帰還
やあ!やっと巣に帰れたドライトさんだよ!
母様とも再会できたし、祖父ちゃん祖母ちゃんにも会えたんだ!
父様?父様は、どこか遠い所に旅立ったんだって!
え?何処かって?しらんがな!って言うか何処か母様に聞いたら、
『うふふ、ドライトは気にしなくて良いのよ?』
って笑顔で言われてそれ以上聞けませんでした。
ちなみに、父様の旅立ちにはだいだいは立ち会ったよ?
「セレナ良かったわね……」
「セレナちゃんおめでとう!」
「おぉ!そう言えばバタバタしてて祝いの言葉を忘れておったわ、セレナ殿おめでとう!」
「セレナ、めでたいのぅ……」
「皆様、ありがとございます」
「あいかとー」
「おお!?どんどん言葉を覚えるな!」
「難しい龍語をこんな短時間で覚えるなんて、本当に頭が良いのね!」
「まぁ、俺の息子だからな!」
「さぁさぁ、早く巣の中に入るのじゃ」
「そうね外は寒いから中に入った方が良いわよ?」
「無視はやめてくれ!」
「そうですね、ドライト巣に行きますよ?」
母様が俺を抱いたまま巣に戻ろうとした時、俺はある物に気がついたのだった。
あれ?あれって……万年蔓だ!
黒龍のブレスから逃げた時に落としたやつかな?もったいない拾っておこう!
グイ……あ、あれ?
グイグイ!……お?おお!?
「か、かあちゃま?」
母様にガッチリ掴まれてて手の中から出れない……
「ドライト何処に行こうと言うのです、母から離れてはいけませんよ?」
い、いや遠くに行くつもりはないからちょっと離してください!
おお!?ジタバタしたら、さらにがっしり掴まれたぞ!?
「かあちゃま、はなちて!はなちて!」
「セ、セレナ、ドライトが離して欲しそうにしてるぞ?」
「どこに危険が有るか判りません、このまま成龍になるまで私の手の中で育てます」
「セ、セレナちゃん流石にそれは無理が……」
「愛情をもって接すれば問題ありません」
「い、いかんセレナ殿が壊れた!」
「仕方がないわね……」
「レムリア義母上、妙案があるのか?」
「セレナ……」
「か、母様、なんと言われようが私は絶対離しませんからね!?」
「ドライトに嫌われるわよ?」
「!」
レムリアお祖母ちゃんが母様を説得してくれたので、俺は自由になった。
「いいですねドライト、母からあまり離れてはいけませんよ?」
「あい!かあちゃま!」
「私の眼の届くところより離れてはいけません、それに母が戻りなさいっと言ったらすぐに戻るのです!」
「あい!」
「それから……、」
「セレナいい加減になさいな」
「お母様、ですが……」
「あまり縛りつけても嫌われますよ?」
「 ううう…… で、ではドライト気をつけて行くのですよ?」
「あい!」[ビシ!]
俺は敬礼をするとパタパタと飛び上がった。
するとスッと黒龍が俺の目の前に出てきた、そして……
「ドライトあまり我が儘言ってセレナを困らせるなよ?いいな!」
っと偉そうに指を指してきたので俺は……
[ガブウゥゥ!!]
その指に全力で噛みついてあげたのだった。
「ギャアァァァァ!ほ、本気で痛てぇぇ!」
「い、いけませんよ!ドライト!」
「セ、セレナ言ってやってくれ!」
「そんな物を口にしたらお腹を壊します!ぺってなさい!ぺって!」
「セ、セレナアァァ!?」
「ぺ!……まじゅいでしゅ……」
「あんな物を噛んではいけませんよ?いいですね?」
「あい!かあちゃま!」
「ううう……セレナァ……」
「本当に頭が良いわぁ~」
「うむうむ、素直だしのぅ!」
「お、お前ら仮にも俺の両親なんだから、擁護するなり慰めるなりなぁ!」
「「お前と孫のどっちが大事か、お前も分かるだろう?」」
「ちくしょう!味方はいないのかぁ!」
「ディアンが可哀想になってきたのぅ……」
「ううう……お義父さん」
「まぁ、わしもどっちが大切か聞かれたら孫の方が圧倒的に大事なんじゃがな!」
「うわあぁぁん!」
「ガンジス、見事にとどめをさしましたね……」
なんか、向こうで黒龍が泣いてるけど母様が「ほっときなさい」って言ってるので、ほっておいて万年蔓に向かいそして一生懸命に蔓を集める、前に落としたのもふくめて結構な量になったので巣に持ち込むために俺は結界の穴に向かった。
「ド、ドライトあまり離れないで……ああ!葉の陰に行ったら見えなく……!」
「セレナ安心なさいな……気配を隠してないし、ちゃんと姿が見えるようにドライトは行動してますよ?」
「ううう、そ、そうなんですが……」
「セレナ殿、心配しすぎではないか?」
「仕方がないでしょ?1ヶ月も離ればなれになってたんですから」
「ああ……やっと終わったようですね!何を集めて……?万年蔓?そんな物集めてどうす……ドライト!それ以上母から離れてはいけません!」
「待て!セレナ!」
「お父様!何故止めるのですか!ドライトが行ってしまいます!」
「よく見よ、巣の方向に向かっとる、採取した万年蔓を巣の中に入れるつもりじゃろ」
