大工のドラちゃん
てやんでぇ!大工のドライトさんだぜ!
今日が建築初日で縄張りをするんだ!
てやんでぇ!べらぼうめ!こんちくし [ ゴツン!]痛い!
「ドライト!なんて口のきき方ですか!」
「ご、ごめんなしゃい、かあちゃま!だいくしゃんのマネがしたかったんでしゅ!」
「お説教です!こちらにいらっしゃい!」
「た、たしゅけて~!」
オークを殲滅し美少女や美女と温泉でイチャイチャした夢を見た次の日、江戸っ子のべらんめえ口調で話しをして、お仕置きされてから山脈の建設予定地に戻ると大きな岩の上でメルクルナが惰眠を貪っていた。
「こいつ昨日からこんな所で寝たのかよ……」
「最高神と言うか神にすら見えないですよね……」
「最高駄神だ……」
「起こしましょうか……」
ジェード達も居るがメルクルナに触れる事が出来ずに起こせずにいたようだった。
「す、すいません……お声はかけたのですが……」
「自分の神界がまた持てると喜んでおいででして……」
「「夜遅くまでここには何を置く!とかはしゃいで夜更かししてしまい……」」
そうジェードとテレサが言ってきた。
「シリカの姉御、こいつ自分の神界持ってなかったのか?」
「いえ、持ってたのよ?
でも精霊の数が増えて精霊達のために譲っちゃったのよ」
「メルクルナさんはお優しすぎるのですよ……」
「……良い駄神」
そう言って皆でイビキをかいて寝ているメルクルナを見つめ、俺が起こしてあげることにした。
「しょうがないだしゅんでしゅね……?」
そう言うとメルクルナの頭を覆うように水球が精製された。
シリカ姉達が
「あ!」とか「ド、ドライトさん!?」とか「ひ、ひでぇ……」とか「……駄神……起きて?」
などと言っているとメルクルナが飛び起きた。
「お酢はやめて!」
「おはようごじゃいましゅ!」
「あああ!スッぺぇ……!目も痛い……!何て事するのよ!?」
「なにがでしゅか?」
「何ってねぇ!あ、あれ?」
俺はメルクルナが飛び起きると同時に浄化してお酢を綺麗になくしていたのだった。
「あれ?あれ?あれぇ!?
今顔がお酢で覆われてた気がするんだけど!?」
「おおわれてましゅたよ?」
「だあぁぁぁ!朝から何て事するのよ!?」
「たんにあしゃから、かあちゃまにしかられたはらいせでしゅ!」
「こんちくしょおぉぉぉ!……な、なんか可愛い格好してるわね、ドライトさん」
そう、俺は大工の棟梁になりきるために頭にハチマキを着け半纏を着ていたのだ!龍の姿で!
ちなみに半纏にはド組と書かれている。
「おやかたとよぶでしゅよ!てやんでぇ!」
「ドライト?」
「か、かあちゃま?このかっこうにはこのしゃべりかたがいちばんなんでしゅ!」
「ドライト……?」
こうして母様にまた怒られたので俺は江戸っ子口調は諦めたのだった。
何にしろメルクルナも起きたので皆で昨日決めた場所にメルクルナの頭にしがみついた状態で、俺は建設予定地を見回っていた。
「ちょっと!降りてくださいよ!」
「らくちんでしゅよ?」
「私は重いっての!」
「ドライト、ずいぶんメルクルナの頭が気に入ったのね?」
「シリカねぇ、ちょうどいいたかしゃなんでしゅよ!」
「ドライトさん他に理由はないんですか?」
「……サルファねぇ、メルクルナさんいがいのひとでしゅと、しつれいじゃないでしゅか!」
「ド、ドライトさん……」
「クオァァァ!降りろおぉぉぉ!」
メルクルナは暴れてなんとかドライトを振り落とそうとするが、ガッチリと頭にしがみついてるドライトは微動だにしなかった。
そんな事をしている間に建設予定地の中心であるメルクルナの宮殿予定地に着いた。
そして俺はしっかりと縄張りがされている事に気づき驚いたのだった。
『しっかりと縄張りまで済んでますね……』
「はい、ドライト様、昨日メルクルナ様が言っていた場所を一応縄張りだけ済ましたのですが、まずかったでしょうか?」
そう言って老齢のドワーフが一歩前に出てきた。
「ふふーん!トニーは優秀な技術者で戦士なのよ!?」
そう言ってメルクルナはふんぞり返ってる。
「俺とテレサと同じ村の出身で俺達を心配してついてきてくれたんですよ……」
「墓守までしてくれて、トニーはトニーの幸せを掴むべきだったのに……」
「俺は幸せです、また仲間と……ジェードとテレサと冒険ができるのですから!」
『これなら、あなたにある程度任せても大丈夫そうですね……これを差し上げます』
「こ、これは!?」
『オリハルコンで作られた道具一式です、あとでトニーさん用に工房も作りましょう』
「ドライト様に感謝の言葉もありませぬ……!」
『駄神改め駄馬神はふんぞり返ってないで、言う通りに進みなさい』
