町人カルディア
どーも。俺はカルディア。どこにでもいる平民だ。ジョブは町人。戦士は筋力が高く、騎士は耐久に優れ、鍛冶師は金属をあらゆるものへ変化させる。村人は農耕において秀でた力がある。だがの町人はこれといって何も無い。さらにレベル上限も低い。
戦士150
騎士 150
鍛冶師 120
村人 100
町人 50
…と、まぁこんな感じだ。
そんでもって俺のLvは50。言わずもがな種族限界値だ。
「おいカルディア!」
「あ?なんだよ?」
八百屋のおっさんが話しかけてくる。
「城で勇者召喚の儀式が始まったらしいぞ!感じるだろ?この尋常じゃない魔力!」
「確かになんかヒリつくな。今回は成功すんのかねぇ?」
「町人の俺らでも分かる魔力だぜ!?こりゃ期待できるぜ!」
勇者召喚ってのは異界から強制的にホールと呼ばれる穴を形成してこの世界に引っこ抜いて来る代わりに超絶強力なスキルとかを与えるSSS級の魔術で、今まで成功した事例はない。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……
「…これは…成功か?」
魔力が一点に集中してる。一糸乱れず綺麗にホールが完成していた。
ズバァァァァァアン!!!
「うぉっ!」
八百屋のおっさんが叫ぶ。街からも悲鳴の雨嵐。軽い阿鼻叫喚だ。
♢
「成功か…?」
1人の魔術師が口にする。
「ここは…?」
煙から身を出したのは長身の青年だった。
そしてその体から溢れ出る魔力。筆舌に尽くし難い圧倒的な質と量。
城内の全員が理解した。
絶対に勝てない、と、
それどころか一つ間違えたら殺されてしまうかも知れない。
「こ、ここはあなた様のいた世界とは別の世界でして、ミーリルという世界です!」
「お前らが俺を呼んだのか?」
魔術師は死を覚悟して答えた。
「ーーはい。」
そして対する答えは、
「おもしれーじゃん。どうやらすげぇパワーアップしてやがるしな!」
青年はニッと笑い語った。
「俺は星宮叶人だ。なんで俺を呼んだのか、この世界の仕組み、力の使い方を教えてくれ。」
「は、はいっ!」
♢
「………」
勇者か。まぁ俺には関係ねーな。
「八百屋のおっちゃん。そんじゃ俺、予定あっから。」
「お、おう。」
「さて。今日もやるか。」
『立ち入ることを禁ずる。』
リミーラダンジョンーー。ここはは立入り禁止ダンジョン。通称禁ダンと呼ばれていて最下層に伝説の存在が封じられているらしい。
俺は禁ダンに毎日潜っている。何階層なのかもわからず、十秘境の一つに分類されている。
「今日は何階まで行けるか…。」
1Fで既に強力なモンスターに遭遇するのがリミーラダンジョンの恐ろしいところ。
バスターヘラクレス。
Lv143
筋力 1369
耐久 3756
敏捷 1255
魔力 0
これがバスターヘラクレスのステータス。熟練の戦士一人では勝てないバケモノだ。
こんな超級モンスターに1Fで出会ってしまう。
「っしゃあ!いくぜ!」
♢
「……あ?」
「お、起きたか。カルディア。」
……なんで俺こんな所で寝てんだ…
「ってダンジョン!!」
「やっぱ行ってたのか。脱出玉持ってて良かったな。」
脱出玉とは致死ダメージを受けたとき、定めたポイントに転移できるアイテムだ。
「バスターヘラクレスにやられた。」
「あの超級のか!?」
モンスターにもランクがあり、
魔神級
魔王級
伝説級
超級
上級
中級
初級
と分かれている。
「鍛え直しか…」
「カルディア……もうやめろ。お前が種族限界値に達していることはもうみんな知ってる。」
「トレーニングメニュー増やさなきゃな…次は」
「カルディア!!」
温厚なおっちゃんが珍しく怒鳴る。
「俺だって分かってんだよ…!町人の俺がどんなに頑張ったって所詮ザコなことなんて!もう無駄な努力だって分かってんだよ!!」
「ならもう…」
「けどな、おっちゃん。無駄だって分かってても突っ走んなきゃいけない時ってあるだろ?俺はそれがこれなんだ!」
「カルディア……。死ぬなよ。」
そう言っておっちゃんは街へ戻った。
すまねぇおっちゃん。俺には約束があるんだ…。
♢
「なるほどね。その魔神級のモンスターってヤツが蘇ってるかも知れないから俺を呼んだ…。そんでミーリルにはLv、ステータス、スキルが存在する。か。」
「その通りです。」
大臣は叶人に相槌を打つ。
「んで、俺の力は『獄炎!』」
叶人の呪文によって城壁は風穴が空いた。
星宮叶人
Lv1
勇者
筋力 1500
耐久 1500
敏捷 1500
魔力10000
スキル
英傑
詠唱不要
「ふむふむ。だいたい分かった。で、俺にしてほしいことは?」
「リミーラダンジョンという所を攻略して頂きたい所存です。」
「よし。任せろ!」
そして叶人は3日後リミーラダンジョンへと出発した。
♢
ザッザッザッ!
「あれって勇者様!?」
「ホントだ!かっこいいわね〜。」
街が賑わってるな。誰か来てんのか?
「勇者が来てるらしいぜ。」
「おっちゃん。何しに勇者は?」
「…リミーラダンジョンを攻略するらしい…。」
「なっ!?」
俺はリミーラダンジョンに駆け出した。ガキの頃から毎日行ってた場所だ。あいつらよりも先に着ける!