〈*ー1ー1〉
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──語り手side──
天使は元々、感情がなかった。
種族的地位は上でも、神の使徒として生まれるのであれば感情なんていらなかった。
要らないものだと誰もが思った。
天使は神の傍にいる“ 駒 ”と同じだった。
でもそんなある時、世界を管理していた一人の神が「何故」と疑問に思った。
「別の種族ではあるけれど、人間は感情を持っていてとても楽しそうだ。時に争い時に手を取り合い、笑うことも泣くことも怒ることも、その一つ一つが“ 感情 ”を際立たせている。なのに、……それに比べて天界はどうだ。そもそも神同士で会うことも少なく、娯楽もないこの空間で、まるで人形のような天使達に囲まれる日々。人形のような────いや、人形なんだろうな。使徒として生まれて、神の命令は絶対だと疑うこともない天使達……。これでは奴隷よりも酷い。────一度神々と、話し合う必要があるな。」
それから1000年後、神々は話し合った。
「どうして同じように生まれた天使には感情を与えないのか。」
「与えることに意味はあるのか。」
「神の使徒であるから感情は要らないと言う考えがそもそも違うのだ。」
「感情を持たせたら、使徒としての役割を果たさないのではないか。」
論争はかなり白熱した。
あの疑問を抱えていたのは一人だけではなかった。
そしてこの一言で、全てが決まった。
「神は全ての生き物に平等であるならば、天使だけ除くのは何故なのか。」
反対していた神々も、返す言葉がなかった。
だかやはり、不安と言うのは残った。
いくら神だからといって、神一人に対し多数の天使は辛い。
力を持つ神ならなんとかなるが、神の役割に力を必要としない者もいる。
反逆されたらたまったものではない。
だから一つ規則を決めた。
【神には逆らわない】
曲がりなりにも神は天使の生みの親ようなもの。
暗黙の了解であるけれども、一番守らなきゃいけない事。
この規則の元、天使達は感情を持った。
────約500万年前の話である。