(14)転生少女は、新緑のローブに身を包む
春の陽射しが差し込む朝。窓を開けると清々しい空気が流れ込んでくる。いよいよ入学式の日だ。広大な大講堂で行われる式典に参加するため、早起きして準備を整える。制服に身を包み鏡の前で最終チェック。
「緊張してますか?」
「正直なところ少し……でも楽しみな気持ちもあるかな」
「クロエ様なら大丈夫です」
そう言うと昨日届いたばかりのローブを広げた。
「これが新緑のローブ……芽吹き(ブライニス)クラスの証拠ね」
若草色を基調としたローブは滑らかな触感で軽量だ。左胸には魔法学院の紋章である双頭の鷲が刺繍されている。新入生全員が最初に所属するクラス「芽吹き(ブライニス)」の象徴だ。その上品な緑は生命力溢れる春の訪れを感じさせる。
「新入生は全員ブライニスクラスになります。1年に1度の昇級試験に合格出来れば、次の『枝垂れ(カデュエル)』クラスへ進級できます」
「それぞれの階級でローブの色が変わるんだね」
「そうです。新入生が芽吹き(ブライニス)は新緑色。次に枝垂れ(カデュエル)は群青色、花咲き(フロワーヴァ)は深紅色、実り(コルンディア)は黒金色と続きます」
セシアが丁寧に説明してくれる。ローブの色は単なる飾りではなく、学院生活における明確な序列を示す指標となる。これは魔法学院独自のシステムだ。新入生はまず緑のローブを与えられ、昇級するたびにローブの色も変わっていく。
「このローブは儀礼用のものだそうです。正式なローブは入学式に渡されるそうですよ」
「そうなんだ。じゃあこれで出席して正式なものは式典中に貰うのね」
私は緑のローブを羽織る。袖を通してみるとぴったりのサイズだった。私のサイズ合わせてわざわざ誂えてくれたんだろうか。制服と合わせても違和感なく馴染む。
「とてもお似合いです」
「ありがとう。それじゃあ行ってくるね」
「はい。お帰りお待ちしております」
セシアに背中を押されるようにして玄関へ向かう。翡翠館を出てしばらく歩くと大講堂への入口が見えてきた。既に多くの新入生たちが集まっており、それぞれ緑のローブを纏っている。
「みなさん!おはようございます!新入生の方はこちらにお並びください」
甲高い声が響き渡った。案内係の職員が学生たちを順番に列に並ばせていた。慌ててその列に加わる。周囲を見渡すと見覚えのある顔がちらほら……。
「あら!クロエ様!」
「あっ!アリサさん!おはようございます!」
金髪碧眼の少女が駆け寄ってきた。どうやら無事合格していたようだ。隣にはカイルくんもいる。
「お久しぶりです。アリサさんもカイルくんも入学式から一緒だね」
「実は試験結果が届いたとき泣いちゃいました」
アリサさんが照れ臭そうに微笑む。どうやら本当に心配していたらしい。カイルくんは彼女の横で静かに首肯する。
「クロエ嬢も同じローブだな。みんな一年生だから当たり前だが」
「新入生は全員芽吹き(ブライニス)クラスで新緑のローブだからね」
「クロエ様は飛び級で上のクラスになると思いましたのに……」
「ないない!私には無理だよ〜」
三人で話をしているうちに行列が動き出し講堂へと導かれた。天井高く穹窿状のドーム型の空間は荘厳な雰囲気だ。正面には演台があり両脇には教員たちが並んでいる。座席に着くと周囲の新入生たちも静かに腰掛けた。




