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記述再現:ゴマのお菓子

あらゆる学問は料理に通じる。

「じゃあ始めるか」


「……はい」


 手始めに私はゴマを炒り、すり潰していきます。

 ごーりごーりプチプチ、とゴマが乳鉢の中で潰されていきます。

 中心から外れたゴマをスプーンで中心に戻してすり潰し、これぐらいかな?とお父さんに確認しては首をふられることを何度くりかえしましたかわかりません。

 私の仕事はただゴマをするだけだったのでちょっと暢気に構えていましたが、『調理大全』はやっぱり『調理大全』でした。

 カラカラに乾燥していたゴマは粉になり、それがだんだんと湿気ったような感じになりました。

 いつも使うのはこんな感じに食感を残してソースで伸ばしたりするのですが、お父さんは納得してくれません。

 潰したゴマが擂り粉木をのぼってきて、それを戻してもすぐにのぼってきて、いったいいつまでやらされるのでしょう?


 そんなお父さんはといえば、小麦粉を何度も何度もふるって、それを冷たい水に混ぜていました。

 パンを作るには明らかに水が多いですし、お粥にするなら挽く前の麦がふつうです。

 このまま温めてもネバーっとした糊になるだけですが、そういえばいったい何を作ってるのでしょうか?


 そんなお父さんはいつもみたいなローブ姿ではなく、私たちが普段つけているようなエプロンドレスを着ていました。

 基本的なつくりは私たちが普段着ているものと同じっぽいですが、生地は木綿ではなく絹でしょうか?

 模様や染めはありませんが、その背中には小さい翼と尻尾をモチーフにした装飾があしらわれ、フードには耳のようなものが生えています。


 いつも真面目なお父さんから考えると不自然極まりない恰好ですがそれがお父さんの趣味とかではなく、それを着ることが調理場を使う条件でした。

 お父さんのためだけに一晩で仕立てられたというだけあって、私的にはアリだと思います。

 ただランドリーには不評だろうなぁ、とか考えていたらハチミツと牛乳を混ぜはじめて煮込んでいます。甘くていい匂いがしてきました。

 でもすぐにゴマの香ばしい匂いで上書きされてしまいます。いえ、ゴマの匂いも好きですけど、いい加減腕がいたくなってきます。

 でもようやく油が出てきたみたいでわずかながらヌメッってきます。


 それにしても『調理大全』というと単純で少ない手順という印象がありましたが、今回のはたら手間がかかってるのが気になります。

 サラサラとしていた牛乳やトロトロとなり、火からおろされた時には半分の半分ぐらいになってドロリとしてました。

 それを私の練ったゴマをよく混ぜ合わせるように言われました。

 茶色だったものは薄黄色になりまして、ちょっと舐めたら酷く甘かったです。


 そしてようやく、水とハチミツ、小麦粉をよく溶かしたものを温めてていきます。

 ヘラでかき混ぜているとだんだんと粘り気が出てきて、あまり美味しそうには見えません。


 いったん鍋を火からおろして、私が練っていたゴマダレを混ぜ込みます。

 色も殆ど白に近い黄色になるまでかき混ぜると、再び火に戻して練りはじめました。


 ですが直ぐに火からおろして、水を貯めていた天板に容器を移します。


「これであとは冷やして完成だそうだ、お疲れ」


 お父さんは容器を天板ごと箱に入れ、鍵をかけてコックに預けました。

 聞けば同じものを前に作ってるところをみたことがあるそうで、たまたまそのレシピが手に入ったから再現してみようとしたそうです。


 その日の夕食、お父さんが箱を開けるのをみんなで見ていましたが、どうにも想像していたのとは違うらしく首を傾げていました。

 どうにもルンとしたお菓子ができるそうですが、出来上がったのは糊が少し固まっただけの甘い何か。

 生焼けのケーキの生地といえばいいでしょうか?


 それでもハチミツとゴマの味と香りがすることには変わりなく、私はこれでも十分おいしいとさえ思ってます。

 なのに、もしキチンと再現できていたとするならどれだけ美味しいのか想像もできません。


 ツルンとした食感ということはウナギとか鶏とか豚を煮込んだあと煮汁の固まりみたいになるのかな?

 なんだか想像できません。


追記:成功するまでに8日かかりました

おいしかったです

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