木下秋「マホロバ堂書店でございます」セルフ・インタビュー
野良小説家(自称)、木下秋が書く長編小説「マホロバ堂書店でございます」が最終話を迎えた。
2014年の12月に連載が始まった「マホロバ堂書店でございます」。秋は連載開始当時、12月19日の活動報告にて「たぶん長く続く作品になるのだと思います」と語っているが、実際は五ヶ月で終焉を迎え、本人も『打ち切り』だと認めてしまっている。どんなキッカケで書き始め、何を誤り、『打ち切り』という終わりを迎えてしまったのか。本人に語ってもらった。
(取材・文/木下秋)
「『オモシロイ!』って誰かに言ってほしくて書いてますからね」
――「マホロバ堂書店でございます」がこの度、連載終了を迎えましたね。お疲れ様でした。
秋:ありがとうございます。……といっても、あまり喜んでもいられない終わり方ではありましたけどね。(笑)
――といいますと、やはり秋さん本人もおっしゃる通り、「打ち切り」だというところが問題なのでしょうか。
秋:そうですね。例えば“週刊少年ジャンプ”で連載している漫画だって、読者から「オモシロイ!」って言ってもらえなければ、いわゆる『打ち切り』ってヤツを食らって、強制終了させられるでしょう? 私だって素人なりに、「オモシロイ!」って誰かに言ってもらいたくて書いてますからね。気付いてしまったんですよ。自分でね。「あぁ……この作品はもう、オモシロクナイぞ」と。(笑)
「プロとしていつかデビューしたいんなら、長編小説も書けるようにならなきゃ、と」
――そもそも「マホロバ堂書店でございます」は、どういった経緯で生まれた作品なのでしょうか。
秋:去年の九月いっぱいで「野良怪談百物語」っていう九十九日間連続投稿の企画が終わってひと段落して、短編とかをちょこちょこ書き出してはいたんですけど、「このままじゃダメだっ!」って思ったんですね。とにかく、「テーマ短編」とか「野良怪談」とか、そういう企画関係なく、小説を書かなきゃ、って。今まではそういった企画をやる! って宣言して、自分を追い込んで半強制的に自分にやらせてたわけですね。そうじゃなくって、自主的に書かなきゃいけない、って思ったんです。それに、プロとしていつかデビューしたいんなら、長編小説も書けるようにならなきゃ、と。だから急遽、クリスマス前だったんでそれに絡ませた話を作って、それをプロローグとして、書店を舞台とした長編を書き始めた。それがキッカケです。
――でも、それで長編を突然始めちゃうとか、リアルタイム更新小説(※.「マホロバ堂書店でございます」の第一部は、小説内時間と現実時間がリンクする内容だった)という設定とか、結果自分を追い込んでますよね。(笑)
秋:そうですね。(笑) 自分で自分を追い込まないと、やらないんですよ。僕。基本グータラで、不労所得を延々もらい続けて毎日空を眺めてご飯食べて寝る、ってのが正直、一番理想的な生き方だと思ってますよ。(笑) 必要以上のお金は欲しくない。生きることができればそれでいい、って感じで。でも、現実はそうはいかないですからね。働かなくっちゃあ。だから目指すのが小説家なんですけど。小説を書くのは、まぁ楽しいんですけど、でも、書くのに比べたら読む方が楽でしょう? 映画見るのは、もっと楽。怠けちゃうんですよねぇ。だから自分を追い込む形にして、書いてるんです。そういうヤツはダメだなぁ、とは我ながら思いますよ。(笑) でも、自分を追い込んででもやろうとしてる、ってとこは、評価してほしいな。(笑)
――なるほど。(笑) ところで秋さんは現役の書店員だと聞いてますけれども……。
秋:はい。アルバイトですけど。七年目、かな。
――やはり「マホロバ堂書店でございます」の舞台が書店なのはその影響ですか?
秋:そうですね。自分が働いてる環境、ってのはそこにいる人にしかわからないし、小説として書きやすいですよね。だって例えば「半沢直樹シリーズ」の池井戸潤さんが書く小説は銀行が舞台のものが多いけど、それはやっぱ池井戸さんが元銀行員だからで、「チームバチスタの栄光」でお馴染みの「田口・白鳥シリーズ」の海堂尊さんは元医者でしょう。だから私も書店員だし、書店が舞台のお話をいつか書こう、と思ってました。
「終わりの見えないままにはじめちゃったから。そこが反省点です」
――さて、そんな経緯で生まれた「マホロバ堂書店でございます」なんですけれども……ズバリ、どこが悪くて『打ち切り』になってしまったのだと思いますか?
