているミストスと家族が居なくなったら、薬や役に立ちそうな物を盗もうと考えていると屋敷の主ミストスがこちらを見ている気がした、すると……
「さぁさぁ、アレクスから逃げ出すぞ……そうそう金庫に貴重な魔法薬が有ったな、だが、今から戻る時間が惜しい!さぁさぁ、出発するぞ!」
そう言って家族や部下達を連れて外に出て行ってしまった。
それを聞いてセイネ達は屋根裏から廊下に降り、出て行ったミストスの方を向き深く頭を下げると一目散に金庫室に向かった、金庫室は開け放れていて数本の瓶と布袋が幾つか置いてあった。
驚いた事に布袋は魔法袋が3つも有り、食糧庫などにも多くの食料が残っていた。
食料や役に立ちそうな物をなんとか魔法袋に詰め込んで、外に出ようとした時……
「我々はドライト軍団だ、お前達は隷属される、抵抗は無意味だ」
という声が突然外から聞こえたて来た。
セイネがこっそりと外を見ると、竜の様な人の様な甲冑を着た生き物が市民や衛兵にアレクス軍を捕まえていた。
慌てたセイネは2人をうながすと、裏口からこっそりと逃げ出した。
だが、慌ててしまった為に肝心の魔法薬を忘れてしまい、どうするか考えている間に周りはドライト兵であふれかえっていたのだ。
仕方なく1度、孤児院に戻ろうと必死に隠れながら移動していた所で、先程のパトロールと遭遇してしまったのだ。
「とりあえず、孤児院に戻るよ、2人とも急いで!」
「う、うん!」
「急ごう!皆お腹空かせているかも!」
そう言って、別の路地に入って行く3人達……しかしホッとしていた為か疲れていたせいか、セイネも気がつかなかった……
先程まで聞こえていた、パトロール隊の足音がしなくなっている事に!
「どうしたんですか?ドライト二等兵?」
「ドライト軍曹殿、先程の場所に何者かの気配を感じた気がします……」
「え?ドライト二等兵もですか?……実は私も何者かが走り去る気配を感じてまして」
「ドライト軍曹殿もですか?実は私もなんですよ!」
「え!?ドライト伍長殿もですか!いやぁ~奇遇ですね!私もなんですよ!」
「なんだ、ドライト兵長もですか!いやぁ~本当に奇遇ですね!」
そう言って、パトロール隊の全員が「え、ドライト一等兵も?」「なんだ、皆も感じてたのですか!」「いやぁ~奇遇奇遇!」と言い合い、全員が、
「「「ハッハッハッ!本当に奇遇ですね!」」」
っと言うと、
「……皆が感じたって事は誰か居たって事じゃないですか!?お、追うですよ!」
そうドライト軍曹が叫ぶと、慌ててパトロール隊はセイネ達を追いかけ始めたのだった!
「ハァハァハァ、つ、着いた……」
「ハァハァ、セ、セイネねぇちゃん、は、早く中に入ろう!?」
「ハァハァハァ、メネミ、大きな声出すなって……!」
「ほ、ほら入るわよ……!」
周りに音が響かない様にセイネが静かに扉を開けると、3人は裏口からスルリと孤児院兼教会の厨房に入り込んだ。
「「「はぁ~……か、帰ってこれた……」」」
「あなた達!」
「「「シスターセアース!」」」
「どこに居たの、探しに出る所だったのよ!」
「こ、これ……食べ物持ってきたの!」
そう、メネミが言い、背負っていた魔法の布袋をシスターセアースに差し出す。
セアースは布袋が魔法袋だった事に驚き、中に大量の物資が入っていてさらに驚く……
「こ、これをどうしたの……!」
「ミストスさんの家に盗みに入って……そしたらミストスさんがくれた!」
そうセイネが言うと、セアースは何時も細めている目を“ギュ”っとつぶり、ニコニコと寄付をしてくれるミストスの顔を思い浮かべ……
「ミストス様、感謝します!メルクルナ様……ミストス様にあなた様の祝福を……!」
そうつぶやいた、
「そ、それよりシスターセアース!大変なんだよ!外に化け物がいっぱいいて!」
「うんうん……それで皆をドンドン捕まえてるの!」
「ぼ、僕達もなんとか逃げて来たんだ!」
そう、セアースは言われて
「……!あの魔物の眷属!?」
「ち、違うと思う……」
「何にしろ、逃げるか隠れるかしなきゃ!」
「ううう……シスターセアース、怖かったよぉ!」
メネミは耐えきれなくなったのか、泣きながらセアースに抱き付く、そこに奥から声がした。
「セアース?シスターセアース?あの子達は居たの?
