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世界の始まり

世界が平面か球体かで学者たちが議論をぶつけあっていた。

議論百出のなか、それまで寝ていた1人が議論に終止符を打った。

四角く、そして精密に描かれた地図を手にして

「地図を見、水平線を見、それでも分からないとは不甲斐ない」

と嘆いた。

「ふあぁ」


 あの日、私はお母さんにこっぴどく怒られましたが、幾つかの条件と引き換えにこの部屋の利用が許されました。


「仕事を遅れず休まず手を抜かないこと」

「はい」

「休みの日以外は立ち入らないこと」

「はい」

「他の子たちには決して教えたり気づかれないようにすること」

「はい」


 私としては最初からそれは守るつもりでした。だってベッドがいくら広くても布団は1つしかないんですし、せっかく幸せに寝てるのに誰かの寝相や寝言で起こされるなんて台無しですもん。それにふだんからこの部屋で寝てたら、自分たちのベッドで寝れなくなりそうで怖い。


「もし他の誰かがこの部屋に無断で立ち入ったのを確認したら、あなたとの関係に関わらず鍵は取り上げます」

「……はい」


 それはちょっと理不尽な気もします。だってお母さんやお父さんが入ったのを誰かが見たり、私みたいにたまたま発見するかも知れないじゃないですか。でも、鍵をかけることにしたのでかけ忘れなければ問題はありません。

 もらった鍵に丈夫そうな紐を通して首からかけることにしました。お母さんみたいに鍵束ではありませんが、ちょっと成長したような気がします。

 そんなたくさん部屋を見てきたわけではありませんが、ふつうは机なり尿瓶なり何かしらの生活用具があるのですが、部屋にはベッドの他は鍵のかかった本棚と灰1つ残っていない暖炉しかありません。シンと静まり返った広い部屋に1人、この前みたいにお父さんやお母さんが来たことはありません。

 私はベッド脇に置いていた本を手にして灯りの下に行き、ペラペラとページをめくっていきます。ハリスさんに勧められたその本は絵もたくさんあって文章も読みやすく、私でもどうにか読める絵本でした。

 内容は世界が作られた時を説明したもので、それによれば世界は最初に小さな木の実があって、それが育ってできた樹、世界樹とよばれる樹から色々と産まれたとしています。もちろん私は世界がどうできた知っています、そんな木の実からできるはずがありません。

 名前は忘れちゃいましたが、なんとかって神様が巨大なカニの上に降り立って色々な生き物を産んだって近所の神父様がおっしゃってましたもん。神父様が嘘をつくとは思えません。だから世界は巨大なカニの上にできてるんです。

 絵本は面白いわけではありませんし、読めるというだけで読みやすいわけでもありません、何度かページを戻ったりもしました。ですがその内容は不思議とスルスルと頭に入ってきます。

 どれだけ没頭したかは分かりませんが読み終えて本を閉じると、ぐぅとお腹が鳴りました。もう一眠りしようと思ってましたがすっかり目も冴えてしまってそんな気分ではないし、なにより空腹にはかないません。

 誰かに見つからないよう慎重に内階段へと出ると扉には鍵をきちんとかけ、それを二度三度と確認すると、段を踏み外さないように慎重に一段一段慎重に長い階段を降りていきます。たまにちょっと出くわしたりすることもありますが、「散歩中です」っと適当にごまかしてます。きっと怪しまれてないと思います。

 あれ、そういえばお母さんはあの部屋のことを知ってたのかな?

以来数百年にわたり、世界はドーナツ型であるとかたく信じられていた。

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