(23)転生少女は、実戦訓練に参加します
実戦訓練当日がやってきた。
朝からどんよりとした曇り空だけれど、気分はとても晴れやかだ。ついに、魔法で魔物と戦える日が来たのだから!
……昨日の夜、少し緊張してなかなか眠れなかったのは内緒だ。
集合場所は学院近くの森。
通称「萌芽の杜」と呼ばれる区域で、芽吹き(ブライニス)クラスが訓練に使う定番スポットらしい。初心者向けの弱い魔物しか出現しないとのことだが――それでも実戦は実戦だ。
緊張する〜!
森の入口には、枝垂れ(カデュエル)クラスの上級生たちが待機していた。救援部隊として控えてくれているそうで、万が一のときはすぐに助けに入ってくれるらしい。
それを聞いて、少しだけ肩の力が抜けた。
その中に、フィオナお姉ちゃんの姿も見える。
「クロエ! 頑張ってね!」
そう声援を送られて、思わず背筋が伸びた。
元気百倍だ! 相変わらず綺麗だなぁ……。
「皆さん、揃いましたね」
メリッサ先生が、整列した私たちA組の生徒を見渡しながら口を開く。
参加者は18名。A組20人中18人が参加しているらしい。これはかなり多い方だそうだ。
欠席した2人は、今回は実力不足と判断されたとのこと。本来なら、もっと参加者が少なくなるのが普通らしい。
「今回の訓練は個人行動です。それぞれ、3体の魔物を討伐してください」
「……えっ!?」
思わず声が漏れてしまった。
3体かぁ……。ちょっと怖い。でも、初めての実戦訓練としては妥当なのかな?
周囲もざわついている。
ちらりと横を見ると、アリサさんは勇ましい表情をしていた。辺境では魔物討伐が日常茶飯事だと聞くし、もしかしたら彼女はすでに経験済みなのかもしれない。
「怪我をしたり、危険を感じた場合は、即座に緊急連絡手段を使用してください。これは必ず全員携帯すること」
配られたのは、小さな金属製の筒。
発煙筒のような形状で、ピンを引くと強烈な閃光と音を伴って、ピンク色の煙を噴射するらしい。どうやら魔道具の一種のようだ。
へぇ……こんな便利なものがあるんだ。
そう思いながら眺めていると、メリッサ先生がパンッ!と手を叩いた。
「皆さんの実力であれば、十分達成可能な課題です。ただし、無理は厳禁。安全第一で臨んでください」
「はいっ!」
元気な返事が森に響く。
いよいよ出撃だ。
ワクワクする気持ちと、ほんの少しの不安を胸に、私も森の中へ入ろうとした――その時。
「クロエさん」
呼び止められた。
「あなたには、特別課題があります」
「……え?」
「他の生徒が3体討伐なのに対して、あなたには10体倒してもらいます」
「じゅ……10体!?」
驚きすぎて、声が裏返ってしまった。
え、待って。私だけ10体!? それ多すぎじゃない!?
「あの……10体って、さすがに多くないですか!?」
「大丈夫です。あなたなら余裕です」
メリッサ先生は、にっこりと微笑む。
おふぅ……。
余裕って……本当に? 田舎育ちだけど、魔物討伐なんてしたことないんだけど……。
すると先生は、さらに追い打ちをかけてきた。
「それと、強い魔法は使わないでください。先生はそちらの方が心配です」
「え?」
……え?
手加減までしろってこと?
「森の木々を焼き払うような真似だけは、絶対にしないでくださいね。くれぐれも、くれぐれも!」
ああ……。
炎魔法で壁に大穴を開けてしまった、あの時の記憶が蘇る。ほんと、申し訳ありません……。
「大丈夫です。クロエさんなら、手加減してちょうどいいくらいですよ」
……マジですか!?
むう。こう言われると、断れない。
これは期待されている、ということだろう!
いいだろう。
見せてやろうじゃないか――エンシェントの実力を!
もちろん、心の中だけで。
「……わかりました。頑張ります」