居たのなら今のうちにメルクルナ様に礼拝をして、地下に隠れましょう……今日は何が起こるか分かりませんのですから……」
そう言いながら幼い子供達を何人も連れて、フラフラと足元がおぼつかない足取りで厨房に入って来たのはトリア院長だった、ほんの半年前まで抱き付いた子供達を引きずる様に歩いていたが、今では支えられて歩いている……そして3人を見ると。
「まあ、何処に隠れていたの……さぁ、朝の礼拝をしますよ?朝ご飯もまだでしょう?……どうかしたの?」
「セイネ、さっきの化け物の話をトリア院長様に話して、なるべく詳しく、詳細に……!」
そう、セアースが言うと、セイネも緊張と恐怖から解放されて落ち着いたのか涙ぐみながら商人のミストスの家に盗みに入った事、ミストスが物資をわざと残してくれた事、突然現れた鎧を着た人の様な竜の姿をした化け物がアレクスの住人や軍人達を次々と捕えている事をトリア院長に話した。
「そうですか、ミストスさんはどうなりましたか……?」
「す、すいません、分からないです……あの化け物達が現れて急いで逃げて来たので、私達の恩人なのに……ううう……」
「セイネあなたのせいではありませんよ……それにあなたの判断は間違いではありません……
セイネ、あなたは他の子達皆を教会の祭壇の前に連れて来て。
セアース、その布袋……魔法袋になるべく多くの物資を入れなさい、地下に隠れます」
「はい、院長様!」
「院長先生、私……ミストスさんの渡してくれようとした魔法薬を取ってきます!」
「なりません!」
「でも……でも!あれがあれば院長先生は……!」
「……例えその薬で私が助かったとしても、セイネ、あなたを失えば私は残り少ない生涯を苦しんで過ごすでしょう……
それよりもセイネ!急いで他の子達を連れてくるのです!」
「は、はい!」
セイネはケリルとメネミに「あなた達も手伝って!」っと言い2人を連れて孤児院に走って行った。
「さぁ、私達も祭壇に向かいましょう……」
「いんちょせんせぇ……こわいよう……」
「あらあら……大丈夫よ?私達にはメルクルナ様がついていますからね?」
『私の残り少ない命、全てをかけて子供達を守り切ってみせます!』
トリア院長はそう心に誓うと、支えていてくれる子供達を連れて、祭壇に向かったのだった。
祭壇の前にはトリア院長とシスターセアースに数人のシスターと多くの子供達が居る、子供達も異様な気配を感じ取ったのか皆怯えているが、トリア院長がニコニコ笑いながら宥めているので泣き出したり、騒いだりする子供は居なかった。
「セイネ、皆揃ってるわね?」
「はい、シスターセアース」
「トリア院長様、物資もかなり集まりました……ミストス様のおかげてす!」
「そうですか、ミストスさん、どうかご無事で……!
さぁ、地下に隠れますよ……祭壇を皆で押してみて?」
トリア院長に言われ子供達や、セアース達シスターが祭壇を押すと、祭壇が音も無くズレて地下に続く階段が現れた……
「帝国時代に造られた秘密の地下室、地下道にも通じていると聞いています……埋めなくて良かったですね、院長様」
「ええ、セアース、さぁ、皆入るのですよ……!セアース!」
「はい!院長様!」
何かを感じ取ったのか、トリア院長はメイスを取り出しセアースは小手の様な物を両手に着け子供達を守る様に前に出る、他のシスター達もメイスや小手を身に着けて子供達の周りを守る様に囲む、セイネもナイフを取り出して身構えた。
[ドンドンドン!ドンドンドン!]
