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米料理

「もし誰かがゲテモノを食べようとしているのをあなたが否定しようとした時、改めて自分が食べているものを見直してみなさい。

ゲテモノを食べていない人とは意外といないものだ」

 先日のいざこざのお詫びという形で米を手に入れることになったわけですがどうにも使い道がわからず、みんなで試行錯誤していました。おそらく麦の仲間だから粉にしてみよう、と臼をもってきてゴリゴリと挽いてみますがずいぶんと固く、4度も挽かなくては粉にはならず、しかも黒い皮のせいで見た目もよくありません。それにそこまでしても粒がずいぶんと荒いため捏ねるまでもなくパンにならないことはわかります。

 そもそも表面の斑な黒という色がどうしても不安をあおり、なかなか調理してみようとは思えませんでした。そんな風にみんなで扱いに困っていたら、ハリスさんが現れました。


「なんだ、これだけいて調理法もしらないとはな」


 そういってハリスさんは米を水で軽く洗いだしました。洗うといってもほんの数回、水の中でかき混ぜるようにしたらすぐにザルへと引き上げてしまいます。それから冷ましてあったスープストックに漬け込みました。続いて何やら黒茶色な破片も先ほどと同じように洗うと、今度は鍋へと入れて水から煮ていきます。

 その間に手なれた感じで野菜の下処理を済ませると、先ほど入れた黒茶色の破片と入れ替える感じで鍋に入れました。そして沸騰を始めたあたりで米をスープストックごと加えると、メイドの一人を名指しして歌うように言いました。


……指されたのは私でした。


 みんなに囲まれて歌うのはさすがに恥ずかしかったですが、料理に必要だといわれてしまえば歌わないわけにはいきません。ですが急に歌えと言われてあわててしまった私が歌ったのは童歌で、しかもだいぶ訛りが強い物でした。それでもハリスさんは気にするこてもなく私の歌に合わせるように鍋をかき混ぜます。そして私が歌い終わると今度はハリスが歌を返してきました。それは私が歌った歌の2番。そうなると今度は私が1番を歌うことになり、そんな調子で5回6回も歌いあっていたら気づいたらキッチンはランドリーみたいに合唱が始まってました。

 その中心にいるハリスさんは決して鍋をかき混ぜる手を止めず、足はリズミカルに石床を踏み鳴らしています。いつしかハリスさんが歌い終わったら私が、私が終わったらみんなが、みんなが歌い終わったらハリスさんが、と順に歌うようになり、私の番が何度来たか数えるのもやめてしまいました。

 そして私が何度目かになる2番を歌い終わりハリスさんの番になったときのことです、ハリスさんが歌ったのは1番ではなく3番でした。続けるための歌ではなく終わるための歌です。その歌い終わりに合わせる形でハリスさんは鍋の中身を皿へと盛り、最後に胡椒をまぶして完成みたいです。


「まぁこうやって煮込んで食うもんだ」

「お粥みたいなものですか?」

「実際に食べてみれば分かるが、全然違うぞ」


 せっかくだからとみんなで食べることになりました。みんなは虫みたいなそれを恐る恐る口にいれたりスープをを口にします。スープはスープストックの味とは別に肉の味と入れてないはずの塩のがしましたし、うっすらとハーブの香りもします。入れていた物から考えるにおそらくあの黒茶色の破片以外ありませんし、そしてそれがあの干し肉だということもすぐにわかります。

 米はプリプリとした歯ごたえでスープの味がよく染み込んでいてこれまでにない感覚でした。


「しかし米とは粘りがあると聞いてましたが?」

「いや、コレは米じゃないからな」

「はい?」


 いわく、米として購入してみたアレは米ではなくマコモの種だそうですが、マコモが米の仲間か麦の仲間かそれとも別種かどうかは本によっても分かれているそうです。粉に挽くにも適さず、茹でても粘りがないためどちらでもない、という著者が多いんだとか。しかし個人的にはマコモの種って食べられたんだ、という衝撃の方が大きかったです……

 とはいえ、マコモを米と呼ぶ地域もあるためあながち嘘ではないのでひと安心。しかし煮込むと白い実が膨らむのですが、黒い筋がのこってしまいそれがどこか幼虫のような見た目になるので人を選びそうです。でもまぁそれはソースで隠せると思います。


……ハリスさんってほんと、なにものなんでしょうか

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