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転生龍の諸国漫遊記!  作者: バリ君
何も始まらない日々
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19日目・VSドライト1


「ド、ドライト様と戦うですか!?」


「ええ、ドライトだったらちゃんと手加減してくれるわよ」


俺達にドライトと戦えと言ってきたのはシリカだった。

そんなとんでもない事を言ってきた彼女は、ニコヤカに笑っている。


俺達はドン引きの提案に微妙な顔をしていると、レイナが余計な事を言い出した。


「良い話じゃないですか、ドライト様と実戦演習できるなんて、そうそうありませんよ?」


レイナの言葉に常識人の俺は嫌だと言おうとしたが、戦闘狂のアホが賛成してしまう。


「強い奴と戦えば、色々な経験が積める。

是非ともやらせてもらおう!」


「弘志くん素敵よ!」


アホを百合ちゃんがヨイショするのを見ながら、朝日に俺は声をかける。


「おい、アホを止めろ。

その間に俺がなんとか断るから!」


朝日が弘志を止めてる間に俺が断ろうとしたが、朝日は意外な事を言ってくる。


「星司、ドライト様との模擬戦を受けよう。

それで俺達が強くなれるなら、願ったりだ」


「な、なんだってそんな!?」


俺が驚きながら聞くと、朝日は真剣な顔で答えてくる。


「卒業したら、アルレニアで冒険者になるんだろ?

それで……3人を嫁にもらうんだろ?」


そう言って朝日は円、梨花、香織姉を見る、そして続けて俺を見つめて言ってくる。


「さっき、アレナムさんと戦って、俺は手も足もでなかった。

それで思ったんだ、こんなんで万が一の時に頼子を守れるのか?ってな……だから、少しでも強くなれるチャンスが有るなら俺はそのチャンスを掴み、俺の糧にしたいってな!

そう思ってるのは俺だけじゃない、弘志やネイサンもだ。

星司、お前はどうなんだ?リティアさんと戦って、梨花や香織姉さんを守れなくって、何も感じなかったのか?」


朝日に真正面から見つめられ、そう言われた俺はうつむいてしまう。


リティアに一瞬で倒された俺は、もし相手が本当の敵だったら、どうなっていただろうかとは考えていた。


円を、梨花を、香織姉を汚されたり、殺されたらと……

そして俺は顔を上げ、朝日や弘志にネイサンを見る、3人が3人ともに何かを決意した顔で俺を見てきていた。


それに対して俺は小さく頷くと、シリカに向き直りドライトと戦わせてくれと、言おうとして気がついた。




「あ、あの、戦うのは良いんですが、肝心のドライト様は?」


そう、肝心のドライトの姿が何処にも見えなかったのだ!


「ああ……夫ならここよ?

柄の部分で殴られたって逃げてきたのを、たまたま捕まえたのよ」


そう言ってシリカは振り返り、背中を見せる。

そこにはおんぶ紐で背負われたドライトが居た、飛び出した短い手足をバタつかせるその姿は、赤ちゃんにしか見えなかった。


「よし、帰るか!」


「待て待て、気持ちは分かるが待て!」


「俺も帰りたくなって来たけど、せめて話だけは聞こうぜ……?」


「俺の決意は何だったんだ……」


俺が帰ろうとすると、朝日に止められ弘志に引き戻される。

引き戻された先ではネイサンが項垂れていた。


「よし、駄龍、言い訳を聞いてやろう!」


引き戻された俺は仕方なくドライト前に戻ると、話を聞いてやると腕を組んでドライトの前に立つ。


駄龍と言ったがセイネ達も脱力していたのか、殺気等は感じなかった。

なんにしろ話を聞いてやると言うとドライトは、さらに手足をバタつかせて俺に頼んできた。


「星司さん!ちょっと引っ張って下さい!

