13日目・デコトラ奪還作戦
[ブロロロ~]
「「にいちゃ!ねえちゃたち!がんばれ!」」
人化していないのと興奮しているために、舌足らずなしゃべり方で応援をするステラとルチル、しかもゴーカートにそれぞれ大漁旗と豊漁旗を括り付けて走り回っている。
そんな中、神々と龍達の戦いはと言うと―――
「おりゃおりゃおりゃ!」
「ちい!?メリルルナにメルクルナ、ますます連携が巧みになったな!」
「はぁ!リアさん、何時までも私達が進歩しない訳がないでしょう?それ!」
「くぅ!?アンジェそっちは……マリルルナとチエナルナも腕を上げたな?」
「シッ!流石に5対3で負けるわけないでしょ?シリカさんも居ないしね!」
「サルファ姉はエルナルナとやり合ってっから、援軍は無理か……オラァ!?」
メルクルナとメリルルナはカーネリアと戦っていた、その少し向こうではマリルルナとチエナルナがアンジュラと戦い、エルナルナはサルファと戦っていた。
流石のカーネリアとアンジュラも2対1では分が悪く、かなり押し込まれていた。
サルファも何とかしようとしているのだが、エルナルナとは実力が伯仲しており、助けに行きたくても駆けつけられないでいた。
そして肝心のドライトはと言うと……
「ムガゴゴゴ!」
「アバブブブ!」
ユノガンドと口にうまい棒を突っ込みあっていた。
ドライトは荷下ろし場に上がると共に、RPG―7をブッ放してユノガンドの額に命中させたが、魔力で強化などしていないただの弾だったので、目眩ましにもならなかった。
その後は青竜刀で切りかかったがユノガンドは神剣で迎え撃ち、そのまま置かれた荷物に突っ込んでしまい、今は何故かお互いの口にうまい棒を突っ込みあっていたのだ!
2人は凄まじい口のパサパサ感に耐えながら、次から次へとうまい棒を相手の口に突き刺す。
「ムガァァァ~」
「アブォォォ~」
「「「遊んでるんじゃない!」」」
まあ、当たり前だが周りから怒られてしまった。
怒られた2人は跳び跳ねるように離れると、その2人の周りに女神達と龍達が集まり、にらみ合いが始まる。
「ふん!よくここが分かったのぅ?それは誉めて使わすぞ?」
「ゴキブリみたいにこそこそと隠れるのが上手いですから、探すのに手間取りましたよ!」
ユノガンドとドライトはそう言い、挑発し合う。
エルナルナ達とサルファ達も、唸りながらにらみ合いになっている。
「おおお……こ、こえぇ~……」
それを眺めながら俺達はすみで固まっていた、流石に原始の神と力ある龍の本気の戦いの威圧感にビビってしまったからだ!
うまい棒を食わせあってただけの戦いに、どうやったらそこまで怖がられるのかと聞かれても困るのだが、本気で怖かったのだからしょうがない。
そんなこんなで現在は膠着状態の神々と龍達の戦いを見ていると、サルファがたまにチラリとこちらに視線を送ってくるのに気がつく、なんでそんなに俺達を気にしてるのか分からなかったが、視線に気がついたユノガンドとエルナルナがこちらを気にし始めた頃だった。
「香織さん、今です!デコトラを頼みます!」
と、サルファが叫んだ!
その叫びと同時にメリルルナとメルクルナが「させるか!」っと叫んで俺達の方に向かってくる。
「へ?へ?へ!?わ、私ですか!?
確かに大型の免許は持ってますけど、ペーパーなんですよ!?」
当たり前だが香織姉は俺達と一緒に固まっていて、なんで私が!?っと驚いている。
というか香織姉は大型免許なんか持ってたのか……
とにかく、それを見て不審に思った神々は立ち止まると、ドライト達の方を見る。
するとドライト達は全力疾走で外の方に走って逃げていた。
「む?逃げるのかの?
