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砂を売る魔王

三流の商人はお互いに必要な物を交換する。

二流の商人は不要な物で必要な物を手に入れる。

一流の商人はお互いに不要な物でお互いに必要な物を手に入れる。

詐欺師は石1つで国を手に入れ、国で石を手に入れる。

 ここでは沢山の砂を必要とします。特にトイレに使うため常に一定量は必要ですし、料理や洗濯で使うこともありますし塩漬けする際の重りにつかったり、私みたいに枕の中身に使ってる子もいますし、万一の場合には消火にも使われます。


 ですが私たちが集めようにも外には出られないため買わなければなりませんが、重くかさばる物を売り歩く商人なんて聞いた事もなかったのですが、私たちが魔王さんと呼ぶ方はそんな砂や土を主な商品にしている変わった方です。

 先輩から聞いた話では魔王さんは商人としての気迫に欠けるとかで、親兄弟分が名前だけでも迫力を出そうと働いていた商館で魔王と呼ぶようになり、やがては自分でもそう名乗って店を開いて、そこの店主の呼び名が魔王になったとかなんとか。

 土や砂を売っているのは兄弟分の仕事を奪いたくないからみたいですが、そんなこんなで土砂だけでかれこれ200年以上取引が続いてるそうですからある意味で正解だったのかもしれません。

 でも今の魔王さんは6代目とか5代目とか人によって変わりますが、少なくとも魔王という名前にふさわしい当主ではないという思いはみんな一緒みたいです。


 魔王さんは土を焼いたり干して固めてレンガや食器にして砂漠で売り、砂漠ではシャベルや鍬なんか買っているそうですが、その空いた荷台山盛りの砂を持ってきてくれます。 商品の皿を見せてもらった事もありますが、あまり質がいいものではありません。ここで使われる食器は木製か銀ないしは鉄製ですし、屋敷でも当然使えません、それに実家で使っていた木の皿の方が長持ちしそうな気がしました。なにより、運んでいた食器の半分近くが割れていたのでその丈夫さは期待できません。

 魔王さんいわく「激しい道程でも割れずに残った丈夫な皿」として人気があるそうですので、物は言いようです。


 砂が沢山つまった袋を何人かで倉庫へ運び込むと、前に受け取り保管ついでに繕いをしていた袋、それと塩漬けの魚や果物が詰まった小さな樽を1つ、それから水が詰まった大樽1つを渡します。

どれだけ袋が多くても少なくてもソレは変わりません。

 元々がタダみたいな砂とはいっても、移動にかかる食料や手間なんかは0ではありません。ですが近くに砂漠があるここではタダみたいにもので、取引のたびにわざわざ計量するのも手間だからとそんな大ざっぱな取引契約を結んでいるそうです。


 先輩が他の商人の方々にも砂を買いたいと言ったところ酷く笑われた上、魔王さんの何倍もしたため諦めたそうです。

 商人の格言として『荷台に人を乗せるな』なんて言いますが、砂を置くのはダメみたいです。


 いつも同じようなボロボロな外套と悪魔みたいなお面をつけて、ガブガブと水を飲みながら休むそんな魔王さんを見ているとなんだか可笑しく笑いがこみ上げてきます。

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