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干し肉と獣脂

知識は薬であり毒である。

「これはまた、ずいぶんと」


 荷車5台分山盛りの魔獣の死体、おおよその目分量で買い取ります。名目上は周囲の治安維持費ということにはなっていますが、どうにも私たちが食べていると噂があるみたいで味についてよく聞かれます。残念ながら私もまだ食べたことはありません、といちいち断るのもそろそろ飽きてきました。

 私たちは1匹1匹、槍でよく刺し生死を確認しながら処理室へと運び込みます。時折、生きている個体もありますので二度三度刺すことが大切です。運びこんだ物から順に鉤に引っ掛けていき、お腹を裂いて内臓を取り出します。まずは肛門に続く腸、それから喉元を切るとズルズルと引き抜けますので簡単なのですが、討伐の際に内臓が切られていると胃の内容物やらなんやらが飛び散って悲惨なことになります。抜き取った内臓は樽へどんどん詰めていきます、これに塩を入れると食べられるようになるという話もあるみたいですが、塩が勿体無いのでやりません。

 身体についた血を洗いながら魔獣の爪と皮を剥いでいきます。爪は皮と肉を裂いて引っこ抜けばまぁ抜くことができますが、皮を肉から剥がすにはその間にナイフの先でこするようにしてちょっとずつ剥がさなければいけません。普通のナイフだと脂がギトギトしてすぐに切れなくなってしまうため、お湯や直火で温めて落とす必要があります。

 ですが、私が使っているナイフは小ぶりではありますが世間では『魔剣』と呼ばれる類のナイフです。専用の鞘に入れていないときはその刃が熱めのお湯ぐらいまで熱くなります。そのため脂は溶けるので切れ味が鈍ることはなく、何十匹も解体することができます。普段の解体にも使えればいいのですが、そちらでの使用は止められてます。そうして剥いだ皮はよく肉片と脂肪を落としたら灰を混ぜた水に漬け込んでおきます。こちらは革や毛皮として外へ売ったり、裁縫の練習材料にしたりします。

 肉は大ざっぱに切り分けて脂をと切り取ります。そして馴染ませるように塩、臭い消しに乾燥させた香草をもみ込みます。もみ込みが終わった物は砂袋を重石にして冷蔵庫へしまいます。重石を載せると血が流れ出てきますが、棚を伝って砂が詰まったバケツにたまっていきます。毎日重石を載せる面をひっくり返す作業を7日ほど繰り返すと残っていた血は殆ど抜けきるので、血だらけになった塩などをそうしたら表面をお酒でさっと洗い落とします。

 これを改めて塩と香草粉末、それから香辛料を塗りこんで干せば一般的な干し肉になるのですが、扱っているのが魔獣の肉ですので毒抜きをしなくてはいけませんし、住人の方々は平気で三日四日放置するので保存性を高めなくちゃいけません。そのため肉を薄切りにしなくてはいけません。そして薄切りにした肉を重ならないように網へと並べ、乾燥室へと持っていきます。この段階で匂いはすでに消えていますし、洗濯物は花や果物の香りを少しつけているため気になることはありません。むしろ肉にそういった匂いがつかないか不安です。本音を言えば燻製に仕上げたいのですが、前にやって怒られました。

 乾燥室で火を水分を飛ばしてカチカチにしたら完成です。保存性を目的として味とか触感は二の次な仕上がりですが、よく噛めば食べられますし、味は濃厚すぎる肉本来の味と塩!「こんなものよく文句も言わずに食べられるよなぁ」、と感心してしまいます。

 取り分けておいた脂はヤカンへ大量に放り込み、ヤカンごとお湯で煮込みます。すると獣脂が溶け出してきますので、ヤカンを傾けて油壺へと布地で濾しながら注いでいきます。この脂は食用に使えるとのことですが、さすがにそれは気が進まないので蝋燭や松明へ使用します。

 しかしこのまま火を灯すと酷い臭いがするため、ドラゴンの涙と呼ばれる液を投入します。ちなみにドラゴンの涙と銘打ってますが、実際にはローパーの体液です。でもそれを知ると嫌がる人が多いため、商人は高く売るため、使う側は気持ちよく使うための言い換えです。似たような例では痛み止めに使われるドラゴンの爪ならローパーの触手を干したものですし、熱冷ましのドラゴンのヒゲはミミズを干したものだったりしますね。

 そんなドラゴンの涙を入れて脂をかき混ぜると底の方に澱が溜まっていきます。どうにもこれが臭いの原因らしくて、澱が混ざらないように脂を取り出すと、燃やしてもあまり臭くないロウソクを作ることができます。本当は生きたローパーを入れると買い替える無駄がなくていいのですが、管理する余裕が私にはないので多少割高にはなりますがドラゴンの涙を購入してます。

……最初に考えた人はなんで入れてみようとしたんだろ、体液にしろローパーにしろ


コメント:予定では50話が49話までの蛇足的説明回になります。

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