14日目・電気室
「結構色々落ちてますね?」
「ええ……鉄骨?なんでこんな所に?」
俺達はショッピングセンターに泊まり込みになったので、まだ探索していなかった2階から上を見て回っていた。
ドライトが先頭に立ち、着物を脱いでパタパタと飛びながらあちらこちらを見回っている、そのすぐ後ろに学園長が歩いていたが、今は何故か2階に置いてある鉄骨を見つけて不思議そうに眺めていた。
「あのアホ神達は、いざとなったらここに籠る気だったんですね。
そのために色々準備していたようですね?」
ドライトはそう言ってペタペタと鉄骨触っていたが、おもむろに持ち上げると階段の方に移動をし始めた。
「これ階段のところに置いてきます、封鎖しとけば夜も気兼ねなく休めますしね!」
「え……封鎖するんですか?」
「そのつもりですが、なにか問題でも?」
「い、いえ……」
円が封鎖すると聞いて嫌そうな顔をしたが、ドライトに問題が有るかと問われて、シブシブ封鎖を認める。
そしてドライトが鉄骨を何本も抱えて飛び去ると、円が俺に言ってきた。
「ちょっと星司、あなたがリーダーなんだから明日には帰るって言わなきゃ」
「ええ……俺が言うのかよ?」
「そりゃリーダーなんだから、あなたの責任でしょ?」
円はそう言うと、グイグイと俺をドライトの方に押す。
仕方なく俺はドライトに向き直ると、明日の朝早くには拠点の寮に戻ると伝えた。
「そうですか……残念ですがここでお別れですかね?」
意外な事にドライトはすんなりと、別行動をすると言ってきた。
それを不審に思った俺は、楽しそうに物資を漁るドライト聞いてみる。
「ついて行くとか言わないんだな……意外だわ」
「うーん、ついて行くのも面白そうなんですが、ゾンビ物でショッピングセンターは鉄板ですからね?このチャンスを逃すのは惜しいのですよ!」
ドライトはそう答え、嬉々としてあっちこっちの通路や階段を封鎖していく。
「なんにしろ星司さん達も探索した方が良いですよ?
なんか色々と有りますから!」
ドライトにそう言われた俺達は顔を見合わせる。
そしてバラバラに物資を漁り始めるのだった。
そしてバラバラになったなか、俺は監視もかねてドライトに着いていきながら、周りを見回して言う。
「はぁ……しっかしよく作ってあるよなぁ……
商品なんか本物にしか見えないぞ?」
「そりゃ、本物ですからね?
色々あって溜め込んでいた物を使ってますから、偽物の方が少ないですよ?」
「お前、どれだけ溜め込んでたんだよ……」
俺は呆れながらもう一度辺りを見回す。
ユノガンド達が持ち込んだ物も有るようだが、ショッピングセンターには様々な物資があふれかえっていた。
食料品はもちろん、衣類や雑貨に靴等もかなりの量があり、種類も豊富だった。
ドライトの力があれば、一瞬で作り出せる物もワザワザ買い集めた様だ、その労力を他に何故回さないのかと考え歩いていると、ドライトが吹き抜けから上の階を指差して俺に着いてくるように言ってきた。
「あそこに警備室が有るようですね?
星司さん、一緒に行ってチェックしときましょう!」
ドライトに誘われた俺はドライトの後を追い、警備室に入り込む、すると警備室内は電気が通っており、器機は正常に作動しているようだった。
「下の食品売り場もだけど、ここも電気が通ってるんだな……」
「ドライトゾンビの出現で世界は混乱してますが、インフラが完全に止まるほどはまだ混乱していないはずなので、電気は通っているはずですよ?」
「それにしては店内が暗かったけど、何かしら理由があるのか?」
俺は不思議に思いドライトにそう聞くと、ドライトが答える。
「いっぺんに電気が通ると負荷が激しいですから、明かりや緊急性の無いものなんかは手動になってるはずですからね、そのせいでしょう……あ、そこの奥の部屋が電気系統のコントロール室みたいです、そこから電気をつけられる筈ですよ!」
ドライトが指差す先に電気室と書かれたプレートが掲げられたドアが有り、そこから電気系統が制御出来るとドライトが言う。
ドライトはそのままパタパタと飛んで扉に向かい、ドアノブに手をかけると扉を開ける。
そしてその中には―――
「はぁ……暇だよね……」
「セイネ、暇暇っうるさいわよ?そんなに言うなら外出てみる?」
「アレナム様、それはやめた方が……」
「リティアさん、さっきのとんでもない殺気は感じなくなりましたが?」
「レイナ様、殺気が無くなったからと言って、その者も居なくなった訳ではないはずですわ?
私達を誘きだす罠だったら目も当てられませんわよ?」
「まぁそうだよね?今は引き篭もってて嵐が通り過ぎるのを待つのが最善だよね?」
「ってかセイネ、今ドアが開かなかった?」
「はへ?ちゃんと鍵閉めたし罠も貼ったから、そんなに簡単には開けられない……」
セイネと呼ばれた猫耳の少女が、神官のような服を着た少女に答えながらドアの方を見る。
そこには八つ墓ファッションの着物は脱いだが、L型懐中電灯を角に着けたままだったドライトが立っていた。
「………………ギャアァァァ!?」
「セイネ、どうし……ド、ドライトゾンビ!?」
「な、なんでドライトゾンビが?
セイネ様、例のダクトから逃げ……ドライトゾンビが邪魔でダクトに近づけませんわ!?」
「ど、どうすれば良いんですか!?
