4日目・探索
俺達はヒロさんの家を出たのは朝方だった、普通なら授業の1時間目終わった辺りに家を出たのだが、通りにはそれなりの人がいた。
「なんか同年代のやつが多くないか?」
「ありゃうちの生徒達だな、おいお前ら!ちょっとこい!」
「あ、あれ?ヒロ先生!?」
「クミ先生もいるわ!」
「知り合いなんですか?」
「ユノガンドに賢者の学園って有ってな……俺とクミはそこで教師をしてるんだ」
「で、今駆け寄って来たのは私達の生徒達よ」
「それでお前等はなんでこんな所に居るんだ?」
ヒロさんがそう言うと、1番年上っぽい男の子が説明をし始める。
「昨日なんですが学園の授業が終わったら、学園長に全員講堂に来るようにいきなり言われたんですよ。
それで皆集まったら学園長が来て、ドライト・オブ・ザ・デッドが発令されたから頑張りなさい!って言われて……気がついたらこの町に来てました」
「が、学園長……」
ヒロさんがガックリしてしまったので、クミさんが学園の生徒に質問をする。
「あなた達だけなの?他の人達は?」
「先生達も一緒だったんですが、今は実地訓練の時や冒険者ギルドで登録しているPTで探索しているんですよ」
「それで、さっきこの見た事のない家に入ろうとしたら、天使の方が居て勝手に入るなと叱られました。
それで私達の事を相談したら、学園の寮が有ったはずだって言われたんです。
今はその事を先生達に伝えたんですが、町の探索を優先するように言われて探索中だったんです」
そう言ってゲームの盗賊みたいな装備を着けている女の子が通りにある家を指差した。
そこの家から天使の羽を持つ美しい女性が出てきて学園の生徒に話しかけてくる。
「ああ、まだ居たのね、良かったわ」
「ハナエル様、どうかしたのですか?」
「ええ、どこかで地図を見た気がして探したんだけど、家の中に有ったのよ。
ほらこれ、それでここが今居る場所で学園の寮って書かれてるのはここよ?」
この女性はクミさんによるとメルクルナ様の眷族の天使族で、幹部のハナエル様と言うらしい。
ハナエル様は優しく学園の生徒達に寮の場所を教えると、コンビニで地図をコピーしましょうと言って歩き始める、それを慌ててヒロさんが止めて今までのいきさつを話して今後の事を相談したいと言った。
「うーん、ドライト・オブ・ザ・デッドですか……私達もメルクルナ様はもちろん、ユノガンド様やエルナルナ様達からも何も聞いてないのよ?」
「ハナエル様だけなんですか?他の幹部の方達は?」
「マルキダエルは面白がってあっちこっち見てくるって、どこかに行ったわ。
ウェルキエルとアドナキエルも一緒に行ったわね、他の面々も居るはずなんだけど、どこに居るかまではちょっと分からないわ」
「あ、ハマリエル様がレポーターしてましたよ?
DTVとか言う局でした」
クミさんが思い出した事を言うと、ハナエルは途端に嫌な顔をする。
「あの局か……誰も見ないのに潰れないのよね……潰れれば良いのに!」
「な、何か有ったんですか?」
「DTVって、視聴者に凄く豪華な景品が当たるのよ?」
「は、はぁ……それなら皆観るんじゃ?」
ハナエルの言葉にクミさんが困惑していると、ハナエルが心底嫌そうに言った。
「当たった視聴者にどうやって当選したか伝えるかって言うとね?
テレビが爆発するのよ」
「「「はあ!?」」」
「私も何か面白いテレビやってないかチャンネルを回してて、一瞬だけDTVにチャンネルがいっちゃったのよ?
そしたらね……ドカンって吹っ飛んだわ!」
な、なんつーテレビ局だよ……ってかドライト様は視聴率を稼ぐ気が無いのか?
「それはともかく、そのドライトゾンビって言うのは素早く動けないなでしょう?」
「今はドライトポリスが運んでますけどね」
「何にしろ、アスモデルに連絡しておくわ。
ただ、あなた達を直ぐに帰せる可能性はかなり低いと思うわ、ごめんなさいね?」
そう言って謝ってくるハナエル様に、俺達はあなたのせいじゃないから頭を下げないでください!っと逆に慌ててしまう。
「ハナエル様、それよりもコンビニとか言うのは向こうで良いのですか?」
「そちらの方々には悪いのですが、こっちも少し急いでるので……」
学園の生徒達がそう言ってハナエルを急かす。
「あら、ごめんなさいね?
