〈0ー5〉
「種族の説明から……。と思いましたが、……もう決めてるみたいですね。どの種族でしょうか。」
それはもちろん。
種族と聞いた時点で決めていた。
“ 堕天使でお願いします。”
「……堕天使ですか。少し待っててください。」
そう言って、空中で何かを見ているみたいだ。
暫く眺めて戻ってきた。
「堕天使でしたよね?貴女が転生する世界では、堕天使は蔑まれていませんので安心してください。寧ろ、敬われていますよ。」
……そっか。
堕天使って神に反抗したりとかで堕とされた天使だったっけ。
“ なんて言うか、いい世界……なんですかね。”
「そうですね。管理している神も素晴らしい方ですし、貴女が転生する堕天使の祖先の方は堕とされたのではなく、自ら堕ちた天使と伝えられています。」
自ら……。
“ ……私が知ってる知識とは異なりますが、良い方達だったんでしょうね。
少し、会ってみたいです。”
「……ええ。私も出来れば会ってみたかったです。」
少ししんみりした空気が漂った。
でも、私が転生する堕天使が敵とかじゃなくて良かった。
「────さて。決める事は以上です。後は貴女を転生させるだけですが……。」
急に歯切れが悪くなった神。
“ ?
どうしたんですか?”
「今からいく世界はいい世界なのは確かですが、貴女と同じ様な転生者もいれば、召喚された者もいます。」
“ えーと、……つまり?”
「貴女が関わりたくない、面倒な方々が沢山いる……と言う事です。」
………………。
……え、もしかして話を聞かない勇者とか。
巻き込まれて敵サイドに落ちる脇役とか。
ハーレム築く男女や、それに突っかかる悪役令嬢とか……。
……頭痛くなってきた。
「彼ら彼女らは貴女と同じ地球出身なので、堕天使に悪いイメージを持ってたりするかもしれません。」
……あー。
そっちの心配もあるのか。
……今更変えないけどさ。
「ですから気を付けてくださいね。ここから1歩出れば私は干渉出来ませんので。」
“ ……残っていいですか。”
「ダメです。────ですがその代わり、私の出来る範囲内の特典はお渡し致します。どうにかそれでかわしてください。」
“ ……分かりました。”
「ではそろそろ転生しましょうか。」
面倒な事になったなぁ。
巻き込まれないといいけど。
私を中心に魔法陣…が広がり、徐々に体が薄くなっていく。
いよいよだなぁ、なんて呑気に考えてたら。
「────それに、」
神の声が聞こえた。
何だろうと思って見ると、神も見てて。
そして────
「────見るだけなら、好きでしょう?」
神らしからぬ、悪い笑みを私に向けた。
────全く、流石は神なだけあるなぁ。
僅かに口角が上がったまま、
“ 楽しんできますね。”
私も笑みを浮かべた。
────────────────────
──────────────
────────
────
──
真っ白な空間には、楽しそうな、神様がいた。