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新人の仕事

「私の身体はどうだったのですか?」

「原因はわからんが、明日よりはいいのは確かじゃ」

 調理場と食料庫をつなぐ通路の端に水路があります。

 水深は膝下くらいですがその嵩が年間を通して増減することはなく、いつも氷水のようなつめたさで、また水晶のように澄み切っており、魚や落ち葉や砂ひとつ流れてこない綺麗な水が流れています。


 水路は人が一人這って入れるかという大きさで、灯りをかざしてみてもどこまでも続く綺麗に作られた石壁しか見えません。

 普段は誤って人が落ちたり物を落としてしまわないようにフタをかぶせておりますが、フタは重いし簡単な鍵がかけられているので、水を汲む時にはまとめて汲まないと時間がかかっていけません。

 その水汲みが私の最初の仕事で、まずは料理に使うための大滝2つ分を食堂へと転がしていきます。

 それから各住人への飲み水は大滝2つ分にレモンと香草を入れて、エールを仕込むための中樽2つ分と掃除用に大滝3つ分を用意します。

 掃除用の水はみんなが桶に汲みかえ持っていきますが、調理場にあっても邪魔なので食堂の入り口においておきます。

 もちろん飲み水としても使えるので、コップで汲んで飲むこもいますが殆どの子はエールを飲みます。


 私はエールのドロっとした感じが苦手でしたが、水で薄めると飲みやすくなることに気づいた時には踊りたくなりました。

 そのことを話すとみんなは「子供だねぇ」と笑いますが、苦手なものは苦手だから仕方ないでしょ?


 そんなこんなで汲み終わる頃には朝食の準備ができてるので、チャチャッと食べてしまいます。

朝食が終わったら、洗濯用の水を用意し、大釜に移したら炉に火をいれて沸かします。

慣れるまでは大変でしたが、半年もすればどの木がつきやすいか分かってきます。先輩方がやってきたら仕事を交代し、今度は洗い物用の水を運ばなければいけません。

 そして掃除をしているハウスメイドのために広間へ樽を運び、洗濯や洗い物で水が足りなくなるより前に新しい樽を持っていきます。

 もし何もしない時間ができたら休むこともありますし、料理の手伝いをさせてもらうこともあります。

 まだ新人の私に任されることといったら野菜の皮むきや洗い物ばかりですが、ときおり水の残りを確認しに走らないといけませんからしょうがないです。


 夕飯が終わり、ひと通り落ち着くと私は広間や食堂から使った樽を集め、水路の近くでて洗います。

 洗うといっても倒した樽に中に頭を突っ込んで、束ねた藁で軽くこすって小桶で水をかけておしまいです。

 樽を全部洗い終わりましたら大きいものから順に積み重ね、そのまま明後日まで乾かして私の1日の仕事が終わりとなります。


 以前、ローパーが出現した時に先輩方が水を運ぶのをみていましたが、流石というべきか汲み終わった樽を転がして受け渡しをしていました。

確かにあれなら素早く作業を行う事ができます、しかし最低でも2人は必要なことと、他に人が歩いてない事が前提となるため普段からはできません。

 また年に4度ある入浴日には普段の仕事に加えて大浴場いっぱいに水を汲まなければなりません。

それから仕事が少ない日であれば浴槽を洗ったり、湯を沸かしたりする必要もあります。


 私の仕事は大変です、火をがんがんに焚いている調理場や洗い場を何度も往復していると着ている服が汗だくで、夏場ともなると1日の内に何回もスカートの裾を絞らないと足に纏わりついて歩く事もままなりません。

 しかし私でそうなのですから火のそばから動けないみんなはもっと大変なはずです。

ですから私はみんなが飲んだりする為の水を欠かさないように今日も明日も走ります。


 新しい子が来るまでの辛抱です!がんばれ私!


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