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双子、将棋、ストリート



 わたしには双子の兄弟がいる。弟にはわたしと同じ名前がついており、お互いがお互いに自分の方が偉くて兄だと言い張っているのだが、決着がついたことはない。


 このたび初めて戦争というものに馳せ参じることになったが、わたしは西軍、弟は東軍と敵として闘うことに相成った。


 戦いの当日。雑兵どもを一気に前線へと送り、戦いは始まった。

 わたしも一番槍として参戦し、敵の雑兵を蹴散らして捕虜にしていったが、一つとなりの通りでは、弟が我々の仲間を次々と生け捕りにしていった。

 調子に乗った弟は、我が国の陣の中に侵入し、何を思ったのか大声でこう名乗った。


「我はこれより『龍』と名乗る!!」


 我々には飛車という立派な名前がついていた。

 その名前を捨て、突然龍と名乗るなど、琵琶法師が、「すとりーとみゅーじしゃん」と名乗ることと同じ程度に馬鹿らしいを思った。


 しかし、弟のことをバカにして、『龍』などと名乗るなど愚か、と思ったのもつかの間、わたしは大将からの命令により、弟と同じく敵陣に単騎で切り込むことになった、そして、敵陣に切りこんだ瞬間に、気が変わった。『龍』…いい名ではないか。


「我もこれより、『龍』と名乗る!!」


 言われてみれば、「すとりーとみゅーじしゃん」はかっこいい音の響きだ。なんとなくモテそうである。それなのにさっきはバカにして面目ないことだ。

  

「まねすんなやこらぁぁぁぁぁぁっっっ!!」


 味方の陣地に切りこんでいた弟の絶叫が聞こえてきたので、わたしは返した。


「まねじゃねぇっ!!今日から俺が本物の『龍』だっ!!」


 お互いが敵陣の中でわめきながら暴れた。




 その後、戦争が終わり、わたしたち兄弟はともに国に帰った。

 戦争の結果、わたしが味方をした西軍が勝ったのか、弟の東軍が勝ったのかは、よくわからない。

 わからないが、戦争が終わった途端、またわたしたちの名前は二人とも飛車に戻り、区別がつかなくなってケンカになってしまった。


 区別がつかないなら、また戦争で勝負をつけるしかあるまい。

 次に戦場であいまみえるときは、わたしが東軍か、弟が東軍か…?













双子、将棋、ストリート

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