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高校2年生 秋

 ファーストキスを経験したが手を繋いだ事がない私達は、「童顔カップル」から「爽やかカップル」へと昇格した。


 一度秋世に

「あんたたちもちゅーとかするの?」

と聞かれた際、何の気なしに

「するよ。」

と答えた所、秋世が悲鳴を上げて

「聞かなきゃよかった!爽やかなのに!なんかショックだ!」

と首をふって叫んで以来、そのようなネタの会話では誤魔化しながら過ごしてきた。


 さらに部活動後しか二人でいる姿を見られなければ、当然手を繋いだ姿も見られた事がないので、明らかに「オクテ」の認識をされているはずで、それ故の「爽やかカップル」認定なのだろう。






 この頃から私は心配事が増える。

 真田君をかっこいいと言う女子が出現したのだ。


 確かに彼はかっこいい。

 私は一年生の頃に気付いてずっとそう思ってきたのだ。

 そして彼が褒められるのは自分の事のように嬉しい。


 そこまでは良いのだが、恋愛感情を持つ女子が現れたらと思うと落ち着かなかったのだ。

 もしそのような女子が現れたとしても、私には戦う美貌も中身も頭脳も無い。

 だから今もこうして努力と苦労をしているというのに。




 さらに私達は学校ではあまり接触をしなかった。

 部活動を頑張っている彼を束縛したくなく、学校では私も友人と楽しむべきだと考えていたのだ。


 だから文系組へ行った大谷君はたまに会うと

「まだ付き合ってんの!?」

というような声のかけ方をしてくる。


 こうして自分に課した独占欲に対する試練のために、真田君の人気が高まるにつれ私はますます不安になるのである。






 真田君は怪我が治るまでの間は部活動を見学する予定だったのだが、次第に練習に参加できるようになった。


 私も私なりに頑張っていたのだが、バレーボールはともかく、女子力向上作戦の効果の方は相変わらず分からないまま悶々と過ごしていた。



 しかし、次第に部活動のテスト休み期間に真田君から何度か誘ってもらえるようになった。

 幸や幸の彼氏などの友人グループや、真田君と同じ中学の友人グループと放課後に出かける事があった。


 私はその時に宮本を知った。

 秋世と幼なじみの宮本も、真田君と同じ中学出身なのだ。

 二人は凄く仲がよく、付き合っているのではないかという噂がたつのも頷けた。


 仲間内で遊ぶ時、真田君はいつも私の隣にいてくれた。

 笑っている顔もたくさん見る事ができた。


 こういう時間が私の不安を和らげてくれた。






 雪が降り始めたある日ちょっとした事件がおきた。


 サッカー部が室内競技部に宣戦布告を叩きつけたのだ。


内容は

「もしサッカー部が勝ったら、その部の現在の活動場所を週の半分サッカー部の練習場として渡す」

というものだった。

 勝敗は勝負を受ける部活動の競技でつけるらしい。


 確かに外競技部は冬の間室内で十分に動けるスペースが無いため、凄くストレスのかかる練習しかできないのだ。


 どうやらサッカー部は本気だった。

 いくら運動神経が良い集団とはいえ男子部だと歯がたたないと察し、女子部にしかけてきたのだ。


 ちなみにサッカー部には監督から箝口令が出ているようで、真田君に聞いても教えてもらえない。

 監督が提案した可能性が高い。

 という事は負けたら冗談では済まさず、本当に体育館の使用権利を主張するのではないだろうか。


 さらに彼らは奇襲してくるのだ。


 既に一戦終えて無事勝利した、クラスのバスケットボール女子部の主将から情報が得られた。

 どうやら一年生が早めに来て準備をしている所に突然やってきて、二年生を待たずに試合を始めたようだ。

 バスケ女子部は準備も集合も早いので、ゲーム開始直後に駆けつけた二年生女子が直ぐに交代して応戦したらしい。


 彼女達もまた全国を目指しているから負けられないのだ。

「身長が高いと意外と辛かった。」

と言っていた。




 後に卓球女子部へも行ったそうだが、無事卓球女子部も勝利した。



