占わなかった水曜日
私は「本日休業」の札を扉に掛けた。理由はない。
ただ今日は占いをしたくなかった。
公園のベンチに座る。私の左手にはアイスコーヒーを持っている。
今日は凄くいい天気。平日の昼間私と同じような人がポツポツ公園内にいる。
隣に座ってきた老人が鳩に餌をやりながら私に話しかけてきた。
「気持ちがいい日ですね」
私は急に話しかけられ驚きがあったが「そうですね。」と一言交わした。
スマホには3件の予約メッセージが届いていた。
今日は誰にも返事をしたくなかった。
老人が続けて言った。
「わしはね、天気がいい日いつも来るんだ。何もしないためにね。」
「何もしないためにですか!?」
「そうそう。何もしないためになんだよ。
何もしない日があるから何かをする日がとても輝くんだよ」
私は笑った。占い師の私よりも占い師みたいなことを言う。
明日になったらまた誰かを占う。
そして「大丈夫」と誰かの背中を押しているだろう。
老人が立ち上がった。
「明日も晴れるといいなあ。また明日ね。」
「あっ、はい…。また明日」
ふと空を見上げると雲ひとつない快晴だ。
占いをしない今日が明日をまた照らしてくれる。
老人に言われた言葉を胸に噛み締めながら私も立ち上がった。
何もしない今日も大切な時間。
今日は、何もしなくてよかった。




