謎のカード
秘密を口にすることは、沸騰させた油を水に注ぐようなものである。
「受け入れのため空き室を掃除してたらこんな物が出てきたんですが」
ざらざらとテーブルに並べられたのは文字や絵が書かれた木製の札がたくさん。みんなで数えてみると絵が描かれた札が128枚、字が書かれた札が100枚、何も書かれてない札が28枚。
何かが書かれた札はどれも反対側は何も書かれてはいなくて、その表面は丁寧に磨かれてるいるのかつるつるしています。
字を読める人はいましたので聞いてみましたがどうにも髪型や服装、姿勢、それから性格に関する単語が書かれているみたいです。絵の方は動物や怖い怪物、ドラゴンやローパーなんかも描かれてました。
そしてなぜかローパーだけ色がつけられていて、しかも他は1枚ずつしかないのになぜか5枚も用意されています。
本を読むようにわかったのは、ローパーをやたら推したがる著者がいることで、おそらくこの木札の作者もその1人でしょう。
みんなであれこれと予想しあいます。やれ文字を覚えるための道具だとか、やれ投げて遊ぶものだとか、やれ普通のカードと同じように何か遊ぶルールがあるはずだ、とか。
とそこで、困った時に便利なハリスさんがタイミングよくやってきました。
ハリスさんはその使い方を知ってるとのことですので、手の空いてる私たちハウスメイド総出でカード勝負を挑みます。
途中からは洗濯場やキッチンのみんなも参加して、木札を賭けたちょっとしたお祭り騒ぎになりました。
でもハリスさんの木札はあとちょっとというところまで減らすことができたのですが、いつまでたっても無くなることはありません。
ちなみに私はというと、目配せされていたのでずっと黙っていましたが、早々に敗北してハリスさんを後ろから見ていた私からは、強引なイカサマを多用しているのがよくわかりました。
それでもいったいどんな手口なのかは全く分かりませんでしたが、カードを混ぜたりはじいたりするたびにカードが変化する様はまさに魔法使いみたいです。
普段どれだけ手のひらの上で遊ばれていたのかはよく分かりました。
私はハリスさんの味方をするつもりはありませんが、邪魔をするつもりもありませんので私は表情を手ぬぐいで覆い隠します。
何時もなら根負けしてくれのですが、結局すべての木札を持っていってしまいました。名目上は貸し出しということにしてあるので問題にはならないでしょう。
そして私は黙ってたご褒美に木札がいったい何に使われた物か教えてもらいましたが、確かにあれは黙ってるべきです、というか今後見つけたら見なかったことにしましょう。
どうして本に携わる人ってあぁも変なことばかり考えるのでしょうか?
しかし1滴ずつなら問題はない。