ローストチキンの作り方
人は未知を既知として語ることができる不思議な生物。
やっかいなのはその殆どが自覚していないことだ。
今日はローストチキンの作り方を教わったので、忘れないうちにメモします
まず鶏の内臓を取りました。喉を切って鶏のお尻から内臓を全て取り出します。この時にお尻を少し切り込みを入れておくと、内臓がひっかからにくくなるそうです。馴れない内はお腹を開いた方がいいそうですが、先輩はお尻からズルズルと引き抜いてました。
空になったお腹の中を水で何度も洗ったらキレイな布巾を詰めておいて、中の水気を取ります。
それが終わりましたら塩一掴みをすり込むのですが、勝手が分からず全体にすり込むまでに4掴みは使ってしまいました。私のはお腹を開いてるから塗り込むのは簡単ですが、先輩はお尻から手を差し込んでました。
バターを塩抜きしないまま皮にタップリ塗り終わったら、キノコや干し肉、ニンジンや余った野菜をバターとスープストックで炒めます。
野菜だけではなく米や魚に卵、果物を入れる人もあるそうですが、この詰め物は調理する人の好みだそうです。
開いたお腹とお尻を針と糸でキツく縫い合わせますが、縫い方があまいと中身が飛び出るため細かい作業が嫌いな私にはちょっと辛いです。
これを炉で焼きますが、焼き方は主に3種類。
一番簡単なのは香草と一緒に大き目な葉っぱで包んでから泥を塗り、それを炉に入れます。こうすることで余計な肉汁が抜けにくくなって、しかも泥を割ると香草のいい香りが部屋中に広がるそうです。
でも簡単といっても泥の水加減や塗る量を気をつけないと生焼けのところができたり、焼けすぎたり割れたところから乾燥する、から大変だと教えてくれました。
その派生で卵白で固めた塩で包むやり方もあるそうですが、塩黒糖を使ってもおいしいかもしれません。いつか試してみようと思います。
次に炙り焼きですが、天板に網と沢山の野菜や香草を乗せて炉で焼き上げます。こまめにひっくり返したり、皮が乾いてバリバリにならないよう天板に貯まった脂を表面にかけ続けないといけなくて大変でした。
火は熱いし脂は跳ねるし、匂いはきついし、それに肉の厚さで火の通りが変わるため同じ時間だけ温めればいいわけでもありません。私はエールを何杯飲んだかわかりません。
洗濯場での仕事は蒸し焼きされた気分になりましたが、こっちは炙り焼き、いわばエール詰めのローストメイドです。
私の焼いたローストチキンは少し焦げてたり皮がバリバリとしてましたが、先輩のは皮はパリパリで肉もジューシー、まさに完璧という焼き上がりだと私は思ってます。
それでも先輩は「まだまだかなぁ」と言ってましたが、いったい何がダメなのかわかりません。
でも汗を浮かべて火と戦っていた先輩は格好よく、いつかは先輩みたいになりたいと思います。
それからもう1つの作り方も炙り焼きなのですが、私が今回使った火を直火というなら、そちらは遠火で焼き上げます。
それも火が通るまでにかける時間は四半日以上、昼前に初めても夜にようやくできるというとんでもない料理です。
焼いてる間は冷めてしまわないように部屋の温度は砂漠のように暑くし、焼いてる間は常に手を動かし続けなければならないらしく、それを作りやすくしたのが直火のやり方だそうですが、そんなの作らされたらたぶん私は死にます。
そもそもそんな遠火では焼いてるというより温めてる感じなのに、本当に火が通るのでしょうか?
先輩の師匠だったコックがそれを食べたことがあるそうで、その味は「他のローストチキンが偽物だと思わされるほど」、だったらしいです。
でも私からすればそんな程度で劇的に味が変わるとは思えません。
きっと鳥の種類や詰め物なんかがとても素晴らしいだけのちょっと離れて焼いたローストチキンというだけです。
むしろ火でじっくりと焼いた方がパリパリに仕上がっておいしいと私は思います!
私たちがローストメイドならその料理人はチキンなのでしょう。
というか、そんな焼き方を最初に考えた人は何を思って作ったのでしょうか?