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高校2年生 夏休み

 私達の夏の大会は県大会のベスト16で終わってしまった。


 その場で次の主将が幸に決まった。

 幸は芯が強く思いやりがあり練習熱心で、ポジション的にも一番皆を見渡せるので最適だと思った。


 私は泣いている先輩達に肩をつかまれ

「あんたはエースなんだから幸をサポートして頑張りなさい。」

と言われ、今までの部活動を走馬灯のように思い出しながら

「頑張ります。」

と言ってから少し涙が出た。


 私は童顔な見た目に反してあまり泣かない娘だ。


 姉と違ってよくモテる弟の卓が

「女は泣けば良いと思ってすぐ泣くからうざい。」

と言っていた事に共感して、女ながらに女の涙を信じられない人間で、だから泣きたくてもぐっと我慢をするのだ。




 しかし今回ばかりは我慢出来なかった。




 そして私は自分が目指すべき姿を考えた。

 私はアタッカーとしては身長が低いのだが、ジャンプ力にものをいわせて頑張ってきた。

 ところが最近膝に違和感を感じはじめていたのだ。

 膝をいたわりながら勝率を上げる練習について考え、サーブの精度とパワーを上げることに重点をおく事にした。

 成功率と狙いの精度を限りなく高くし、ドライブのかけかたや、無回転や曲げ方などを見直し、様々なサーブを打ちわけられるようにしながらパワーを上げていくのだ。


 当時の高校女子のバレーボールは地方大会の3回戦あたりまでは、サーブさえ良ければ勝つと言われるほどサーブが重要だったのだ。


 この練習は正解だったのだが、後にある意味で少し問題にもなる。




 夏休み中はひたすらバレーボールを頑張っていた。






 二年生の記憶に学校行事がほとんど無いのは、そこそこ進学校でそこそこ部活動が盛んな学校という状態から発生した弊害みたいなもののせいだ。

 この年はどの部活動も、春と夏にある大きな大会で県大会まで進むと体育祭と文化祭に参加できないという残念なスケジュールだったのだ。

 恐らくこの年の文化祭は半分くらいの生徒がいなかったのではないだろうか。


 更に修学旅行が無い学校となると、私の高校二年生の思い出はバレーボールと友人と彼氏しかないのだ。


 これは私達が三年生の時に少し改善されるのだが、この年の三年生は本当に気の毒に思った。






 この時期に私は時間がある時に真田君の大会を見に行った事がある。


 以前は気付かなかったのだが、小さくても大会となると他校の女子もかなり見に来ていた。

 それがまた大変で

「あれ〇〇高校の女子じゃん。

 △△目当てぽくない。」

中には直接

「□□君見にきてるんでしょ。」

と聞かれたり因縁をつけられるなど散々だったのだ。


 私が一人だったから言いやすかったのもあるのだろうか、妙な言いがかりや指をさされる事に耐えられず、それ以来私は見に行くのを止めてしまった。




 自分も女子なのだが、女子とは本当に不思議な生き物だと思った。


 思考力が弱い私は、人の心の裏にあるものを察するのが苦手である。

 だから女子のゴタゴタには昔からはまらなかった。

 時には私が何も言わない事を利用して良いカモにされて嫌がらせをされた事もあった。

 それでも悪口を言うよりはずっと胸を張っていられたし、友人もいたので辛い事もあったが後悔はしていない。




 ただ今も考える時がある。

 そういうのが分からない自分は女子として欠陥があるのだろうかと。

 それが分かれば違った道があったのではないかと。






 もうすぐ夏休みが終わる頃、真田君から電話で

「今日の試合で失敗して怪我しちゃってさ。」

と報告があった。


 どうやら鎖骨を骨折してしまったようで病院へ行きコルセットで固定してもらったらしい。

 私は驚いて凄く心配した。

 思考力無し女子は骨折と聞いただけで重大な事件と受けとって明らかにおかしな様子でうろたえた。

 真田君は笑っていたが、部活動には参加出来ないので残念そうだった。


 サッカー部も先日三年生を見送って、新体制での決意を固めこれからのところだったのだろう。




 私は次の日、午前の部活動が終わった後お見舞いに行く事にした。


 真田君の家に入るのは初めてだった。


 チャイムを鳴らすと彼が迎えに出て来てくれた。

 家の人は仕事に出ているらしい。

 妹もいると聞いていたが外出中だった。


 私は真田君の部屋へ通された。


 真田君は肩を通すコルセットをして、骨折した方の腕をつっていた。

 とても痛そうに見えた。


 とりあえず顔を見られた事でひと安心した。


 真田君は学校が始まったら、部活動も見学で参加すると話していた。

 その後は怪我をした時の話、監督やみんなの話、病院での話を聞いた。

 この時の真田君はクラスメイトと話す時の笑顔だった。


 私は怪我の事を忘れてはいないが、その笑顔が見られたのがとても嬉しかった。

 しかしお見舞いに行ったはずが、顔を見て会話ができた事で舞い上がってしまい、何しに来たんだという話である。


 さらに嬉しい事に、真田君の中学の卒業アルバムを見せてもらえた。


 真田君や秋世やテニス部の女子や見覚えのある顔に喜んだ。




 それにしても真田君は随分大人っぽくなったと思った。

 卒業アルバムの彼はクラスの中でも幼く可愛らしかった。

 それが今は整った部分はそのままで、大分精悍な男らしい男子だ。

 身長も病院で測ったら175センチを超えていたと話していた。



 私は何度も卒業アルバムと彼を見比べて

「へええ。」

と感心していた。



 彼は

「なんだよ。」

と照れくさそうにしていて、それが楽しくてさらに何度も続けていると軽くキスをされ、私は固まった。




 真田君は怪我をしたし部活動にも参加できずに気の毒だったが、私達は多分この時期が一番会話をした時期だった。




 私は夏休みが終わるまで毎日お見舞いと称して会いに行った。


 少しクラスメイトに見せる笑顔が見られるようになって嬉しいと思った。






 この地域は夏休みが終わるとあっと言う間に寒くなる。

 あと一週間もしたら秋がくる。

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