「我々はドライト軍団だ、お前達は隷属される、抵抗は無意味だ」
「ここはメルクルナ教の教会兼孤児院ですね!鍵を開けなさい!中に誰か居るのは判っていますよ!」
「子供達は早く中に……!」
「いんちょせんせぇも、いっしょじゃなきゃやだ!」
「ぼ、ぼくがいんちょせんせぇをまもる!」
「ヒック、ヒック……こわいよぉ……」
トリア院長とセアース達は子供達を地下に入れ様とするが、突然の襲撃に子供達は混乱して立ち止まってしまった。
ドアを叩く音は激しくなり、外から怒鳴り声がする!
「ええぃ、鍵を開けなさい!
開けなければ……合鍵を作って勝手に開けて入りますよ!良いんですか!?」
「早く開けなさい!早く開けてメルクルナの像に落書きさせるのです!」
そう怒鳴り声を聞いてセアースはズッコケそうになるが、なんとか体制を立て直す。
だが、その怒鳴り声を聞いていた別の者が言い放った!
「鍵なんて無いし、かんぬきも無いのに……それに押してるみたいだけど外に向けて開くから、引っ張らなきゃなのに……変なの!」
「バカ!あいつら気づいてないみたいだから時間稼ぎになるだろ!言っちゃダメだよ!」
そうメネミとケリルが言うと、ドアを叩く音と怒鳴り声が止んだ……
シーンと静まり返る礼拝堂、そしてドアが外に向かって開いていく……!
「わ、 我々はドライト軍団だ……お、お前達は隷属される……抵抗は無意味……だ……」
「なんか、さっき聞いたより元気がないね……」
「あー!照れてるんだ!可笑しいの~!」
「「「あはははは!」」」
「し、失礼な子供達ですね!
決めました!あなた達には拷問します!覚悟しな[ドガ!]ウヒョー!」
そうドライト軍団の大尉らしき羽飾りを着けた兵士が叫ぶと同時に殴られて吹き飛ばされる。
「子供達に拷問しようなどとは……メルクルナ様の神罰も恐れない愚かな魔物め!」
そう言いながら、シスターセアースがニコニコと微笑みながらドライト兵の前に出る!
「ふん!メルクルナさんなんか怖くないですよ!あなたも拷問してあげますよ!」
そう言いながら吹き飛ばされたドライト大尉が戻ってくる、盛大にぶっ飛ばされたがダメージは無いようだ。
「わ、私達だって、ご、拷問なんか怖くないもん!
シスターセアースにやっられちゃえ!」
そう子供達は言ってシスターセアースに声援を送ってると、ドライト大尉が叫ぶ!
「なら……この後あなた達がどんな拷問を受けるのか……教えてあげますよ!」
ドライト大尉がそう言うと、子供達は泣き出してトリア院長にしがみついた。
「ヒィ!」「い、いんちょせんせぇ……こ、こわいよぉ!」「うわーん!」
子供達の悲鳴を聞き、ニヤリと笑いながらドライト大尉が語り始める。
「ふふふ……まずは、あなた達を押さえつけ」
すると、シスターの1人が
「爪を剥いだり、手足の骨を折るのね!」
「い、いえ、古い服をはぎ取って新しい服に換えようと……
新しい綺麗な服で思うように動けなくなるのはこの年齢の子供には苦痛ですから……」
[シーン………]
「つ、次は様々な道具を使ってその体を」
っと、別のシスターが
「様々な道具……鞭を打ち付けたり、熱した鉄の棒を押し付けるのね!」
「いえ、体をキレイに洗おうと……子供達は洗われるのあんまり好きじゃないですから……」
[シーン………………]
「え、えっと、そして炊いた」
更に別のシスターが叫ぶ!
