(15)転生少女は、魔法学院に入学する
「ではこれより王立魔法学院入学式を始めます」
司会進行役の教師が朗々と宣言すると場内から大きな拍手が起こった。その中を中央に立つ初老の女性が一歩前に出る。銀色のローブに身を包んだ威厳ある雰囲気。試験の時に未来の私と会ったことがあると言っていたあの人だ。
「新入生諸君。本日をもって魔法学院の仲間入りだ。私は学院長のグリンダだ。短く挨拶をしたい」
落ち着いた声だがその一言一言には重みがあった。講堂全体に響き渡る声で彼女は続ける。
「魔法は力であり責任だ。諸君らはこれからこの学院で過ごすことになる。その間に培うものは君たちの人生を大きく左右するだろう。私から諸君に望むことはただ一つ。恐れずに挑戦し続けなさい」
そこでグリンダ先生は少し間をおいた。新入生全員の顔を見渡し確信を持った表情になる。
「魔法学院には古来より掟がある。『魔法は秘匿されし力なり。使い方を誤れば己を滅ぼす刃となりかねぬ。ゆえに学びし者は常に己の力と向き合うべし』と。諸君らが賢明であることを祈る」
校長の挨拶が終わると再び盛大な拍手が沸き起こった。
「続きまして、新入生代表エイデン・フィンレイによる宣誓」
呼ばれた少年が席を立ち演台へ向かう。新入生代表ということは、あの人が学年首席なのだろうか。試験の時には特に目立つ印象はなかったから、総合値が高かったということだろう。
銀髪を後ろで一本に束ねた眼鏡の少年だ。細身の体つきは明らかに痩せており、その骨ばった輪郭が印象的だ。顔立ちは整っているが少し神経質そうで眉間に僅かな皺が寄っている。彼は丁寧なお辞儀の後、静かに口を開く。
「今日、この日を迎えられたことを光栄に思います。我ら新入生一同、魔法の道を精進し、学院の名誉を傷つけぬよう全力を尽くす所存です。どうかご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします」
簡潔ながらも芯のある宣誓だった。その後、教員紹介や注意事項の説明が行われ入学式は恙無く進んだ。
最後に新入生全員が中央に呼ばれ芽吹き(ブライニス)クラスのローブを受け取ることになった。すでに着用しているローブとは異なる正式なものだ。
「今年度の新入生は67名。ブライニスクラスに配属されます。皆さんとともに新たな一歩を踏み出すことを楽しみにしております」
司会者が述べると一人ずつ名前を呼びローブが授与されていく。私の番になり名前を呼ばれた。
「クロエ・エルヴェール!」
緊張しつつ前に出る。グリンダ先生から直接ローブを受け取り胸に抱く。
「よく来てくれたね。『未来』が楽しみだ」
小声で言われた言葉に背筋が伸びた。未来の私を知るグリンダ先生。彼女も私の知らない私を知っているんだろうか。
「ありがとうございます」
受け取ったローブを改めて確認すると裏地に魔法陣のような模様が刻まれていることに気づいた。セシアから教えられたところによるとこの正式なローブには保護魔法が施されており防御性能を高める効果があるという。
すべての新入生への授与が終わると最後にクラス割りが発表された。67名がA〜Dの4クラスに分かれる。名前が次々と読み上げられ自分はAクラスだった。
「クロエ様と同じクラスですわ!」
アリサさんが嬉しそうに近づいてきた。どうやら彼女もAクラスらしい。カイルくんはDクラスになったが講義によっては同じ授業を受けることになる可能性もあるとのこと。
「これからは毎日お会いできるのですね!嬉しいです!」
アリサさんが瞳を輝かせる。クラスメイトになれたことは僥倖だ。彼女がいれば心強い。一方カイルくんは少し寂しそうに微笑む。
「クロエ嬢。これからもよろしく頼む」
「カイルくんもよろしくね」
互いに握手を交わす。そうして入学式は幕を閉じた。




