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女の嫉妬

 冬休みが終わると他のクラスの女子に廊下で指をさされたり、じっと見られる機会が増えたように感じた。




 嫌な予感はあった。

大抵こういう感覚がある時は決まって悪口を言われているのだ。


 クラスの友人とお昼ご飯を食べながらその話をすると

「真田君かっこいいから、最近ファンが増えたり好きな子いたりするらしいよ。」

と言われた。




 私は殴られたような気分になった。


 自分の彼氏が好かれるのは嬉しいが、恋愛感情が絡むとなると非常に困る。


 私は真田君の彼女ではあるがそれだけしか無い。

 頑張ってみてはいるのだが中々自分に自信を持てるようにはならないのだ。


 そしてそういう部分を埋めて欲しいと、あの口数が少ない彼に求めるのもどうかと思う。




 最初のうちはそれでも気にしないようにしていたのだが、とある文系組女子が私とすれ違った瞬間に

「この人と私とどこが違うのよ!」

と言って泣き崩れた時には正直な所参ってしまった。


 真田君を好きらしいと聞いた事がある女子だった。


 真田君に告白して私と付き合っているのを聞いたのだろうか。

 それとも誰かに探りを入れて聞いたのだろうか。


 しかしどんなに泣かれても喚かれても人の気持ちは変わらない。

 それはあの子も私も同じなのだ。

 だから私が声をかける訳にもいかないし慰めるわけにもいかない。




 私は少しだけ下を向いてその女子から離れた。




 社会人の彼氏がいる優子は

「こういうのが面倒だから高校生は嫌なんだよね。」

と言っていた。


 優子と美喜はいつも真田君ファンのリアクションに対し

「気にすんなって。」

と励ましてくれた。




 私は真田君にこのような事を一切話さなかった。

 聞かされたところで真田君に何かできる訳でもないし、心配をかけるだけだと思ったのだ。

 ましてや誰かが好きとかいう事を本人に話すのは下世話だなと考えた。


 今思うと、どこかの女子の思いを代弁したくない気持ちもあったように思う。




 幸は

「私なら言っちゃうね。

 ふらふらすんなよとか言っちゃう。」

 と言っていた。




 私が真田君へそう言えないのは私が自分に自信が無いからだ。


 彼女であってもキスをしても結ばれても、それでも私が努力をするのは彼と釣り合いたい、好かれたいからなのだ。

 どんどん成長して変わっていく真田君に少しでも追いつきたいのだ。

 そして多分いつも漠然と不安なのだ。




 やはり真田君を信じて、私がもっと頑張るしか無いのだろうか。




 私はこうして今さら嫉妬について考え始めた。






 そんなある日、G組の廊下で秋世が文系組女子数名と話しているのを見かけた。


「あいつの気持ちはあいつの物だろう?

 自分で頑張れよ!こんな風に私のところに来るんじゃなくてさ!」


 秋世が珍しく大きな声で怒っていた。


「恋愛感情なんて薄っぺらい物じゃないんだよ。

 あいつは私の大事な親友なんだよ!」


 G組の出入口にはG組の人達が群がっていて、その中に幸の姿もあった。

 私は幸に駆け寄りどうしたのかたずねた。


 どうやらここにいる文系組女子の中に宮本を好きな子がいて、秋世に宮本と付き合っているのかと訊ねて来たのが始まりだったらしい。


 私は秋世の怒りっぷりに圧倒されてしまった。


 文系組女子はその後何か言って帰って行った。


 秋世は教室の出入口へ振り返り

「見るなよ。」

と言って笑った。




 落ち着いた頃に秋世から話を聞いた。


「恋愛感情が本当に薄っぺらいなんて思ってはいない。

 でも昨日まであの男子を好きな女子が明日には違う男子を好きだと言っているのを腐るほど見てきた。

 宮本はもてるから女子が私のところへ大勢来る。

 で、そういう女子も同じなんだよ。

 そんな程度のものに気を使って友情が壊されるなんて吐き気がしてね。」


と話してくれた。


 普段はこれ程怒らずに話すらしいが、今日はむしの居どころが悪く怒ってしまったとらしい。


 暫くすると

「うわ。八つ当たりだ。私最低だ。」

と落ち込んでから

「悪い事したからちゃんと謝ってくる。」

と言って文系クラスへ走って行った。




 つまり今回の文系女子のアクションも嫉妬から来るものなのだろう。

 そうではないというのであれば、それこそ秋世の言う通り秋世の元へは来ない。

 自分は自分として頑張るはずだ。


 では嫉妬を抑えられるかと考えると、難しい事なのだろうと思った。

 人を好きになるという事とは抱き合わせの物なのだろう。


 私はたまたま女子の皆の視野にいなかった人を好きになったため知らずに済んでいた。

 だが現在は状況がかなり違う。


 私も誰かに嫉妬する日が来るのだろうと思うと少し怖くなった。


 嫉妬は悪なのだろうか。


 悪ではないかもしれないが見栄えが良いものでもない。


 嫉妬から生まれる何かがあるかもしれない。


 でもきっと嫉妬は苦しいだろう。




 幸に嫉妬をした事があるか聞いてみると

「あるある。

 部屋にあるHな写真本とかビデオとか見つけて、わざと見つかりそうにない所に移したりする。」

と言っていた。


 なんとなくほっとした後、しっかり者で優しく他人思いな幸がそういう事をするとは驚いた。

 そして、そういう物も嫉妬の対象となる事にも驚いた。




 もしかしたら他の付き合っている皆もこんな思いを抱えているのだろうか。


 おめでたい娘はようやく嫉妬の奥深さを垣間見た気がした。






 後に真田君から教えてもらったのだが、宮本は中学の頃から本当に人気があって、真田君もこの光景を何度か見た事があるらしい。


 秋世は昔から女子とも男子とも分け隔てなく友達だったようだ。

 特に宮本と秋世は幼なじみなのでとりわけ仲が良かった。

 宮本は人気があったのでそんな秋世を妬み、女子からよく嫌がらせをされていたらしい。

 宮本は自分の存在が一枚かんでいる事を知り心配し、幼なじみの秋世を影で支えた。

 秋世はそれに応えるようにそれらを笑顔で乗り越えて、今も宮本と笑っているというのだ。


 私は秋世と宮本の仲の良さに納得した後、憤慨した。


 私の中学にも同じような事があったのだ。

 標的とされた女子と私は何事もなく友達だったのだが嫌がらせは続き、中学卒業の頃に彼女は元気が無くなってしまっていた。

 女子高へ行った彼女と先日話した時に

「女子ばかりだと楽なんだ。」

と元気に笑っていて安心した事を思い出した。




 ようやく思考力が弱い私も、異性が交じる場所はかなりの確率で嫉妬が発生する事に気付いた。


 真田君は

「女の嫉妬はやべえからな。」

と言っていたが、私は全然笑えなかった。






 もうすぐ三年生だがあまり気分は晴れやかではない。

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