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転生龍の諸国漫遊記!  作者: バリ君
何も始まらない日々
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10日目・喫茶店


「ささ、特製のカプチーノです、遠慮せず飲んでください」


朝日の目の前に出来立てのカプチーノが置かれる、朝日はそれを手に取り一口飲む。


「美味い……」


「入れ方は勿論ですが、豆にもミルクにもこだわってますからね?

ああ、Carina piccola signora(可愛いお嬢様)方もどうぞ?」


「本当に美味しい……水出しコーヒーって、こんなに美味しいんだ……」


「うちの執事でも、こんなに美味しく入れられないわね」


「乗ってるアイス……あ!溶けて混ざったコーヒーも美味しい!」


円はアイスコーヒーを、桐澤さんはブラックのホットコーヒーを、百合ちゃんはコーヒーフロートを飲みながらそう呟く。


「これがコーヒーって飲み物か……」


「ユノガンドじゃ超高級品だから、初めて飲んだわ」


ネイサンとエルケは初めて飲んだようで、美味しいけど味の違いが判らないと言ってくる。


「これ、砂糖とミルクも本当に良い物ね……あら?アイスとホットだと、豆も違うの!?」


「勿論です、figlia(お嬢さん)入れ方もアイスは水出しで、ホットは頼まれてから砕いてユックリと入れました」


「なるほど……コーヒーフロートも気になるから、貰えますか?」


「喜んで、どちらかを飲んでからお出しすればよろしいですか?」


コーヒー中毒気味の香織姉は、自分の手元にミルクと砂糖を入れたホットコーヒーと、ブラックのアイスコーヒーを置いて飲み比べていたが、百合ちゃんの飲んでいるアイスクリームが2つ乗せられ、1つが溶けた物を見ながら注文をする。


「このイチゴジュースも美味しいです……」


コーヒーの苦手な梨花はジュースを頼んだのだが、メニューには何のジュースなのか書いておらず、何が出てくるのかドキドキしていたが、出てきたのはイチゴのジュースだった。


「春の果物はイチゴですからね?

バナナと混ぜてスムージーを……っと思ったのですが、思いの外良いイチゴが手に入ったので、そのままお出ししました」


そう言われた梨花は嬉しそうにイチゴジュースをコクコクと飲んでいく。

どうやらジュースはその季節季節の旬の物を出しているようだ。


「コーヒーもジュースも拘ってるのに、これは三○矢サイダーなのな?w」


失礼な事を言うバカ、弘志の言葉を聞いた百合ちゃんが弘志を殴り飛ばそうとしたが、喫茶店のマスターが素早く弘志の前に無色透明な液体の入ったコップを差し出す。


「これは?」


「特別なサイダーです」


「ほう?」


弘志が格好つけながら一口飲む、すると……


「ブフウゥゥゥー!?」


「き、きちゃない!?」


飲んだ弘志は即、吐き出した。

隣に座ってた百合ちゃんは慌てて逃げ出す……あ、怒って弘志を蹴り倒したわ。




「……何飲ましたんだ、マスター?」


「サイダーの納豆味とイカの塩辛味をカクテルにしたものです」


「罰ゲームかよ……それで駄、ンン!

マスターは俺達に何をさせたいんだ?」


俺が駄龍と言いかけると、左右から殺気を感じたのでマスターと言い直しながら、俺達の右側の店の出入り口でガラスを拭いている賢者の学園のクリスティーナ学園長と、左側に有る裏口の前でコーヒーカップを磨いているマサミ副学園長を見る。


(諦めろ星司、ネイサンとエルケもあの2人相手だと、全員でかかっても叩きのめされるのがおちだと言ってる)


(ちくしょう……逃がさない気だな……)


朝日が俺に聞こえるように耳元に言ってるくるのを聞き、俺も小声で呟きながら左右で掃除や作業をするフリをしながら出入り口をふさぐ2人に再度視線を向けて、諦めて正面に居るマスター、銀龍ドライトに改めて向き直る。


「おや?お客様がたは一休みするために当店に来られたのでは?」


話しかけてくるドライトは、蝶ネクタイにウエイターの服を着て、ダンディーな髭を生やした姿だった。

まさにお洒落な喫茶店のマスターに見える……龍の姿でなければ!