誰か指示を!」
「こんな時にキャロさんが居ないだなんて!」
電気室に居たのはシリカ達の祝福者で、眷族神のレイナ達4人娘だった。
4人はどうやら、電気室に食料品等を持ち込んで引き篭もって時間稼ぎをしていたようだった。
そしてセイネはドアに鍵かけて罠を貼っていたようだが、ドライトには意味がなかったようでドライトはアッサリとドアを開けて中に入り、セイネと目が合いセイネ達はドライトゾンビだと思い大慌てになってしまったようだ。
「皆落ち着くのですよ!
こんな時こそ普段の訓練の成果を出すのです!
キャロが居ない時のリーダーは誰ですか!?」
「わ、私ですわ!」
「ならリティア、しっかりと指揮をとって、よく考えて指示を出すのですよ!」
ドライトにそう言われ、リティアはハッとしてドライトを見つめて言う。
「……と言うか、ドライト様本体ですか?」
「そうですよ?」
「「「だあぁぁぁ~……」」」
ドライトの言葉にセイネ達は脱力して座り込むのだった。
「セイネ達はこんな所に隠れていたんですね?
気がつきませんでしたよ!」
「いやぁ、ドライト・オブ・ザ・デッドと聞いて、皆で隠れようってなったんですよ。
なのにキャロとナタリーは何処かに雲隠れしちゃいましたし、エイミリアはテレビのニュース担当で来れないですし……ここなら終わりまで持つかな?って思ったんですが、見つかっちゃいましたね!」
セイネはそう言うと、テヘっと舌を出して笑っている。
そんなセイネにドライトが質問をする。
「しかしセイネ、アンジェから指示を受けてませんでしたか?」
「指示ですか?……特に来てないですけど、何かあったんですか?」
セイネはスマドを取り出すと、何かを確認しかてからドライトにそう返事をする。
「おかしいですね?私のデコトラがアホ達に盗まれて、探すようにそれぞれ指示がいったはずなんですが……?」
ドライトにそう言われてセイネは再度、リティア達他の面々は慌ててスマド取り出して調べるが、全員がなんの連絡も入ってないと言う。
それを聞いたドライトはスマドを見せてくれと言い、受け取ると順に手の中でクルクル回して何かを調べる。
「うーん……おや?……こ、これは!」
「ドライト様、何かしら分かったのですか!?」
「……魔力切れです、魔力が無くなってただの珠になっちゃってますね」
「「「……はぁ!?」」」
ドライトの意外な答えにセイネ達は全員驚き、手元のスマド見つめる。
そんなセイネ達に何故、魔力切れになったのかドライトが解説をする。
「筆頭駄神が自分達の気配を隠すために、珍妙な結界を張っているようですね……
それにドライト・オブ・ザ・デッドを楽しめるように、セイネ達の力も制限してしまったので、ダブルで影響を受けて魔力が補充されなくなったみたいです!」
ようするに、ドライトとユノガンドのせいだった。
「アンジェ様!聞こえますか!?」
「リア様!アレナムです、私達は無事です!」
「サルファ様、申し訳ありませんでした。
まさかスマドが魔力切れになってたとは思いませんでしたわ……」
「シリカ様、今はどちらですか!?
直ぐに行きます!」
セイネ達はスマドに魔力を補充すると、慌てて連絡をしている。
今は無事に連絡がとれたようで、シリカ達の所に向かうと言っていたがシリカ達はそこに居ろと言う。
『そこにドライトが居るでしょ?
喫茶店に着いたら居ないから何処に行ったのかと思ってたのよ。
そう言う訳で今からそっちに向かうから、待っててちょうだい?』
『まったく、妻達を囮に自分だけ逃げるなんて酷い話ですわ!』
『しかしまあアレナム達を見つけてくれたのはありがたいぜ。
これから探そうと思ってたんだよ?』
『……あのアホ神……録な事をしない!』
どうやらシリカ達はユノガンド達を撒いたようで、ショッピングセンターに戻ってくると言う、それを聞いたドライトは慌てて通話に割り込むとシリカ達に直ぐに来ないように言う。
「ちょ、ちょっと待って下さい!
先にデコトラを充分に調べて、荷物は全部そこらに捨てて来て下さい!」
『へ?なんでまたそんな事を?
それに荷台の荷物は中々良い物が有るわよ?勿体ないじゃないの?』
「あの駄神達は発信器か何かを仕込んでいる可能性が大です。
ですから物質は惜しいですが捨てた方が良いのですよ!」
『本当に録な事をしないわね、あいつ等は……なんにしろ分かったわ。
荷物は言われた通りに捨ててから行くわ、じゃあまた後でね!』
こうして、シリカ達もショッピングセンターに戻って来ることになった。
「さて、シリカ達も戻ってくるなら夕飯を多くしないとですね……
食品売り場をもう一度漁って……どうしました?」
ドライトが夕飯の準備をしないとと、言いながらセイネ達を見ると、セイネ達はドライトの後ろにある扉をジッと見つめていた。
「お前、誰だ?」
「ドライト様、知り合いですか?」
「それにしては、ドライト様を見る目付きが気になりますわね?」
「私達が敬愛する主の夫のドライト様をバカにしたような目で見るなんて、理解はしますが許せません!」
アレナム、セイネ、リティア、そしてレイナが星司に向かって次々と言い放つ。
レイナは直球で失礼な事を言ったためにドライトに「どういう意味ですか!?」っと、詰め寄られているが。
何にしろセイネ達は得物を手にジリジリと星司に向かって行くのだった。
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