赤信号、和菓子、眼科
「目が赤いからお医者に行かないと」
アレルギー体質の息子は、ちょっと油断すると、カビやハウスダストですぐに目が赤くなる。
しかし、息子は眼科が嫌いだ。というより医者が嫌いだ。
医者が好きだという4歳児がいたら、それはそれでどうだろうかとも思うが。
そして、息子が何気なく言った一言に、私はうまく返すことができなかった。
「じゃあ、なんでしんごうはおめめまっかなのにおいしゃいかなくてもいいの?」
信号の目、か。
子供らしくて素晴らしい感性だ!とほめてあげたいところだけれども…。今の私には純粋な彼の問いは難題というほかなかった。
「それは、ね。すぐに目の色が変わるから。黄色に青色に、ね。だから大丈夫なのよ」
「じゃあ、ぼくのめもきいろくなるもん」
そういうと彼は、おもちゃについていた黄色いセロファンで目を覆い。勝ち誇るように言った。
ああ、これはらちがあかないパターンだ…。仕方ない!
「わかった。そうだね。それじゃあ、帰りにわらび餅買ってあげる。ね?だからお医者いこう?」
ここで考える様子を見せた彼は、しぶい顔をしたあと、うなずいた。
彼をわらびもちで買収できるのはいつまでだろうか?
和菓子が好きな彼。彼が医者に行くことの必要さを感じて、いうことを聞いてくれるようになる前に、彼が高級和菓子に目覚めてしまわないように、私は心の中でひそかに祈るのだった。




