新人
「成長とは鈍くなることである」
今日、私は初めて新人の世話をすることになりました。
それは私の実力が認められたというよりは、あの子のキツい北部訛りを聞き取れたのが私しかいなかったからです。
緊張していたのかただでさえ『馬が目を回す』とも言われる北部訛りが、さらに鞭打つようにまくし立てられたら私だってよく聞き取れません。
あの時だって最後の挨拶がたまたま聞き取れただけです。
彼女はここの仕事内容に酷く驚いてましたが仕方ないことでしょう。
望めば三食ともじゅうぶんな食事をとれ、キチンと働けばゆったりとした睡眠もをとれるのですから。
しかし流石というべきかハリスさんは彼女の方言にとまどうことなく会話していました。
試しに私も参加してみましたが、最初のうちはなんとかついていけたのですが、これまでずっと使わないよう働いてきたたせいかすぐにぎこちない話し方になってしまいました。
じゃあハリスさんは北部出身なのかと言えば、ゆったりとした東部特有の話し方も、聞いたことがない言葉も流暢に使い分けるのを私は知っています。
そしてハリスさんはいつもみたいにゲームを持ちかけて、見事にあの子を酔い潰していました。
まだ彼女の仕事が残っていましたので片付けておきます。
初日ぐらいは甘やかしても先輩たちは何も言わないでしょう。