「なんか、学園長とマサミ先生が呼んでたんですが……」


「客引きです」


「「「………………」」」


そう言われて俺達は黙るしかなかった。


その後は俺達は会話も少なくコーヒーやジュースを飲み、何人かがケーキ食べた後、お暇することになった。


「じゃあ、ご馳走さまでした」


「美味しいコーヒーでした」


桐澤さんと香織姉がそう言って席を立つ、続いて俺達も席を立つ。


ドライトが何かを言ってくるかと思ったが、ニコニコと笑っているだけだった、それを俺は不審に思いながら早く立ち去ろうと出入口を見る。




そこで見たのは―――




レジに陣取るクリスティーナ学園長だった!


「ありがとうございました~

お会計はこちらです」


「「「……お会計?」」」


俺達は言われた意味が一瞬分からず、顔を見合わせる。

すると、今までニコニコ笑っていた学園長は笑みを消して目を細めて聞いてくる。


「まさか……無銭飲食ではないでしょうね?」


「い、いや、ちょっと待ってて!

誰かお金持って来てるか?香織姉か朝日に桐澤さん、クレジットカードとか「何時もニコニコ現金払いでよろしくお願いします」うお!?」


何時の間にかマサミさんが後ろに居て、俺達は学園長とマサミさんに挟まれてしまっていた。


しかもクレジットはダメだと言われて、俺達はリュックを調べるが勿論お金なんか出てくるわけがない、何故か?


使えもしないのに、余計な荷物になる物を持ってくるわけがなかったからなのだ!


そして、ヤバいと思っていると俺の真後ろから羽音が聞こえてくる、嫌な予感がするが見ないわけにはいかず、振り向くと案の定ドライトがパタパタと飛んでいた。


「……無銭飲食ですか?」


「い、いや、ちょっと持ち合わせが……」


「そうですか……まぁ、知らない仲ではないですし、今回は大目に見ても良いですよ?」


ドライトの意外な言葉にホッとした俺達だが、次の言葉で絶望させられるのだった。


「そうですね、ちょっと私達の手伝いをしてくれれば、チャラにしてあげますよ!」


こうして俺達は強制労働に駆り出されたのだった。




「それで、マサミさんが監視役ってことですか?」


「はい、そうです。

まぁ、灰谷君達が着けた指輪が有れば、本当は必要ないんですけどね?」


「……この指輪、ヤバい物なんですか?」


俺達はドライトの命令で二組に別れされ、探索をしていた。


俺は円に梨花に綾香姉、それにネイサンとケイティという組と、朝日と桐澤さん、弘志と百合ちゃんにエルケという組分けなのだが俺達にはマサミさんが、朝日達には学園長が監視役としてついてきていた。


だが分けられる前に男衆にはドライトから渡された、珍妙な指輪を着けさせられていた。


それはリングの部分はいたって普通のシルバーの指輪なのだが、飾りとして阿波おどりを踊る銀龍が着いた指輪だった。


「この指輪って、やっぱり追跡装置の一種なのか……」


「逃がさない気だな……」


俺とネイサンがそう言うと、マサミさんが恐ろしいことを言う。


「追跡もするけど、仕事を終えないで逃げたら……禿げるわよ?」


「「「とんでもない呪いを仕込むなよ!?」」」


俺達の話し声が聞こえたのか、通りの向こうから朝日と弘志の叫び声も聞こえる。


「私達は普通のネックレスで良かったわね?」


「流石のドライト様も、女子の髪の毛には変な事をする気はないでしょ?」


女子達はシルバーのネックレスを渡されていて、ペンダントトップには阿波おどりを見る銀龍が飾られていた。


何にしろ円と梨花がそう言うと、マサミさんもウンウン頷きながら言ってくる。


「髪は女の命だからね……その代わりに、逃げたらデブになるけど」


「「「イヤアァァァ!」」」


「それじゃあ善君を見捨てて逃げられないじゃないの!?」


マサミさんの言葉に女子から悲鳴が上がる!