「炊いた油をかけようと言うのね!この悪魔!」
「炊いた大きなお風呂に入れようと……遊んだり泳いだり禁止なら子供達は落胆しますから……」
[シーン……………………]
「え、えっと、最後に熱々の」
そこにセアース以外に残った最後のシスターが叫ぶ!
「あ、熱々に溶かした鉛を飲ませるだなんて……!メルクルナ様!この者に神罰を!」
「熱々のご飯を食べさせようかと……肉野菜炒めと野菜のスープで子供達が嫌いな人参とピーマンをいっぱい使った……」
また静まるかと思われたが突然にシスターセアースが叫んだ。
「に!人参とピーマンですって!?あの様な毒物を食べさせようとは……!
邪神よ……この者達は邪神よ!」
[シーン………………………………]
「シスターセアースお野菜嫌いだもんね……」
「僕、シスターセアースがピーマンと人参を食べてる所見た事ないよ!」
「え〜?だって、いんちょせんせえがたべなきゃだめっていってるよぉ〜?」
「わたちみたよ!しすたーせあーずがぴーまんとにんじんをむりやり、せいねねぇにたべさせてるの!」
最年少らしき女の子がそう言うと、教会内は静まり返った……
「シスターセアースとシスター達には後で色々聞くとして……子供達に良くしてくれるような事を言ってますが、侵略者の言葉を鵜呑みにはできません……皆下がりな「何をしてますか!」!?」
トリア院長が子供達を下がらせようとしたと同時に扉から怒鳴り声が聞こえ、他の者より小さい1mほどの背丈で豪奢な羽飾りと階級章を着けたドライト軍団の者が現れた。
「アレクスはほぼ占領しました!残されているのはこの教会だけです!さっさと敵を排除するですよ!」
「アレクスは……落ちたのですか……」
「………?
なんですかこのお婆ちゃんは?私はドライト軍団第10軍を率いるドライト大将ですよ!はじめまして!」
「普通、こういう時はババアとか言うんじゃ……」
シスターの1人がそう言うが、
「お年寄りにそんな言葉を言うなんて失礼です!まったく、お年寄りには礼節を持って行動するのですよ!?」
トリア院長はうんうん頷いているがシスター達は微妙な顔をしている、そしてドライト大将が言い放つ。
「何にしろ残るはここだけです!早く全員を隷属化させるのですよ!」
「子供達に手出しはさせません!」
シスターセアースがそう言って、他のシスター達とまた前に出てくる。
「おや?皆さん中々の使い手ですね……それにそこのあなたは達人クラスですね……んん!?」
そうドライト大将はシスター達を見ながら言うが、シスターセアースを見て驚愕の表情を一瞬だけ見せる。
「良いでしょう……!あなたはこの私が相手をしてあげましょう!
私はドライト軍団、ナンバーワンの槍の使い手……になりたいドライト大将ですよ!手加減はしません!おりゃあぁぁぁ!」
そう言うとドライト大将は何処からともかく槍を取り出すと、頭上で振り回す!
が、1mの高さのドライト大将が振り回しために1.5m程の他のドライト兵の盛大に当る。
[ドガ!][バキィ!][メキャ!][ドッカーン!]
「ドッカーン!?
何にしろいきま……あ、あなた達なんで私を囲むんですか!?」
「なんでって、私達を槍で殴っていて何言ってるんですか!」
「痛かったですよ!」
「いくらドライト大将でも許せませんよ!?」
「芸術も何もかも爆発です!」
「………」
[ツカツカツカ……]
ドライト大将がドライト兵と揉めているとシスターセアースが歩いて来て……
「フン!」[ドガガガガ!]
「「「「「アヒャー!」」」」」
「ここは私達が食い止めます!トリア院長様は皆と一緒に地下に!」
「逃がしませんよ!」
「ハァ!」[バキィ!]
「ワホーイ!」
「おりゃー!」
「タァ!」[ドコォ!]
「ウヒョー!」
「次は私の番です!」
「オリャ!」[バコォ!]