秋:(笑) ほんとに、“ズバリ”だね。
――……これが仕事なもので。(笑)
秋:自己分析してみて、理由はいくつかあるんです。まず一つ、『小説で日常系は無理だ』。“無理だ”っていうか、僕には“無理だった”なぁ、と。この小説はいわゆる“日常系”ってヤツをイメージしてて、っていうのも、僕自身“日常系アニメ”とか“日常系マンガ”ってのはわりかしすきなんですよ。でも、ああいうのはやはり“可愛らしい絵ありき”というか。可愛けりゃ、愛くるしけりゃいい、みたいなとこあるじゃないですか。(笑) バカにしてるわけじゃなくって、そのキャラクターを愛することができてはじめて、日常という名のストーリーが許されるんですよね。だって、別に不思議な出来事も何も起きないんだから。だから“日常系”なのであってね。でも、小説でそれは難しい。可愛いだけじゃあね。僕、“あざとい可愛さ”みたいなのはニガテだし。だから、ちょっと無理があったね。
――なるほど。
秋:他にも、『キャラクター達に自分の最近考えていることを代弁させようと思っていた』。様々な考えのキャラクター達がいて、最近リアルに起こってる出来事なんかがあったら、ディベートさせようと思ってたんだよね。でも、僕それ忘れて“エッセイ”はじめちゃったから。(笑) 「ほんのゆびならし」っての。だから、思ったことがあってなんか書きたくなったんなら、自分の言葉で「ゆびならし」に書いちゃえば良くなっちゃったから、「マホロバ」にそれを書く必要はなくなっちゃった。あと、『恋愛模様を書きたかったけど、無理だった』。(笑) ちょうど始めた時、「ハチミツとクローバー」を読んで感化されちゃって。(笑) ああいうのを書きたい! って思ったんだけど、無理だった。
――……他には?
秋:『僕自身が、あらゆる趣味に飽きてしまった』。(笑) キャラクター達には個性として趣味を持たせようとしたんだけどね。僕の多々ある趣味を一つ一つ継承させようと思ってた。でも、僕自身そのあらゆる趣味に、去年の年末に飽きてしまったんですよ。オーディオ、アイドル……。特撮は今でもすきだけど。まぁどの趣味もキライになったわけじゃあないんだけど、情熱をなくしてしまったんだね。だからキャラクター達に熱く語らせることはできなくなってしまった。もう純粋に、簡単に言えば、『書くことがなくなってしまった』んですよ。あまり細かいことを決めずに、終わりの見えないままにはじめちゃったから。そこが反省点です。……キャラクター達には申し訳ないことしたなぁなんて思いますよ。あと、少なくとも読んでくれた人達にはね……。申し訳ない。力量不足ってやつでして……。
「まだまだがんばるよ!」
――終わってみて、今の心境はどうですか?
秋:正直、“荷が下りた”って感じです。(笑) 去年の年末の時点で「あ、これヤベーな」とは思ってましたんでね。「一人称キツイなぁ」とか。(笑) 「これ、おもしろくねぇな」とか。終わらせられて、良かったです。さっきも言ったように反省点はたくさんあるので、早く次が書きたいですね。結局、書いて良かったなぁ、とは思う。いろんなことに気付けたから。「マホロバ」は凄まじい失敗作だから、ほんとは消してしまいたいんだけど、僕はまだまだ成長して素敵な文章を書けるように努力するつもりだから、あえて残しておきたいと思ってます。カッコワルイところを見せるのも、先人の役目だと思うんですよ。「こうやって失敗したよ」っていう。そこからなにか感じ取ってもらえれば、と思います。
――次の長編はどんなものになる予定ですか?
秋:そうですね……一言で言えば“王道”。ドキドキするお話が書きたいです。
――最後にこれを読んでくれた人に、一言どうぞ。
秋:『ブックマーク登録数:4』だから四人くらいしか読んでくれてる人はいないと思うんだけど、それでもここまで読んでくれた人、たぶん憂木くんは読んでくれてると思う!(笑) ありがとう! そして、申し訳なかったです! あなたの時間を奪ってしまって! 自分が不甲斐ないです。でも、「マホロバ」を反省材料にして、これからもっと書いていきます! 「マホロバ」もがんばって書いてたんだけどね!(笑) でも、「オモシロイもの」じゃあないと、ダメだと思うから! まだまだがんばるよ! またね!




