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幽霊

ゆっちゃんのお墓がある墓地は商店街を抜けた住宅街の近くにある。何故かはゆっちゃんの両親が近くを希望した為である。そのお陰か両親は毎日のようにお墓参りに来ているらしい。丸井曰く両親はゆっちゃんの事を忘れられず異常な程らしい。


「ほら、ここよ」


丸井が立ち止まる。どうやら考え事をしていた間に着いたらしい。住宅街の近くにあるという事だけあって荒れ放題かと思ったが現実は違かった。墓は寺の中にあり、とても綺麗なものだ。入口で受付をして早速 ゆっちゃんの墓へ向かう。


「へぇ……結構 あるんだな」


墓地という事だから予想はしていたが予想を越える墓の多さだ。線香の匂いがそこら中からする。こんなんでゆっちゃんの墓がどこか分かるのか?


「ちゃんと着いて来なさいよ。迷子になっても助けてやんないんだから」


おっと、忘れてた。瞬間記憶能力者がいたんだ。これで迷わず行けるな。それから丸井の背中を追い掛けて左右くねくね曲がっていい加減、気分が悪くなった時 不意に丸井が足を止めた。


「ほら、ここよ」


「あ……」


目の前には『佐伯 ユキ』と書かれた墓がある。そしてその周りにはゆっちゃんが好きな白い花が墓の周りを囲むように咲いている。枯れてないのはきっと両親が毎日水やりをしているからだろう。そしてこの花もゆっちゃんが寂しくないように植えたんだろうと思う。…あれ?そう言えばこの光景 どこかで見たような気がする。



━━━━━…ドクン



「花……買った意味なかったなぁ。 安藤?ぼーっとしてどうしたの?」


「え?あ、いや。…それよりその花はお墓の前に置いとけば良いんじゃないか?ほら ゆっちゃんだって喜ぶだろうし」


そうだ思い出した。これは夢で見た光景と同じだ…丸井は居なかったけど夢の中では一人だった。そして夢と同じなら ゆっちゃんの幽霊が。



━━━━…ドクン



「…うん、そうだね。なんか花だけじゃ物足りないよね 私ジュース買って来る!」


そう言うと止める暇もなく走って行ってしまった。あいつ、足速かったもんな。だが今はそれ所じゃない…一人になってしまった。


「………ゆっちゃん…俺は」


夢と同じく墓石に触れてみる。やはりひんやりと冷たい。このままいけばゆっちゃんの幽霊に出会ってしまう。あの恐ろしい形相の幽霊に。



━━━━━…ドクン







『…ひーくん』









生々しいその声に心臓が止まりそうな程ビックリした。まさか夢と同じ展開になるとは夢にも思わなかったからだ。だがここで振り返ってはまさにあの夢と同じになってしまう。







『ひーくん?』







あれ……なんか夢と少し違うぞ?優しい声だ。昔の声と一緒だけど何か違う…上手く説明出来ないが怖い感じがしない。さっきから暑くて暑くて汗が止まらないな。







『ひーくん!』







今度は少し怒ったような声だ。ますます昔に戻ったような懐かしさを感じる。もう聞けなかったゆっちゃんの声。


『もぅ!さっきから無視してっ 無視するのはいけない事なんだよ』


後ろから力強く腕を掴まれた。こんな事、夢ではなかった光景だ。今振り返ったら昔のゆっちゃんに会えるかもしれない。


『むー。まだ無視する!悪い子には天罰です。メーーッ!』


そう言って俺の正面に来たあれ(・・・)は頭をポンポンとする。正直言って全く痛くはなかった。それは昔も一緒だった。今、目の前にいるのは正真正銘の“ゆっちゃん”だった。昔のゆっちゃんとは少し違う…信じられないが成長していた。俺はまだ頭の上に乗っかってる細い腕を掴む。


「…ゆっちゃん」


『……あ、やっぱりひーくんだ! でも顔色悪いよ?大丈夫?』


あぁ。目の前にいるのはゆっちゃんだ。少し成長したけど変わってない。懐かしい…昔に戻ったみたいだ。


「お待たせー! え、安藤!?」


次の瞬間、俺は倒れていた。心配して駆け寄る丸井の声と体を揺らして何度も名前を呼ぶゆっちゃん。


「ちょっ 安藤! どうしよう」


『ひーくん? しっかりしてひーくん!』


どうやら丸井にはゆっちゃんが見えてないらしい。そんな事を考えながら俺は意識を手放した。


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