<私の一番大切な人はお食事に誘ってみる>
「でさぁ」
もぐもぐしながらアイリーンはつぶやきます。
「明日の遊園地のことなんだけどね?1泊 2日とかどう?」
「いいよー」
ルーファスがしれっとした顔で賛成。
「まぁ日帰りじゃなきゃ無理って人たちがいたら、その人たちで帰ってもらってって感じでいいよね?」
可決。
「あ、ラウリ、今日もちゃんと授業でなさいよー」
ラウリがやってきました。
「んー、午後はなんとか頑張るよー」
にこやかに答える彼は、弁当を取り出して、割り箸を割ります。
「あ、失敗」
どうやらうまく割れなかったよう。
「じゃぁ明日は校門前に9:00集合で。時間厳守!遅れたらその時点で負けだからね!あ、入場料1000円と、ホテル代は学割で4000円になってるから、そこんとこ見積もっといてね」
どんどん仕切っていくアイリーン。
「ごめんアイリーン!!遅れた!」
レムが、遅れて到着。
「こーんな感じで遅れても待ってやらんからなー」
アイリーンはレムをにやつきながら見据えます。
「明日の話か?」
「うん。もう一通り説明しちゃったから後は適当にみんなから聞いといて」
「おけー」
ふと、風がふいて、髪の毛がなびきます。
風と共に、一人の男の子がやってきます。
「おはよ」
「あ…きたね」
ブラウンの髪を揺らして、物静かに芝生に 座り込み、
「………」
無言になる彼は、マラット・シュトルーペ。
「ごめん、調理実習だった」
それでけつぶやくと、また視線を遠くに戻します。
「んや、いいよー!」
アイリーンが快く受け入れ、そして
さぁぁぁ………
風が靡いて、アイリーンの髪がゆらゆら…
「あ…」
マラットが、アイリーンの髪にふれ、髪についた草を取ります。
「…ついてた」
「おお!草が張り付いてたか、ありがとう~マラット!」
「…うん」
ふいっとまた視線を遠くして、なにもなかったかのように静寂。
15人集まっているのに、みんな黙々と、粛々と空を見上げたり、昼ご飯を食べたり。
…いや、結構な人数の男子たちは、アイリーンを直視しています。
当の本人はぼーっとしてて…
「さてと」
ステファンが変な空気を正すかのように、切り出します。
「ボクもう食べ終わったから先に戻るね! 」
「あぁ、んじゃねーっ」
アイリーンはにっこりして手を振ります。「おいひーっ」
弁当を食べながら、アイリーンは呟きます。
もうすぐチャイムがなります。みんなばいばーいと言って散り散りに去っていきます。
マラットも「じゃ」と言い、芝生を後にしました。と、
「アイリーン、今日晩ご飯一緒に食べない?」
エルナンドがぼそっとアイリーンの耳元でささやきます。
「へ?」
「…レストランのお食事券が二枚あって… 男女限定みたいらしくて、その…どう?」
「男女限定かぁ、いいよ!おいしいものが食べられればおーけー!しかも無料は助かる!」
こうして、夜7時にラウンジで待ち合わせすることになりました。
「それじゃ、7時に」
「はーい★」
教室に入って、席につくと、肩をたたかれました。
「ヘンゼル?」
「アイリーン、今日の夜、なんか約束事したでしょ。しかも男と」
「エルのこと?」
きょとんとアイリーンは首を傾げると、
「はぁ」とヘンゼルはため息をつきます。
「あんまり夜に男といないほうがいいよ? まぁオレの知ったこっちゃ無い事だけど」
「でも、男女限定のお食事券だしー…食べたいしー…」
「おま、色気より食い気か…」
「うん、そーだよー!」
苦笑いをするヘンゼル。
「まぁとにかく、気をつけて」
「なにによーwまぁ、道中気をつけるけど」
「うん、アイリーンに何かあったら心配だ し」
アイリーンを見つめるヘンゼルの顔は少しばかりか悲しげです。
「ありがと、ヘンゼル」
「どーいたしまして」
会話が終わると教科書に目を戻すヘンゼル。
(にしても、いったいなにに気をつけろと…
?)