ガンジス達の一族ともあろう者が嘆かわしいのぅ?」
「情けない姿ですね……あれでも高位の龍と言えるのですかね?」
「エルナルナ姉様、仕方がありませんよ。
高位の龍とは言え、しょせんはまだまだ子供……私達の相手は務まらないのですわ」
「一応、追いかけますか?」
「メルクルナ姉、情けなく逃げた奴等なんかほっときましょうよ?」
「禿げパワーの勝利ね!」
サルファ達が逃げ出したので、ユノガンド達は高笑いをしていたが、俺はイヤに素直に撤退するなと思い見ていると、案の定異変が起きた、駐車場に止まっていたトラックが2台、動き出したのだ。
何事かと思い見てみると、ステラとルチルのゴーカートが牽引して動かしていた。
そして空いたスペースから、ドライトのデコトラが出てきたのだった。
「な!?だ、誰が動かして……ああ!?」
エルナルナが驚いて見ると、運転席には人化したシリカが座っていた。
シリカが運転席から手を振ると、サルファは人化して助手席に滑り込む。
カーネリアは龍の姿のまま運転席の屋根の所にしがみつき、その背中にはアンジュラがしがみついた。
カーネリアにしがみついたアンジュラは人化する、そして普段はほとんど表情の変化の無いアンジュラがニヤァ~っと、素晴らしく嫌味な笑顔で言い放った。
「……ぶわぁーか!」
一陣の風が吹き抜ける……その風の音が聞こえるほどに、辺りは静寂に包まれていた。
ユノガンドはもちろんの事、エルナルナ達も固まって身動ぎもしないている、だがそれは大噴火の前触れだと俺達は気がついていていた。
そしてデコトラが門から出ていき、それを追いかけるようにステラとルチルのゴーカートが大漁旗と豊漁旗をはためかせて出ていく、その時ステラとルチルが左右の手をユノガンド達に突き付けた。
中指を立てた状態で―――
「ぬあぁぁぁ!?絶対に赦さぬぞ!ケチョンケチョンにしてやるわ!!」
「走ってだと追い付けないわ、こっちもトラックで追うのよ!」
「1人1台で追いましょう!体当たりしてでも止めるのよ!」
「ドライトさんに似て妹達もクソ生意気ね!」
「殺す!殺しつくしてやる!」
「禿げさせて……龍に髪は無かった、どうすれば!?」
怒り狂ったユノガンド達はトラックに殺到する、だがトラックは動かない何故かと言うと。
「か、鍵が無いわ!」
「エルナルナ姉様、直結で……こ、壊されてる!」
「ちくしょう!走って追いかけるわよ!」
「禿げ薬が効かない……というか、効果が無い……?
わ、私はどうすれば!?」
「メルクルナよ!おんぶせい!わらわをおんぶするのじゃ!」
「はい!ユノガンド様、どうぞ私の背中に!」
ユノガンド達は走って追いかけ始める、ユノガンドはメルクルナにおんぶされたまま去っていく、1柱ほど全然関係ない事で恐れおののいていたが、それはみんな無視して。
俺達は触らぬ神に祟りなしと、なにも言わずにそれを見送るのだった。
「お達者で~」
何故かドライトも手を振って見送っていたが……
「……なんでお前が居るんだよ?
嫁さん達に着いていけば良いだろ?」
ユノガンド達を見送った俺達だが、何故かそこにドライトも残っていた。
「いや、私もデコトラに飛び付いて、逃げようと思ったのですが……見ての通り飛べなかったんで、残ることにしたのです!」
そう言うドライトを見ると、いまだに八つ墓村ファッションのままだった、つまり着物を着ていて飛べないから残ったと言うのだ。
「なんにしろこのショッピングセンターを探索するんですよね?
私も一緒に探索しますよ!」
「いや、俺達はそろそろ拠点に帰ろうかと思ってて……」
「でも外は暗くなってきましたよ?
ここで一日休んでいった方が良いですよ?」
ドライトに言われて気がつく、外は大分暗くなってきており、この暗さの道を歩いて帰るのは危険だと俺達も分かる。
だが同時に、俺達の目の前に居る駄龍と一晩を共にする危険性を天秤にかけると、どう考えても駄龍と一晩を共にした方が危険だと思えたが、
「さぁさぁ、店内に戻って必要な物を揃えましょう!」
「2階に繋がるところにバリケードを設置して、守りを固めないとですね!」
学園長とマサミさんに、先にそう言われてしまい、俺達は1泊していく事になってしまったのだった。
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