住人紹介:運営者
その病は誰もが生まれながらにしてかかっている。
主な症状は初期段階でも食欲低下、睡眠妨害、動悸、目まい、神経衰弱、頭痛、その他、多岐に渡る。
末期の場合、情緒不安定、強い幻聴や幻視に取りつかれ、独り言が多くなる。
その発症者は必ず死に至り、しかし発症を自覚できない者も多く、生涯に渡り自覚せずに死ぬ者もいる。
もしあなたがそれを自覚した場合、大切な人には告白することをお勧めする。
私たちは各自が抱えている仕事が終われば基本的には自由で、物を粗末にしたり人に迷惑をかけたり本を大切に扱えば何をしても許されてる。
中には住人の方と仲良くなってる子もいますが、恋愛に発展することは殆どないの。
だってみんなお爺ちゃんかオジサンばかりで、しかも食事や睡眠よりも本を選ぶような変な人ばかり。
中には親切な方や変わった子もいますから絶対、なんて言えませんが私に限ってはありえない。
だって誰かと親密になったりするとあっという間に噂が広まって、1日中聞かれることになるんだよ?
商人の中にはコレは!と思う人もたまにはいますが、ここまでやってくるような人はお金が大好きで、女性には興味がないの。
でなきゃ私なら今ごろ熱い話の1つや2つあるはずですもん。
でもハウスキーパーになりますと私なら『お父さん』、他の子たちはマスターとか家長とか親方とか、好き勝手に呼んでいるここの運営者の世話を任されることになります。
世話といってもいかがわしいことはしていないと言っていますが実際はどうだかわからない。
まぁお母さんもお父さんも見た目はおばちゃんとお爺ちゃんですので、できれば聞いてみたいとは思いません。
というか、家政のほとんどは私たちが行っているのに運営者なお父さんが何をしているのかというと、たとえば不審な人が訪ねてきたときの対応とか新しい住人の審査、あとはローパー発生みたいな大事件が起きたときなんかの報告や確認相談をしているみたいです。
たまに食堂まで食べにきたり、自分で大風呂を沸かして入っていたり、問題はあまり起こさないタイプの人ですが、本音としては他の住人の方々と同じす。見た目はお爺ちゃんと同じぐらいに見えます。
でも噂によればかれこれ200年近くはここに住んでいるらいく、白髪にしわくちゃな肌、それに伸び放題なヒゲをたくわえていて確かにずいぶんな歳にも見えます。
だけど誰かの手を借りたり杖をついたりすることはありません。
ハリスさんと飲み比べをした時はみんながハラハラする中、2人で大樽1つ分のエールを飲み干してしまいましたが、それでも酔っ払った様子は見せずに自分の部屋まで歩いて帰りました。
その一件以来、ハリスさんは『旦那』と呼んでます。
私はそんなお父さんを恋人とか彼氏とかではない感じで好きです。
話しかけるとちゃんと答えてくれますし、ハリスさんとは違った楽しさがあります。でもそうそう話題なんてあるわけありません。
もしも私がハウスキーパーになれたら、もっとお話できるのかな?
今はちょっと嫌だけど、あと40年もしたらお父さんの隣にいるのも悪くないかも知れません。