「誰が駄馬神か!?」
そう言ってメルクルナの頭に乗ったまま、あっちだこっちだと指示を出して進みトニーに縄張りのやり直しを命じたり、新たに設置させていく。
『メルクルナさんストップです!』
「な、なによビックリしたじゃない!」
『もう少し前に……ここです!この位置をキープしてください!ルークさん!』
「は、はいドライト様!」
俺はジェードの仲間でメルクルナ教の大神官だったのに、教会の命令に反してまで人々を苦しめていたドラゴンロードの討伐に向かうジェード達についてきた、ルークと言う神官を呼んだ。
『ここからメルクルナさんの住居予定地を見てください』
「良く見えますね……」
『地脈や魔素の流れはどうですか?』
「素晴らしいと思います……」
『では下の方からここと住居を見たらどう見えますか?』
「確認してまいります」
そうルークが言うと山すそまで転移した。
『トニーさん、ここにしっかりと縄張りしてください!』
『ドライト様、メルクルナ様、下から見ても素晴らしいかと……』
『ルークさん今からここに幻影で神殿とメルクルナさんの住居を造ります、確認して見栄えを確認してください』
『かしこまりました』
『あ、メルクルナさん材質はどうしますか?今なら藁とその辺の雑草の2つが有りますが?』
「ムキィィィィィィ!」
メルクルナは発狂して、俺を引きはなそうとしたので全力でデコピンを加える。
ボゴォン!
「いてえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
「ドライト……メルクルナで遊ばないの!」
「メルクルナさん大丈夫ですか?凄い音しましたが……」
『冗談ですよ、ちゃんとオリハルコンを混ぜた大理石で建築しますから、強度も見た目も素晴らしい物を約束します』
「マ、マジでめちゃ痛いんですけど……ドライトさんここに何か意味が有るんですか?」
『ここに神域と神界が出来れば見に来る人もいますからね?
下から見た時にメルクルナさんの威光が十分伝わる造りにするために、信仰心の高いルークさんに確認してもらうんですよ。
あ、材質はともかくどんな造りが良いかリクエストはありますか?これはお勧めの一覧です』
「うーん……それは実際に見てみない事には……」
『アンジェねぇさんとサンプル見てそれぞれ決めといてください。
じゃあ、トニーさんとジェード達は下に降りて見て来てください、幻影で完成予想図を出しますので』
「わ、私も下から確認する!」
『メルクルナさんはダメです』
「な、なんでぇ!?」
「おい、ドラ公、あんまりいじめるなよ……」
『リア姉、いじめてる訳ではないですよ?メルクルナさんに信仰を集めるために神の視線ではなく、人の視線で見てもらわないとダメだからです。
メルクルナさんは自分の居住スペースに関する要望をまとめてて下さい』
「……ドラちゃん、何か違うの?」
『神や龍の視線だと完璧すぎるのです、人などは完璧すぎると逆に気持ち悪くなる事がありますので、美しさの中に不完全な部分を巧みに隠しつつ出しつつ、信仰の対象として完璧に近い物を創るのですよ』
「……なるほど」
「ド、ドライトさん!住居の要望はどんなのでも良いの!?」
『……聞ける範囲ですよ?』
「うひょー!どんなのにしようかなぁ〜!」
「こいつもう聞いてねぇぞ?」
『まぁ、出来る範囲で頑張りますよ……』
「ドラちゃん……私達の子供の住処もよろ……」
『わ、分かってますよ……』
「ドライトも大変ねぇ」
『母様、江戸っ子口調ならもう少し楽しく……!』
「それは許しません」
『オロローン……幻影を出しますよ?』
『はい、ドライト様お願いいたします』
そんなやり取りをしつつ、外観を決め縄張りをドンドン進めていきながら、メルクルナとアンジュラ姉さんに見た目を決めてもらおうと、俺は地球の町並みから良さそうな物を見せていき、メルクルナはギリシャのサントリーニ島のイアという街並みをいたく気に入り、アンジュラ姉さんはドイツのフロイデンベルクの街並みを真似た物に決めたのだった。
『ふぅ……神殿とメルクルナさんの住居はこれで良いとして……ルークさんにトニーさん?全体の幻影を出しますから確認してくださいね?』
『はい!ドライト様!』
『これで決まったら、わしにも建てさせていただけるので?』
『トニー、ドライト様に失礼な事を言うな!』
『トニーさんの経験は無駄ではありませんからね?私と2人でしっかりと建設しますよ!』
『ありがとうございます!』
『それではいきますよ?』
『『『『『おおぉぉぉ……!』』』』』
『うーん……中々良いじゃない?』
『ドライトさん、バッチリよ!』
