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高校3年生 秋

 私は真田君とやり直す事にした。


 この上で更に嫉妬はしたくないと思い、冴子ちゃんとの事は聞かない事にした。


 これは後の致命的な間違いの一つなのだが、当時の私には恐らく受け止めるキャパシティが無かったと思う。

 聞かなかったからこその思い出と人生が現在間違いなくあるので、それもまた起こるべくして起こったのだ。




 私は散々泣いた後部屋で真田君とやり直しの誓いにキスをした。


 私は目が一重に腫れ上がるほど泣いて、顔は真っ赤で、鼻はかむ事すらかなわないほどに詰まってしまっていた。

 挙げくの果てに、真田君が来るまでの間は汗だくで寝ていたので、髪はボサボサの部屋着で汗くさいという、全く良いとこ無しであった。


 だからこの時のキスは、凄く嬉しく幸せなはずなのに申し訳なさと息苦しさと瞼の重さで辛かったイメージの方が大きい。


 そして改めて部屋を見渡し、窓が開いてない事に安堵した。

 今思うと、こんなに酷い顔になった私を見ても驚かなかった母は、ここまで見越して窓を閉めたのだろうかと勘繰ってしまう。




 真田君は友達と夏祭りへ行くという事で少し滞在したら帰って行った。




 その少し後に秋世が来た。


 秋世も夏祭りへ行くからすぐに帰ると言っていたが、開口一番

「真田来た!?」

と言っていた。

 秋世は真田君に聞かれ、今日私は家にいるという事を伝えたらしい。

 私はもう一度付き合う事を報告した。


 すると秋世は驚いて笑った。

「良かった。

 あんた達本当に似合いのカップルなんだよ。

 私にとって自慢の友達カップルなんだよ。」

と笑いながら泣き出した。


 夜には優子からも電話がきて、また今まで聞いた事のないほどのテンションで

「良かったね!」

と言ってくれた。




 私は皆にお礼を言った。


 皆が支えてくれたから、本来辛いだけだったはずの時間に私はいっぱい笑えたのだ。






 そして新学期が始まった。


 私は真田君と学校で言葉を交わす機会が増えた。

 学校を出る時に手を繋いでくれるようにもなった。

 皆で動く事の方が多かったが、たまに真田君の家へも行った。

 私と真田君は二人でいる時は相変わらずで、彼は多くを語らなかった。

 私はやはりそういう空気も大事に思った。


 真田君のお母さんは、私と顔を合わせると笑いながら私にピースサインを出して、私は笑って会釈をした。

 三人で焼き肉へ行った事は今でも三人の秘密である。




 ただ一つ気掛かりなのは幸の事だった。

 幸は彼氏と別れた。

「進路の話してたら勢いついちゃってね。

 いつかこんな日が来る気がしてたから、それが今だったんだと思う。」

と話していた。


 二人の進路は幸が東京で彼氏は仙台の予定だった。




 幸はそれから推薦の面接を受けに行ったり、住まいを探しに行ったり、既に東京にいるお姉さんの所へ行ったりなどで、学校を休みがちになった。


 しかしこれは他人事ではなく、私も短大の推薦面接があり美喜と共に志望校へ行くなどをしていた。


 三年生は少しずつ卒業後に向けて動きだした。






 真田君の志望は関東だった。


 私は彼が進路を考えている時に側にいられなかった。


 いや正確には、話すタイミングはいっぱいあったはずだが、私のゼロ思考力と真田君の無口のコラボレーションがそういう場所を作れなかったのが原因だ。


 ただ側にいて話しをして何かが変わったとは思えなかった。

 何故なら彼は彼のお父さんがいる地を選んだのだ。

 そこには私が入り込んではいけない気がした。


 最初はやはり離れる事にショックを受けた。

 でもそれほど悩まず、離れても何とかしようと私達はお互いの思いに期待をする事にした。


 もう別れるなんて御免だった。


 まだ実感がわかなかっただけかもしれないが、これまでの出来事は少し私達を強くしたように思う。






 秋には体育祭があった。

 私は運動だけは自信があったのでこういう行事が昔から大好きだった。


 真田君はこの頃178センチに到達し、遠目にも目立つようになった。

 私達は20センチ以上差カップルだった。


 真田君は後輩女子に写真を撮られたりしていたが、そういう事も前ほどは気にならなくなった。


 結局のところ信じるしかないのだ。

 クラスメイトで大人組の加奈子が

「付き合っちゃうと前みたいに攻められずにどうしても守りに入るんだよね。

 でも信じる事ができるのも付き合っているからなんだよね。」

と言いなるほどと思い、私は信じるという事を大切にしようと思った。




 私は体育祭ではリレーを走った。

 大谷君が走っている私に

「育実ころべ!」

と喚いていた。

 それを見た秋世と幸は指を指して笑っていた。


 総合優勝は宮本と大谷君のクラスだった。





 体育祭の後は各々のクラスで打ち上げがあった。


 私達のクラスは皆で焼き肉へ行ったのだが、その時女子のテーブルで恒例の気になる人話が発生した。

 久美ちゃんというクラスメイトの女子が、クラスの男子に好きな人がいると話した事で一気に場が盛り上がった。

 彼女は大人しいが他人思いの良い子で、そのテーブルにいた皆が

「応援するよ!」

「頑張って!」

と言っていた。


 美喜だけが

「どの人だっけ?」

と言っていた。

 彼女は校外でも忙しいからか覚えていない人が多い。

 誰かが

「ほらあの人だよ。」

と教えると

「ふうううん。良いじゃん。」

と言って笑った。


「今度デートに誘ってみようかと思って。」

 そう話した久美ちゃんがいつもより相当可愛く見えて、恐らく同じ感想を抱いた女子達の黄色い声が舞い上がった。


 私は可愛い久美ちゃんの表情を見られた他にも、このタイミングで普段話さない人達とも仲良くなる事ができた。

 加奈子もその1人だ。


 皆それぞれの高校生活を送っていて、非常に考えさせられる話を残りの短い期間にたくさんする事になる。






 それにしても行事は恋のテンションをあげるのだろうか、学校行事前後はカップルが増える。

 体育祭の前後は周辺も含めて学校の恋愛事情に少し変化があった。


 秋世に彼氏ができた。

 相手はバレーボール男子部の主将で同級生だった。

「好きになっちゃった。」

と言ってから数日も経たずに付き合い、他人の事を言えないのだがかなり電撃的で身内には衝撃が走った。

 こういう感じは昔からである。


 冴子ちゃんは文系組の男子と付き合いはじめた。

 私達は会話をできなかったが、彼女がその男子と屈託の無い笑顔を見せていた姿を見てとても嬉しく思った。


 そして田中君が文系組の田中君ファンの1人と付き合いはじめた。

 それに呼応するように文系組の真田君ファンが少し息を吹き返し、地味な嫌がらせをまた私にするようになった。




 この時期に発生した出来事はかなり面倒なものに発展し、高校卒業後の私の生活にも影響していくのだが、思考力が弱い私が気付くのは少し遅い。






 それに気付くのが遅くなった事が、私の青春において最大の間違いである。

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