そこの角を曲がると大通りに出るから、そこまで行けば直ぐに……皆、下がりなさい!」
学園の生徒達が走り出そうとした瞬間、ハナエルがそう怒鳴って俺達を庇うように前に出る。
そして通りの角を睨むように見つめていると、その角から現れたのは天使の美男子だった。
「……アドナキエル、そんな所に隠れてて何してたの?」
「………………」
アドナキエルと呼ばれた天使の男は何も言わずにうつむいたまま、フラフラとこちらに近づいて来る。
ハナエルはますます警戒を強め、手を何度も振っている。
「……武器が取り出せないわね、ドライト様の結界でブロックされてるのね。
アドナキエル、それ以上近づかないで!」
そう言ってハナエル様がアドナキエルと牽制した瞬間だった、アドナキエルが反応したのは。
「……ハナエル……痒いんだよ……とても、痒いんだ……だから、だからお前を噛ませろ!」
アドナキエルは口を開き突然に走り出し、ハナエルに噛みつこうと飛び付く、そして!
[ドコォ!]
「ギャアァァァ!」
「乙女に噛みつこうとは何事ざますか!
恥をしるざますわ!」
アドナキエルが吹っ飛び、鎖がまをブンブン振り回すロッテンドライヤー女史が現れた!
「このこの!ハレンチざますよ、ハレンチざあます!」
こうしてアドナキエルはボコボコにされたのだった。
「ロッテンドライヤー女史がたまたま通りかかってくれて助かったわ」
「あ、あの、あの人は良いんですか?」
「ああ、どうせ油断しきってて噛まれて感染したんでしょう?
それに女性に噛みつこうだなんて、本当にハレンチだわ。
だからほっときましょう」
「は、はぁ……」
「それよりもほら、商店街が見えてきたわ。
私達はコンビニで地図をコピーしてくるわ、あなた達はどうするの?」
そう言ってハナエルは見えてきたコンビニ を指差す。
「俺達も付き合います、他の店に行ってもお金がないですしね」
そう言って20人近い集団でゾロゾロとコンビニに向かい、ドアを開ける。
すると1つの影がハナエルに向かって飛びかかってきた!
「噛ませろー」
「ハ、ハマリエル!?ちょっと、噛まないでよ!」
一瞬の隙を突かれたハナエルはアッサリと噛まれてしまう!
「キャアァァァ!痒……くないわね?」
「ハマリエル~、薬を使ったんだから、痒くないはずだよ~?」
ハマリエルの後ろから竜の様な羽と尻尾があり、腕や足などに鱗が有る美幼女がトコトコと歩いてくる。
「……あなたね、私を本気で怒らせたいの?」
「か、軽い冗談だって!そんなに怒らないでよ!」
どうやらハマリエルは噛まれたが何かしらの薬を使って助かったようだ、そしてやって来たハナエルを脅かしてやろうと噛んだらしい。
「で、あんたドライト様を裏切ろうとして制裁されたって聞いたけど、なんで生きてるの?」
「ひど!?いや、ステラ様とルチル様に間に入ってもらって、フルに謝ってもらったらアッサリと赦してもらえたよ」
「ドライト様ったらフル達には甘いんだから……」
「あ、あのそれよりも、薬ってなんですか?」
悪いと思ったがハナエル達の話に割って入る。
「あ、そう言えばそんなことを言っていたわね?」
「あれ?知らないの?」
「皆も~持ってるはずだよ~?」
そう言ってフルとハマリエルが説明してくれる、俺達、地球の面子にはリュックを、ユノガンドの面々には背負い袋を1つづつ渡しているらしいのだが、それは魔法袋になってて中には抗ゾンビ薬、痒くなくナールと言う見た目がリポビタンDにしか見えない治療薬が10本づつ入れてあるとの事だった。
「連絡連絡!連絡網で急いで皆に伝えるのよ!」
「待って待って!慌てさせないでよ!」
桐澤さんと円が慌てて学校の皆に連絡している、その向こうでは学園の生徒達が慌てて外に出ようとしてヒロ達に声をかけてくる。
「おい、急いで先生達の所に行くぞ!」
「あ、皆、待って!
ヒロ先生、クミ先生はどうするんですか?」
「俺達はこいつらに着いていく、連絡用の魔道具はストス達が持ってるんだろ?」
「はい、あとは組長とか委員長も持ってました!」
「よし、俺とクミは地球の方と一緒に行動して情報を集める。
ストスかアイラに会ったら、俺かクミに連絡をするように伝えてくれ……あ、マサミもそっちに居るのか?」
「マサミ先生は居ません、というか学園長も行方不明なんですよ……」
「あの2人か……なんか変なことしようとしてないだろうな?」
「気になるけど、今はそれどころじゃないわ……辺りを探索して物資を調達しましょう!」
「ほら、地図をコピーしといたわ。
一応人数分を刷っておいたから、1枚づつ受け取ってね?」
「ありがとうございます!」
「よし、それじゃあ出発するぞ!」
ヒロさんの掛け声を合図に一斉に全員が行動を開始する、俺達はコンビニの中に役立つ物がないか調べるために中に、学園の生徒達は教師に報告するためにドアに向かい、盗賊の女の子がドアを開けた瞬間だった、影が飛び込んで来て女の子を押し倒し叫んだのだ!
「液体ム◯アルファEXをー!」