捕まってしまって抜け出せないのですよ!」


俺はこれと戦って糧になるのか?っと朝日達を見て視線で問う。

朝日達は視線を反らして何も言わない、そんなことをしているとシリカが振り返り俺達を見て言う。


「ごめんなさいね?情けない姿かと思うけど、ドライトを逃がさない様にするにはこれが1番なのよ?」


「おんぶ紐で縛られるだけで、逃げられなくなるのか……」


「ああ、違うのよ?

これはただのおんぶ紐じゃなくって、ドライトの妹達が幼龍だった時に背負った紐なの。

妹さん達に優しくフィットする様に作ってあるから、壊れやすいのよね?

それで思い出の品だからね、変に力を使って壊れたら大変だからドライトも無理に抜け出そうとしないのよ」


ドライトが大切にしている妹さん達との思い出の品だから、壊れないように力を使えずに暴れているだけなのか……


「あ、あの……大事な思いでの品をそんな風に使うのはちょっと……」


「おお!言ってやってください!たんと言ってやってください!

そして私を解放するのです!」


香織姉がそう言うと、ドライトがシリカの背中から応援する。

するとシリカはため息をつきながら言うのだった。


「この紐ね、ざっと数えただけでも10万本以上有るのよ?」


「じゅ、10万ですか!?」


「ええ、しかもステラちゃんとルチルちゃんのお気に入りとか、初めて何かした時の記念とかのは、別にとってあるのよ?」


それを聞いた俺は呆れて言う。


「なら一本位良いじゃないのか……?」


「一本位とは何事ですか!一本、一本に思い出が詰まってるのですよ!」


俺の言葉を聞いてそう怒るドライトだったが、シリカが呆れて言う。


「あなた、倉庫に適当に放り込んであったじゃないの……

なんにしろあなた、皆と模擬戦をして上げなさいな?」


シリカはそう言うと、おんぶ紐を緩めてドライトを下ろす。

降ろされたドライトは興味深そうに俺達を見回して言ってくる。




「それで“皆さん”と戦えば良いのですか?」


ドライトの言葉にレイナ達4人もニヤニヤ笑いながら俺達に言ってくる。


「そうですよ、ドライト様。

シリカ様が言ってたじゃないですか!」


「粘れば……逃げ回れば10秒は持つかもしれませんわ?」


「星司達、まぁ頑張れ、瞬殺だろうけどw」


「頑張ってアンジェ様と私を笑わせてね?」


そう言って俺達から離れようとした4人だが―――


「あ、あれ?」


「結界?」


「あ、あの、結界が張られてて、サルファ様の元に行けないんですが?」


「嫌な予感がしまくってる!」


そう言って警戒し始めたレイナ達に、シリカ達が声をかける。


「レイナ、私はドライトに言ったでしょ?

皆と模擬戦をしてって?」


「リティア、逃げるなんて許しませんよ?

正々堂々と戦いなさいな!」


「アレナム、頑張れよ!

……瞬殺なんかされるなよ!?」


「……セイネ……笑わない様に……私は頑張る!」


シリカ達の言葉に、レイナ達は真っ青になりドライトに向き直る。

するとドライトは青竜刀を研いで準備を始めていた。


それを見た4人はダッシュで逃げ出そうとしたが、素早くシリカに回り込まれて微笑みを向けられ、諦めて星司達と合流するのだった。




「え、えらい事になってしまったわ……」


「正直逃げ出したい!」


「あんた等も気合いを入れろよ!?

取り敢えず私達で押さえられるだけ押さえるから、隙を見て攻撃をしなさいよ!?」


「ううう……どうすれば被害を少なく出来るのか、全然思いつけませんわ!」


レイナは呆然としていて、セイネは逃げる場所を探している、アレナムは俺達に発破をかけていて、多少はやる気があるようだ、リティアは混乱しているようでオロオロしている。


そんな4人と俺達に、ドライトが声をかけてくるのだった。




「さぁ!準備万端ですよ!?

始めましょう!」


こうしてドライトとの模擬戦が始まった。

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