手入れ
手入れを行うとき、それが体面的なものか実用的なものか考えよ
あぁ、また雨期がやってきました。私たちが生活する階下は外の影響を受けるため、雨期には普段より早く起きなきゃいけないのですが、眠くて辛いです。まず最初に行うことは食器の手入れで、木製ならカビを、金属製なら錆がないかを確認します。拭き取りと乾燥が不十分ですとあっという間にカビ錆が生えてきますので、前日の手入れは必ず複数人で行います。
……でも、雨期になるとそんな私に対する嫌がらせのようにあっという間に生えてきます。鉄は赤茶に、銀木製なら黒くに変色します。
そうなったらそれぞれに合わせた手入れをしなくてはいけません。銅ならレモンと塩で磨いたり、木製なら鑢をかけたり、と。レモンがもったいないとか言ってられません、レモン1つで食器がいくつも買い換えなくて済むのだからお得です。
それほど多くはないのですが、もし使おうとさていた食器の手入れにもたもたしていると先輩たちが仕事に入れないので、手早く確実に綺麗にしていきます。素材に関わらずどうしても錆が落ちない時は小さく割った砥石やヤスリで削ることになるのですが、馴れずに削りすぎるとデコボコして逆に見た目が悪くなるので気をつけなければなりません。特にナイフや包丁は切れ味が悪くなるので、他の子にはなかなか任せられません。だんだんと小さくなっていく食器を見ていると愛おしくもあります。
私は先輩たちよりはちょっと慣れているだけですので年に1度、ちゃんとした研ぎ屋に持って行って切れ味を戻してもらいますが、やはり本職が仕上げると違いますね。刃こぼれがないはずのあのナイフでさえ、研いでもらった後はそれと分かるほどキレ味が戻ります。
研ぎや削りが終わったら削り滓を綺麗な水でさっと洗い流して布巾で水気をふき取り、木製食器なら棚に並べていき、金属器なら網棚へと載せていきます。この網棚を最後、乾燥室で軽く乾かせば私の朝の仕事は終わりです。
朝食が終わりましたら今度は朝食に使った食器や鍋を洗わなくてはいけません。同様に昼夜も続きますが、この時は他の子たちも一緒になって洗います。鍋の焦げも素材に合わせて落とします。鍋を空焚きするもの湯を沸かすもの布でこするもの石で削るもの、塩やレモンを入れていいものダメなもの、みんなが私にそうであるように私もみんなにやり方を教えます。それというのも食器の手入れは一度怠るとその何倍も手間がかかってしまうためです。そのため休み明けはいつもヒヤヒヤしています。
もちろん全ての食器が毎日使われるわけではありませんが、住人の方々がたまに集団で食堂にやってくることがありますし、晩から晩まで宴会が開かれることだってあります。
そんな時に日々の手入れを怠っていると対応できなくなります。そうならないように私は日々頑張ります。