エール作り
「紅茶をミルクに注ぐか、紅茶にミルクを注ぐかという口論がエスカレートして殺しました」
「つまり宗教上の対立と」
私はキッチンメイドの仕事で一番大変なのはエール作りと思ってます。
まず生麦を何日間か水に浸して芽や根を出させ、今度はそれを乾かし、また水を加えてパン種とエール泡とよく混ぜ合わせます。
それをほどよくかき混ぜて、温度に気をつけながら数日待ちます。
そうしたらソレを粗い木綿で濾しとった物が時間がたつとビールになります。
その際に浮き上がってくるエール泡は次のエール作りに使いますし、パンに練り込むと柔らかく仕上がります。
飲む際にはエール泡が入らないように板を動かして寄せて、トロリとした黄色い液を杯に注いで飲みます。
この時、そっと動かさないと泡が混ざってしまい、エールが濁ってしまい、飲めるように色が落ち着くで待たないといけないので気をつけなければなりません。
そんなエール泡は継いで継いで継いで味が深まるとされ、貴族に出されるようなエールには200年以上も受け継いでいるらしいですが、私たちのエール泡は何度か腐ってしまった、またはローパーの発生で焼却されてしまったため、今はまだ20年しか継いでないそうです。
ただエールは直ぐに傷んでしまうためできたら直ぐに飲みきってしまわなければなりません。
そのため私たちは何日かごとにエールを仕上げる必要がありますが、足りなくなるよりは余るくらいでないと飲み物に困ってしまいます。
どうしても飲みきれない場合には傷みかけのエールを商人たちに振る舞うと、ちょっとですが口の滑りがよくなります。
「エールは家の数だけ味がある」と言われるほどの好みや作り方が違うため、以前はコックしか作る事が許されていませんでした。
そこにハウスキーパーやランドレス、時には住人の方と喧嘩が絶えなかったため、みんなで話し合ってできたのが先ほどの工程です。
なおそれより前にも後にも大図書館全体で本と関係ない話し合いが行われたという話はないそうです。
そうしてできたエールを飲む段階で各々が一味を加えたりして飲んでいるのですが、ある時から小樽1つ分ほど作り手に任せて色々なアレンジを許可するようになり、香草や香辛料、果物をなんかを漬け込んでみたりと、みんな思い思いのエールを作っています。
私はソードリーフの葉を加えたものがほんのりと甘みがあって好みですが、漬け込むにも葉液を加えるにも新鮮なものでなければならないためなかなか作れないのは困ったものです。
今日は乾燥させた麦の一部を焼いてたみたいですが、いったいどんな味になるのか楽しみです。
補足
ソードリーフは実在している植物とは別物です。