「なら母が結界を解除して……」
「ならん!」
「お、お父様何故ですか!?」
「爺、ボケたか?結界が有ったらドライトは万年蔓を結界内に入れられないだろ?」
「黙れ若ボケ!わしはずっと気になってたのじゃ、ドライトは確かに優秀で可愛い、じゃがセレナとアホの2人が張った結界を抜けれるほどか?いくらドライトが優秀で可愛いからと言って、まだ幼龍じゃぞ?」
「可愛いは関係ねぇだろ……」[ゴツ!]「いてぇぇ!」
「おおいに関係あるわ!」
「可愛くないバカ息子は黙ってなさい!」
「私とディアンの結界です、いくら優秀で天使も裸足で逃げ出すほど可愛いドライトでも、破れるとは……」
「ああ、じゃが実際にドライトは巣の外、結界の外にいるんじゃぞ?」
「そー言えば、そうね……」
「むぅ……?」
「あ、ああ!?ド、ドライト大丈夫ですか!?母がここで見守ってますよ!」
「セレナ……ま、まぁ、つまりここで見守っていればドライトが何故結界の外に出れたのか分かるかもしれない、と言う事ね」
「うむ、これはドライトや我らだけの問題ではないのじゃ……もし結界にほころびが有ったら……」
「龍族の皆が使う、巣と卵を守る結界にほころび……大問題だわ!」
「それを確認しなければならないっと言う事ね……」
「うむ、見よドライトが結界に近づくぞ!」
そんな風に盛り上がっているとは知らずに、俺は意気揚々と巣に近づく、万年蔓が多すぎたのか少しふらついたが結界の近くまでくると、ディアンのかけ忘れた場所から簡単に結界をすり抜け、1ヶ月ぶりに巣に戻ったのだった。
「「「「「へ?」」」」」
「ただいまでしゅ!」
「ど、どーいう事じゃ!?」
「明らかに結界が片方しか、かかってないな……」
「セレナちゃんのはちゃんとかかってっるわね?」
「ま、待って!もう一度ちゃんと確認するのよ!ま、まさか結界のかけ忘れなんてある訳が!」
「ディアン?今の場所は世界樹の枝が絡んでるから、注意して別にちゃんと結界をかけるように言いませんでしたか?私?ディアン!?」
振り返るとディアンが必死になり逃げているのが見えた。
お父様達がとんでもない速度で追いかけてる……私も追いかけてボコボコにしようと考えていると。
「かあちゃま!かあちゃま!」
ドライトが呼んでいる!行かなければ!
「どうしましたか?ドライト」
「みてくだしゃい!いっぱいあちゅまりましゅた!」
私はドライトの指の先を見ると、世界樹の枝葉に魔法で作ったのだろうか?タオルや純水が積まれてた。
「ドライト、良かったわね?でもそれをどうするの?」
「いもうとたちゅのおせわをしましゅ!」
俺はタオルを持つと純水に漬けて絞り、卵を鼻歌交じりに拭き始めた。
すると……
「おお、なんと賢い!」
「本当に賢いわ!」
「とてもディアンの血が入ってるとは思えん!」
「そうね!それにとっても愛らしいわ!」
「あああ、ドライト……なんて良い子なの!」
おおお!?何時の間に戻ってきたんだ!?
ってか黒龍が居ないな……聞きたくないが聞くしかないか……
「か、かあちゃま」
「何ですかドライト?」
母様はニコニコと笑なが聞き返して来る。
周りで聞いてる祖父ちゃん祖母ちゃんもニコニコと笑顔で見守ってくれている……
俺は意を決して聞いてみた。
「あのくろいりゅうはどなたでしゅか?」
[ピシ!]
世界が固まった……や、やっぱり聞かない方が良かったのか!?
で、でも気になったんだよ……!
まさかとは思うけどあの黒い龍が俺の父って事は……い、いや、ありえんだろ!
優しく聡明で美しい母、力と叡智にあふれ神々しい祖父と祖母達、それがあの残念なのが夫で息子だと?
そして俺の父だと……!?
か、母様なら否定してくれるはずだ!しかし母様は顔を青ざめると目を逸らしたのだった……
ま、まさか……そんな!っと考えていると何時の間に戻ったのか黒龍が再び俺の目の前に来てこう言った。
「俺様が龍王であり、偉大なる父だ!息子であるお前には特別に尊敬する事を許してやるぞ!」
それを聞いた俺は気を失い堕ちてしまったのだった……
そして気がつくと父である黒龍ディアンと祖父と祖母達は居なくなっており、傍らで母様が心配そうに俺を見守っていたのだった。
俺が気がついた事に気がついた母様は言ってきた。
「ドライト、彼方の父は遠いい所に旅立ちました、心配しなくても大丈夫ですよ?」
「かあちゃま、じいじとばあばたちはどこでしゅか?」
「ふふふ、遠い所に旅立つ父を、見送りに行っているのですよ?」
「とおいところってどこなのでしゅか?」
「うふふふ……気にしなくて良いのですよ?さぁ、もうすぐ夜ですお休みなさい?」
こうして俺は巣に帰還し母様に守られて安心して眠る事が出来たのだった。
……聞かない方が良い事って世の中いっぱい有るよね!お休み!
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