『ドライト!良い出来だぜ!』
『ドラちゃん……私達の子供の町も良い景観になってる……』
こうして町の外観が決まり本格的な縄張りもして、今日は終了となったのだった。
次の日、建築予定地にやってくるとハイエルフやドワーフなど妖精族が10数人居たのだった。
「ん?ありゃハイエルフか?」
「あら珍しい、彼らはあまり世界樹の森から出ないのですけど?」
「なんの用かしら?」
「街創るの……邪魔したら殲滅する……」
「アンジェさん、物騒ですよ」
「なんにしろはなしゅてみれば、わかりましゅよ!」
「ジェードとテレサは何しに来たのか聞いてきて」
「「ハッ!」」
ジェードとテレサがハイエルフにそれ以上近づくなと警告して、話を聞きに行く。
すると妖精族の中心からハイエルフでかなりの力を持った者が進み出た。
「ジェードか?それにテレサも!」
「ゾーランかお前?」
「ひさしぶりじゃないの!」
「しりあいみたいでしゅね……」
「は、はい!ドラゴンロードを討伐した時の仲間です!」
「エルフとしてかなりの力が有ったが、まさかハイエルフだったとは……」
そうルークとトニーが言っているので俺はジェードの仲間達にも話に参加してこいと言って、建築のための資材を作り始めたのだった。
『ううう……サンプル提供したのは私ですけど、まためんどくさい町並みを選んでくれたものですね……』
「ドライトさん手抜きは許しませんよ!」
「ドラちゃん……手抜きはダメ……」
「そんな事言うなら手伝え!」
「うーん、大理石にオリハルコンとか世界樹の枝混ぜるのめんどいわ……」
「シリカ姉様、ここはメルクルナさんとアンジェの為ですから頑張りましょう!」
そんな話しをしながら資材をドンドン作っていると、ジェード達が戻ってきた。
「メルクルナ様、ゾーラン達妖精族がご挨拶したいそうです」
「新たな神界と神域の創造、おめでとうございます。っとの事です」
「判りました、それでは会いに行きましょう……ドライトさん降りてくれませんか!?」
「……だしゅんこのままいくでしゅよ?」
「ド、ドライト様?」
「何か変な事考えていませんか?」
「ルーク、トニー、無駄だ止めとけ」
「また、ドライト様の犠牲者が増えるのですね……」
「しつれいなものたちゅでしゅね!ちょっとゆうこうりようしようとしゅてるだけでしゅ!」
「「「「………」」」」
周りの皆は諦め顔でメルクルナは渋々俺を頭に乗せたまま、近づくと途端に罵声が飛んだ。
「き、貴様!どなたの頭の上に乗っているのだ!」
「その方は最高神メルクルナ様だぞ!」
「おのれえぇぇぇい!ベビードラゴンごときが触れていい方だとでも思っているのか!」
各妖精族の最長老クラスが集まってるようで、凄まじい怒気と力が放出されるが、ドライトは平然として言い放った。
「うるちゃいものどもでしゅね?だしゅんがしっかりしてないからこんなものがえばちぇるのでしゅよ!?」
「だしゅん……?駄神って事か……?」
「ま、まさかメルクルナ様の事か……!?」
そして一番力の有るゾーランが爆発的に力を増し、怒鳴りつけてくる。
「き、貴様!我等が敬愛するメルクルナ様に対してなんたる無礼!討伐してくれるわ!」
その声を聴いてメルクルナはというと。
「おお!勇気ある者達よ、この無礼者を討伐するのだ!」
などと言っている、そして妖精族がそれぞれ得物を手にすると俺は偽装を解いて力を解放させた。
「やるならやるでしゅよ!?」
それを見て妖精族は……
「「「「「すんませんでした!」」」」」
っと全員で土下座したのだった。
「もー誰かドライトさんを討伐してくださいよ!」
「メ、メルクルナ様無理ですよ!」
「ほんとに幼龍なんですか?」
「恐ろしいほどの力を持ってたのですが……?」
「討伐したドラゴンロードがアリにしか思えないほどの力だった……」
「ゾーラン、ドライト様には逆らわず隙を見せるなよ?」
「もう少し早くそのアドバイスが欲しかった!」
「しゃべってないでキリキリはたらくでしゅ!
メルクルナさんはしゅつれいなこといってると、もういっぱちゅデコピンでしゅよ!?」
「や、やめてくださいよ!あれめっちゃ痛かったんですから!」
こうして俺は新たな労働力を手に入れ、工事は順調に進むのだった。
「このこんこんちきどもしゃしゃっとはたらけぇ!」
「ドライト?ちょっとこっちに来なさい!?」
「か、かあちゃま!?ついでちゃったでしゅ!ゆるしてくだちゃい!」
お仕置も追加されながら……
お読みいただきありがとうございました。
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