葬式
ゴミの分別の最適解は火に入れることである。
それが真に必要な物なら手を入れるか火を消そうとする。
今日、1人亡くなりました。ふだんあれだけ存在感のない住人の方がなくなるとこんなにも慌ただしくなるとは思いも寄りませんでした。
私は死体の運搬をさせられましたが、あまり気分のいいものではありません。
先輩は馴れた手つきで木綿のシーツの上にアレを移動させると、レモンと香草を一緒に手早くくるんでしまいました。それからシーツの両端を荒縄でキュッと縛ると、私は足の、先輩は頭の方を持って暗い外階段へと出ます。
それから扉にかけられていた布、翼の生えた獅子が描かれた上等な真綿でできたそれをシーツを覆い隠すように被せます。
ずっと豪華な表札だと思っていましたが、まさかそんな目的に飾られていたとはびっくりしました。
私たちはチリン、チリンとシーツからぶら下げられた鐘の音が塔の中に響かせながら、暗い階段を降りていきます。
これは他の方と鉢合わせないようにするための配慮で、魔除けとかではないそうです。
後ろ向きのまま階段を降りるのはとても大変でしたが、横向きで歩くほど広くはありませんし、かといって走るわけにもいきません。
その間には、先輩たちは全ての住人に亡くなった方がいることとを伝えるため、大慌てで手紙を書いていたそうです。
私たちが3階へ到着したのを見ると、先輩たちは一斉に内階段へ消えていきます。
なんでも、こうしないと外階段が人で溢れてしまい運搬がままならなくなるそうです。
「ドライな方と思ってましたが皆さん本当は住人思いなんですね」と後輩の子は涙ぐんでいましたが、あの人たちに限ってそんなわけがありません。
・・・・・・あれ、私、ずいぶんとここに染まって来たのかもしれません。
追記:やっぱり本棚がだいぶ歯抜けていました。