桐澤さんはとんでもないことを叫んでるが、凄い楽しそうなので確信犯なのだろう、朝日が「頼子!冗談でもそんな事を言うな!」って声を荒げて怒ると恍惚の表情になってたし……


何にしろ俺達は海岸地区の商店街に着くと、二手に分かれて探し物をし始める。


そう、俺達は盗まれたドライトのデコトラを探すための人員として、強制徴用されたのだ!




「しかしドライト様達が探してて、まだ見つからないんですか?」


ケイティが通りの向こうに有る駐車場を調べて戻ってくると、マサミにそう愚痴を言う。


ケイティにそう言われたマサミさんは、何故見つからないか説明してくれる。


「どうもユノガンド様やメルクルナ様達は、デコトラを巧妙に隠しているらしいのよ。

それで物資を回収しても自分で運んでるらしくってね?

デコトラを探知しようにも長時間は動いてないからダメで、ユノガンド様達はドライト様達が近づくと感知して逃げ出しちゃうから、いまだに見つけられないらしいのよね……」


マサミさんはそう言ってため息をついている、俺はそんなマサミさんに質問をする。


「マサミさん、ドライト達にすら見つけられないのに、俺達に見つけられるとは思えないんだけど……」


「逆よ逆、何回かだけど私と学園長が上手く追跡出来たり、デコトラの痕跡を見つけているのよ?

ドライト様が言うには、力の弱い私達の感知をユノガンド様達が上手く出来なくって逃げるのが遅れたり、デコトラを移動させるタイミングが遅れたんじゃないか?って言われたのよ?」


「はぁ……」


「それで学園長が、なら私達みたいに力の弱い者達で探索すれば、見つけられるんじゃないかって考えてね?

……丁度良いタイミングで通り掛ったのがあなた達なのよ?」


マサミさんがそう言うと、ネイサンが驚き目を見開き言う。


「じゃ、じゃあ、手招きしてたのって俺達を利用しようとして呼んでたんですか!?」


「そうよ?」


マサミさんに軽く肯定されてネイサンは固まってしまった、ケイティが言うにはネイサンは学園長と同じ様にマサミさんも尊敬しているので、本気で生徒の自分達を利用するために罠にかけたとは信じてなかったそうだ。


等と話している間に円達も次々と帰ってくる、そしてやはりデコトラは影も形も見えないと口々に言う。


「向こうも来たな、収穫はなさそうだが……」


ネイサンがそう言って向けた視線の先に、朝日達がこちらにやって来るのが見える。




「星司、ネイサン、そっちはどうだった?

こっちは見当たらなかったぞ、だが商店なんかは全然荒らされてなかったな」


「へぇ……こっちもデコトラは無かったけど、店は結構荒らされてたんだけどな?

ランダムに荒らしてるってのは当たってるみたいだな」


俺は朝日にそう返す、喫茶店を出る時にドライトに言われたのだが

、ユノガンド様達は海岸の港湾地区を碁盤場に区切り、ランダムに商店等を荒らしている可能性が高いとの事だった。


そしてドライトやシリカさん達が近づくと察知して逃げているのではないかとの事だった。


「はぁ……とりあえずこの近くは調べ尽くしたし、1度帰るか」


「喫茶店に、帰りましょうね?」


俺はバックレようと思い、何処に帰るかは言わずにそう言うと、合流したクリスティーナ学園長に速攻で釘を刺されてしまった。


周りからは連帯責任で禿げたりデブるから逃げるな!っとの声がかかるが、俺はボーッとして上の空だった、何故かと言うと学園長の後ろに本来の目的のショッピングセンターが見えたからだ。


「ああ……あそこを調べてすぐに帰るはずだったのに……」


俺がそう言うと、クリスティーナ学園長が唐突に言った。




「なら、最後にあそこを調べてから帰りますか?

まだ時間は有りますから」

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