(27)転生少女は、緊急信号に応える
緊急連絡信号を聞いた私は、すぐに森の奥へと向かった。
そこで目にしたのは、巨大な影――黒光りする甲殻に覆われた大型の昆虫型魔物だった。背丈は人の倍以上。昆虫型魔物は総じて危険度が高いと聞いている。しかも、あの大きさ……明らかに強力な個体だ。
そう思って参戦したのだが――案外、あっさり決着がついてしまった。
ふむ。なんだ、意外とやれるじゃん私。
つい調子に乗りそうになる心をぐっと抑えつつ、襲われていた小柄な女生徒に手を差し伸べる。
……小柄といっても、私と比べればだいぶ大きいのだけれど。確か、ルーナさんという名前だったはずだ。
彼女の瞳からは、単なる感謝以上の熱量を感じる。
こんなふうに、真っ直ぐな尊敬の眼差しを向けられるのは初めてだ。
まあ、いいか。
「ありがとうございます……!」
ルーナさんは感激したように声を震わせ、目元を潤ませている。
そこまで感謝されると、さすがに照れくさいなぁ。
ちょうどその時、フィオナお姉ちゃんと他の上級生たちが駆けつけてきた。
「クロエ! 無事だったのね!」
フィオナお姉ちゃんが駆け寄ってきて、そのままぎゅっと抱きついてくる。
心配してくれていたんだなぁ。ありがたいけれど、恥ずかしさも相当だ。
でも嬉しかったので、特に抵抗せずそのまま受け入れることにした。
「これ、クロエちゃんが倒した魔物の魔石かい?」
上級生の一人が、私の手にある魔石を指さして尋ねてくる。
野球ボールほどの大きさのそれは、ゴブリンの魔石――ピンポン玉サイズ――と比べると、かなり大きい。
あの規模の魔物なら、これくらいの魔石になるのだろう。
「このサイズ……すごいわね」
上級生たちから感嘆の声が上がる。
フィオナお姉ちゃんは感動した様子で、私の頭を優しく撫でてくれた。
「さすがクロエですわ!」
まるで自分のことのように喜んでくれるフィオナお姉ちゃんに、少しだけ照れ笑いを返す。
訓練終了を告げる鐘が鳴り響き、私たちは森を後にした。
訓練場へ戻る途中、ルーナさんが私に話しかけてくる。
「クロエさん……あなたは、本当に素晴らしい魔法使いですね。
私……あなたを見習って、もっと頑張ります!」
やけに真剣な表情で言い切られて、思わず言葉に詰まる。
そこまで崇められると、正直プレッシャーなんだけど……。
彼女は土魔法使いのはずだ。
でも、あの時使っていた――闇属性のような力。あれは一体なんだったんだろう?
とはいえ、本人は気づいていない様子だったし、今ここで指摘する必要もないだろう。
下手に言って、余計な誤解を招くのも嫌だしね。
「ありがとう……でも、みんな頑張ってるよ。
だからさ、お互いに頑張ろう?」
曖昧な笑顔でそう返す。
納得してくれたかどうかは分からないけれど、ルーナさんはキラキラした瞳で、何度も大きく頷いていた。