「ヒャハー!」
「ハァハァ……」
「ドキドキ……あれ?まだですか?」
「い、一体何体いる……ちょっと!なんで列つくって並んでるのよ!?」
「え?……これって美人シスターがぶん殴ってふっ飛ばしてくれるアトラクションですよね?」
「んなわけあるかー!」[ドガン!]
「ウホーイ!飛んでますよ!」
「ハァハァハァ……」
他のシスター達もドライト兵を殴り飛ばすが次々とドライト兵が出てくるのでキリが無くなっていて、流石の武闘派シスター達も疲れ始めている。
「ほ、本当に何体居るのよ……」
「セ、セアース様、キリが無いわよこれ?」
「ど、どうするの?」
「戦い続けるしかないでしょ!」
「えー、おせんにキャラメル、アンパンにジュース、お弁当はいかがっすか〜!飴にクッキーも有るよ!」
「「「「「………………………」」」」」
何時の間にか子供達やドライト兵の周りに売り子が出て商売を始めている、よく見ると教会の出入り口には発券所が出来ており、列の後ろに最後尾と書かれたプラカードを持ったドライト兵が居た。
「いんちょうせんせぇ、あんぱんってなぁに〜?」
「ジュースにクッキー良いなぁ……」
「セイネねぇちゃん、キャラメル買って〜」
「あ!メネミずるいぞ!セイネねぇちゃん僕は飴が欲しい!」
「え?いやお金が……」
そこにドライト大将が現れ。
「あ、アンパンにジュースとお弁当をお願いします!飴もいただきますねかね?
おお、美味しそうなお弁当ですよ!」
「あ〜!ずるい〜!」
「私達も食べたーい!」
「ちょうだーい!」
「な、なんですか!?これは私のおこずかいで買った物ですよ?私の分なんですよ!?」
「ずるいずるい〜!」
「いんちょせんせぇおなかすいたぁ……」
「そ、そう言えば朝から何にも食べてませんでした……トリア院長どうしますか?」
「ご、ごめんなさい私も持ち合わせが……」
セイネ位の年齢の子達は耐えているが、小さい子達は朝から何も口にしていないせいで、耐えきれずにドライト大将にまとわりつく。
「ちょうだーい!」
「たべたーい!」
「おなかすいたー!」
「や、止めてください!お、お弁当が食べれませんよ!?
しょうがないですねぇ……1人、三個までですよ?ちゃんと並んでください!」
そうドライト大将が言って、売り子にお金を支払うと子供達が売り子に群がった。
「わーい!わたちアンパンとジュースとねぇ……クッキーにする!」
「ぼくはねぇ……おべんとうとおせんべえにジュースがいい!」
「えっと、えっと、あめとねぇ……どーしよ、どーしよ!」
「ちょっと!セイネ!何が入っているのか分からないんだから皆を止めなさい!」
「モグモグモグモグ……院長このお弁当、美味しいですね!」
「あら、本当……このお値段でこんなに美味しいなんて……栄養もよく考えてあるわ!」
「ちょ!セイネ!?院長様!?」
ツンツン
「な、何よ!?」
「早くぶん殴って吹き飛ばしてください!さっきから待ってるんですよ!?」
セアースとシスター達が列を見ると列は教会の外まで伸びていて、何処からともなくドライト兵が次々と現れて列がドンドン伸びている。
「ハ……ハハ………………」
「無、無理よあんな数……」
「メ、メイス壊れたんだけど……」
「セ、セアース様、どうするのこれ?」
「地、地下に逃げましょう……子供達も食べて落ち着いたは……ん?」
………………ドドドドドド!
「な、何この音?……地下から聞こえる!?」
セアースが地下の入り口に目を向けると……
「ドライトヒロシ探検隊ですよ!謎の地下空間から生還しました!そして謎の教会に着きましたよ!」
そう叫びながら探検服を着たドライト兵が地下から大量に湧きだしたのだった!
「「「「「も……無理です……!」」」」」
それを見てセアースとシスター達は無理だと感じて座り込んだのだった……
お読みいただきありがとうございました。
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