ちょっとした喧嘩
1000回表が出たコインでも1001回目の表裏は分からない。
今日、珍しく喧嘩がおきました。
理由は野菜の調理方法についてですが、別に私たちの調理に問題があったわけではありません。
私たちは予め聞き出しておいた各自の嗜好にあわせた食事を提供しております。
ことの原因は野菜の調理を『銅貨を載せれば崩れてしまうほど煮込む』調理法を是とされる方と、『自然のまま食べること』を是とされる方がたまたま近くの席に座っていたことでした。
利用者も少ないとはいっても、そういった可能性が起きないわけではありません。
私たちも座る席に配慮をすることを求められてはいるのですが、できなかったことをいつまで悔いても仕方ありません。
あの場にハリスさんがいれば言葉巧みに言いくるめてくれますが、流石に偶然とは長く続かないものです。
調理室まで聞こえるほどの声でどちらも議論を交わしている二人のもとへ、私は恐る恐るとシチューを運んで行きました。
そして二人は私を見つけると、「君はどちらが正しいと思う!」と怒鳴りつけてきました。
念のためにその内容を聞きなおして見ますと、先ほどの「ニンジンの食べ方」についてのようでした。
その主張の理由としては、「何かに手を加えることが人間と動物とを分ける違いであるから、じっくりと煮込むべきだ」「自然の姿のまま食べることがベストである」という内容でした。
私は二人に睨まれながらしばらく考えて、「ジャムが美味しくて好きです」と答えると、「糖の塊であるジャムなどは健康に悪い!まだ動物のように丸かじりする方がマシだ!」「塩漬けや酢漬けならまだしもジャムなど想像するも恐ろしい!」などと怒られてしまいました。
そして私など居なかったかのように口論を再開し、食堂の喧騒は二人とも酔いつぶれるまで続きました。
目がさめたらまた口論が始まるのか、それとも部屋まで戻ったのか、あとで先輩に聞いてみよっと。
おやすみなさい。