047「子ども座談会(1)」
アナスタシアと孤児院長がフィアライト侯爵家へと向かった日の午後。
「「「「「あ〜終わったー!」」」」」
そう言ってグデ〜とテーブルに突っ伏したのは狼種の獣人リッツ。黒のもふもふ尻尾もグデ〜としている。同じように他の子供達も皆疲れた様子で一息つく。
「今日も完売したね!」
「うん! すごいよね!」
「あ〜ポテトフライ残ってないのか〜」
ポテトフライの販売が始まってからはずっと盛況だったため、1時間の昼休憩はあるものの店じまいをする午後3時までほぼ休みなしで働いていた。
「みんなお疲れ様。ポテトフライどうぞ〜!」
そういって厨房からシエラとファラが2枚の大皿に分けた揚げたてのポテトフライを出した。
「ええええ! い、いいの!?」
「うん。孤児院長が今日アナスタシアと自分は帰りが夕方になるから仕事が終わったら皆でポテトフライを食べておきなさいって!」
「で、でも、いくらなんでもこんなにいっぱい作って⋯⋯大丈夫なの?」
ヴィラが大盛りのポテトフライを見て「ちょっとやりすぎなのでは?」と心配そうな表情でシエラに確認する。
「大丈夫よ! 孤児院長が『今日の販売分とは別で⋯⋯』って言って私たちの分のじゃがいもを用意してくれていたから」
「ええええ! うそぉー!」
「こ、孤児院長がっ?!」
「うん。私も孤児院長にそう言われた時はビックリしたし、孤児院長に一度確認もしたわよ。でも『構わない』って」
シエラの話を聞いて皆がシーンとなる。
「と、とりあえず、冷めないうちにいただきましょ!」
「そ、そうだね」
「「「「「いっただっきまーーーすっ!!!!」」」」」
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「てかさぁ、今回のこのポテトフライの大盤振る舞いもそうだけど最近、孤児院長って優しいよな」
突然、脳筋ラッセルがそんなことを言い出した。すると、
「あ、わかるー! 私もそう思った!」
そこでシエラが乗っかってきた。そしてそれを皮切りに「俺も!」「僕も!」「あたしも!」と皆も次々に手を上げる。
「でも、何でいきなり優しくなったんだろ〜?」
「いや、別に孤児院長って昔から優しくはあったと思うぞ?」
「リッツ?」
「だって、アナが病気で倒れたときも助けようと必死な感じだったし」
「「「「「へ〜そうなんだ〜」」」」」
皆がリッツの言葉に耳を傾ける。
「まーたしかに昔から孤児院長って口数が少ないだけで、別に叩いたり嫌なことをするなんてことはなかったよな」
「そうね。ただ口数が少ないしいつも眉間にシワ寄せた顔つきが多いから怒ってるみたいで怖いってのはあったけど」
どっ! わはははは!
ヴィラの言葉に皆が一斉に吹き出す。
「そうねー。ヴィラの言う通り、孤児院長って見た目はちょっと怖いからねぇ。それにあまり私たちと関わることがないから余計にビビっちゃうわね」
うんうんと皆が腕を組みながら首を振る。
「で、でも、最近は孤児院長の雰囲気が優しくなった感じがする⋯⋯」
「ファラ?」
そう呟くのは最年少のファラ。アナスタシアが料理の才能を見出して今回の厨房担当に抜擢された少年。
「この前、孤児院長に頼まれてポテトフライを作った後孤児院長に持っていったら『これはファラが作ったのか?』って聞かれてそれで『はい』って答えたその場でポテトフライを一口食べて『うむ。いい腕だ。精進しなさい』って褒められたんだ」
「「「「「えええええええええっ!!!!!」」」」」
「う、嘘ぉー! 孤児院長がっ?!」
「う、うん」
「すごいじゃないか、ファラ!」
「う、うん。すごく嬉しかった!」
顔を赤くしながら嬉しそうに答えるファラに皆が「おおおお⋯⋯」と感嘆の声を漏らす。
「で、でも、ファラの言う通り、孤児院長って最近すごく雰囲気が柔らかいのは私も感じる!」
そう発言したのはファラと同い年のミネア。彼女もまた最年少ながら子ども先生アナスタシアの『アナスタシア式学習塾』において計算の才能を発揮し『会計役』に抜擢された少女。孤児院最年少の2人は優秀でアナスタシアも期待を寄せている。
「うん。私もそう思うー!」
「私もー!」
そこで乗っかってきたのは双子の姉妹セーラとアイラ。彼女らはどちらかというとラッセルやリッツと同じ『脳筋組』である。
「でもさー、それを言ったら一番変わったって言ったら⋯⋯アナスタシアよね?」




