〈0ー3〉
「……それですね。」
“ えっ。”
こう手のひらに魔力が集まるイメージをしただけなんだけど……。
「それ以外特に何もしていないのでしょう?」
“ …………はい。”
「なら、それ以外ありません。」
“ ……何故こんなにも居た堪れないのでしょうか。”
「…………さて。予想外の魔力の増え方でしたが切り替えて。改めて言いますが、一般の方には魔力は認識出来ないものです。」
スルーされた……。
……へー、
“ 認識出来ない……ですか。”
「はい。そもそも貴女の住む地球は魔力を使うために創られたわけではなく、科学を基本とした世界として創られました。ですから、地球からの転生者や召喚された者はみな魔力は0です。確かに、稀に魔力がある人が訪れるのは事実ですが。」
“精神統一とかしてる人達ですか。”
いることにはいるんだ。
そりゃそうか。
「ええ。ですが、皆さん揃って1でした。」
“……1?少なくないですか?”
「いえ、これは凄い事です。魔力でも科学でもそうですが、0から1にする事は本当に難しいことなんです。元々何も無いところから、新しいものを生み出すわけですから。」
なるほど……。
確かに元々あるものからより、ないものから作り出すのは難しい……。
“ ですがどういう訳か、私には本来0のはずの魔力が1を通りこし、さらに5もある。
だから驚いたんですね。”
…………不本意だけどね……。
「はい。魔力のない世界で魔力を持つ。本来であれば魔力の底上げをする所でしたが……、必要なさそうですね。」
“ そうですね。
魔力の認識出来ない世界で魔力を持ってたぐらいなんで、大丈夫です。
……それに、面倒ですし。”
「面倒……ですか。魔力はいくらあっても困らない世界ですが……。貴女がいいのでしたら構いません。─────それにしても、このスキルは強力ですね……。」
“ ……私にはよく分からないです。
攻撃力とか出てますが、比較するものがありませんし。”
「そうでしたね。一般的にこの空間にお呼びする方々は魔力以外大体100前後ですね。多くて500でしたね。」
へー。
俊敏性以外は平均よりちょっと上か。
……走るの遅かったから俊敏性低いのかな。
“ ……知力は1000あるんですが……。”
ずば抜けてる。
そんなに頭良くないぞ、私。
せいぜい中の上だ。
「そうですね……。頭が良いと言ってしまえばそれまでですが、頭の良さは回転の早さ、理解力、判断力などもあります。勉強が出来るから頭が良いとも限らないでしょう?」
“ ……なるほど。”
「それとスキルの方ですが。このシュミレーションと言うスキル自体はほぼ全ての生き物が持っているものです。」
“ ?
なら、別に強力でもなんでもないですよね?”
「確かに幅広く使われていますが、制限があるんです。」
“ イメージに……ですか?”
「はい。例えばホームランを打つ時、色々なモーションを頭の中でイメージする。ダンスを踊る時、頭の中で踊りをイメージする。後は、厨二病もそうですよね。これらは全て頭の中でイメージします。」
“ そうですね。”
「このイメージはいつ、やどこでとか、どんなことを、とか明確にイメージしないといけません。貴女は火を何も考えず『火』とイメージして使えますが、他の人は火をどんな形でどのくらいの威力でどのくらいの大きさでをイメージしてやっと使えます。更に言ってしまえば、今撃ち合っている炎を貴女は自分の炎の方が大きいとイメージしてしまえますが、他の人はもう一度イメージをし直さなくてはなりません。貴女にとっては簡単でも、他の人は頭の使用範囲を超えてしまうのです。」
“ ……つまり、イメージの上書き……みたいなものですか?”
「簡単にまとめますと、貴女が目の前で見てるもの全てを貴女のイメージに出来る……という事です。」
な、なんか凄い強い……。
……うん、なら。
“ ……欲しい能力が決まりました。”
これが一番かな。
“想像の具現化をください”