 ある日幸と

「うちにもそろそろ来るんじゃない。」

と話しながら廊下を歩いて部活動へ向かっていると、まるで聞いていたかのようにバレー女子部の一年生が凄い剣幕で二年生の廊下に走りこんできた。


「サッカー部が体育館をかけて勝負しにきました!」


 その一年生は他のメンバーの元へ走らせ、幸と私は体育館へ走った。




 体育館に着くとコートにいる一年生が半分泣きそうな顔でこちらを見て交代を申し出た。


 相手コートにはサッカー部のレギュラー陣。

 その中には真田君の姿もあった。


 まだ時間が早かったためバレー女子部側は一年生が6人。

 スコアボードは1セット目の両チーム0点。

 始まる前だったようだ。


 自陣コートの一年生には高校からバレーボールを始めた子もいた。

 ろくにチームプレーも実戦も経験した事が無いのに、まさかこのような形で体育館をかけたコートに立つなど泣きたくもなるだろう。


 得点ルールは旧ルールでサーブ権有りの15点先取の3セット。


 これはいけないと、幸と私は直ぐにメンバー交代をして自陣コートに入った。

 しかし他のレギュラーや二年生はまだ来ない。


 メンバー的に心元なく、運動神経のかたまり達とどう戦うか戸惑った。


 しかも相手というか敵チームには真田君がいて、何だか複雑な気分だ。




 考えていると幸から

「サーブ育実から。

 いつもの通りに。」

とボールを手渡された。




 ここでようやく、負けたら週の半分も体育館を奪われるとなると、例え相手に真田君がいるとしてもこの状態では手を抜いてはいられない事に気付いた。


 私は幸に頷き返した。






 私のサーブへの取り組みがなんとここで火を吹いた。


 私のサービスエースで14点連取である。


 ボールが繋がるようではこちらのチームのミスによって得点を与えてしまう可能性があったため、サーブレシーブの段階で決める必要があると考えての攻撃だった。

 そして幸が私に託したボールと言葉にもその意図がこめられていたのだ。


 私は最初にドライブをかけながら相手側のセンターのスペースを狙った。

 スペースが埋まると横と縦の回転を打ちわけしてサイドを狙った。

 それを繰り返す事での14点連取である。


 当時の私はサーブの成功率に自信があった。

 30本位なら連続成功する事を前提として精度とパワーを上げる練習をしてきたのだ。


 運動神経のかたまり男子とはいえ、突発チームにはこれで十分だった。




 するとサッカー部から

「半端ねえ。」

「手加減ねえ。」

という声が聞こえてきた。


 情けない事に私はそれに動揺してしまった。

 何しろ真田君のチームメイトの声なのだ。


「このままだと真田君が槍玉にあがってしまう可能性があるのかもしれない」

と弱気になってしまった。


 しかし幸が直ぐに察して

「もう1セットあるから。」

と声をかけてくれた事でなんとか持ち直した。


 そうだ。

 まだ1セット目なのだし、とりあえずここは悩まなくて良い。




 そして私はこのセットを終わらせるために、渾身の力でドライブを目一杯かけてサーブを打った。

 あまり力むと狙いが外れるのでいつも余力を残すのだが、この時は先の動揺の名残があったのだろう。




 私の渾身のサーブは真田君を直撃し、私の15点連取のサービスエースでこのセットは終了した。




 その頃にはバレー女子部も主力が揃った。


 2セット目は主力でチームを組んだのだが、もう大丈夫だろうという事と3セット目まで続く場合はコートに戻る事を条件に、私は一度チームから外れさせてもらった。




 私はその体育館にいる事が都合悪く感じ

「用事済ませてくるー。」

と言い残し、体育館を後にした。




 結果はバレー女子部の2セット連取の勝利で終わった。




 大好きな彼氏が私の渾身のサーブを体で受けて痛そうにしていた姿が繰り返し脳裏に蘇り、何度もため息がでた。





 二年生の冬の始まりだった。

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