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転生少女は、未来からの手紙をもらう  作者: あどん


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入学試験の裏側で語られる評価

魔法学院・中央棟二階。

第三講義室では、入学試験を担当した教員たちが集まり、今日の試験結果について話し合っていた。


「いやぁ〜、傑作だったねぇ! あの娘の魔法は」

「まったくですな、グリンダ様。あれほどの逸材は久しぶりです」

「壁に穴を開けるなんて前代未聞ですよ! 修理費、誰が払うと思ってるんですか!」

「それより問題なのは、あの壁が魔法防壁加工されていたことですよ。それを破壊するとは……」

「やれやれ。さすがは子供とはいえクロエだね。しかし、今年の新入生は実に豊作じゃないか」


グリンダと呼ばれた老齢の女性教授が、満足げに頷く。

彼女は学院長にして、魔法理論の権威。その隣には若手ながら鋭い観察眼を持つエマ教授、そして壁の修理費を嘆くアルベルト教授など、錚々たる顔ぶれが揃っていた。


「筆記試験トップは、やはりカイル・フォン・アルストロムでした。全問正解は彼のみです」

「ほう。さすがはアルストロム侯爵家のご子息だ。知識量は申し分ない」

「はい。ただ、実技は……」

「もともと箔を付けさせる目的と聞いている。その辺は目をつぶろう」


事務方の教授が報告書を読み上げると、グリンダは少し残念そうに眉をひそめた。

続いて、別の教員が席を立つ。


「実技では、アリサ・フォン・ヴィントシュタット嬢が二属性を同時行使。相克属性にもかかわらず、高い制御を見せました」

「まさに“ウイッチ”の称号に相応しい。しかも努力家と聞く。あの年でウイッチとなれば、久しぶりに三属性持ち――“ウイザード”が見られるかもしれない」

「それを超えたクロエ・エルヴェール嬢は、まさにエンシェントだな。魔力量も桁違いだ」

「ただ、筆記試験はギリギリ及第点でしたが……」

「ギルバート・ドンケルハイマーの魔力量にも驚かされました。クロエ嬢がいなければ、彼が首位だったでしょう」

「ふむ。筆記もまずまずだ。粗削りだが伸び代は大きい。鍛え方次第で化けるだろう」


教授たちの意見交換は続く。

だが、話題の中心にあるのは――。


「やはりクロエ・エルヴェール嬢が規格外です。あの大砲のような魔法……あれ、初級魔法でしたよね?」

「本人にとってはそうなんだろうさ。クロエを相手に、我々の常識は通用しないよ」


グリンダは腕を組み、遠い目をする。

クロエの魔法を思い出しているのだろう。


「グリンダ様。クロエ嬢とは、お知り合いのようですが……以前に会ったことが?」


若い助手の問いかけに、グリンダは意味深な笑みを浮かべた。


「あんたはクロエを知らないんだね。――クロエ式魔力属性判別法、聞いたことはあるだろう?」

「はい。魔力の質によって色が変わる……現在の魔力量判定用水晶玉に使われている技術ですよね。まさか……」

「それを考案したのが、クロエさ」

「えっ!? あ、あの子は、まだ八歳だと聞いていますが……」

「だから“未来の”彼女の話さ。まあ、その辺は気にしなくていいよ。途轍もない才能を持っているのは、確かなんだから」


その言葉に、若手教授たちは納得したように頷いた。

グリンダには確信がある。――何せ、未来のクロエを知っているのだから。


「他にも、面白そうな子がたくさんいましたね」


研究員風の教授が、資料を整理しながら言った。


「注目すべきは、ルーナ・ブラッドリーです。彼女は希少な闇属性の持ち主で――」

「闇属性? あの判定水晶で検出できたのか?」

「はい。従来型では難しかったでしょうが、近年導入された改良型で判明しました」

「試験では土属性を使用していました。本人も、自分の闇属性適性に気づいていない可能性があります」

「ほう。それは興味深い」


グリンダは唇の端を吊り上げる。

闇属性は使い手が少なく、未知の部分が多い。それだけに魅力的だ。


「覚醒すれば、ウイッチになれる逸材です」

「去年のフィオナ・エルヴェール嬢の例もあります。四属性を扱えなくても、入学試験を受けられる――あるいは適性を調べられる仕組みを、早急に整える必要があるでしょう」

「それについては、ライゼル殿下の後押しもあります。今後は制度として定着させていきましょう」


別の教授が資料を捲りながら口を挟む。


「ミレイユ・フォン・カステルも珍しいケースですね。水属性でありながら、回復魔法に高い適性を示していました」

「カステル男爵家の庶子か。自己主張は控えめだが観察眼は鋭い。基礎学力も十分だ。早めに回復魔法を学ばせるのもいいだろう」


年嵩の教授が頷く。


「エイデン・フィンレイも興味深い。あの年で、すでに緻密な魔法制御を行っていた。精密操作を求められる分野で活躍するだろう」

「魔法構築スピードも速いですね。応用力の高さは認められます。筆記成績もカイルに次いで二位。実技次第では、学年主席も狙えます」


評価表を見ながら、別の教授が補足する。


「とはいえ……実技に関しては、どうしてもクロエ嬢と比べてしまうな。いや、比べるのが間違いか」

「クロエ嬢は、知識面を補えば飛び級も可能かと思いますが……」

「それは危険すぎます。彼女を普通の尺度で測るのは無理がある。下手に飛び級させたら、何をしでかすかわかりません」


現実的な懸念に、教員たちは苦笑する。

脳裏に浮かぶのは、あの“壁の穴”だ。

グリンダも肩をすくめて同意した。


「クロエ嬢は、まず基礎課程から進めてもらおう」

「はい。それが妥当でしょう。ただ、特別授業として上級クラスの講義を受けさせるのはアリかと。現時点でも規格外ですから」


さまざまな意見が飛び交い、今年の新入生たちへの期待が高まっていく。


「まあ、とにかく! 今年の新入生は粒ぞろいだね。指導のしがいがあるってもんさ」


グリンダがパンと手を叩くと、周囲の教授たちも同意するように頷いたのだった。

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