043「領主のフィアライト侯爵家に行ってみた(3)」
「売り上げの半分だと? ふざけるな! それでは《《あまりに少な過ぎ》》だろうがっ!!」
「そうですよ、孤児院長! それではあまりに吹っかけ過⋯⋯⋯⋯は?」
ん? 今何つった?
カイゼルさん、今何つった?
「⋯⋯7割だ」
「は?」
「孤児院へは売り上げの《《7割》》を渡す!」
俺はカイゼルさんの言葉につい「は?」と声を漏らしてしまう。
いやだっておかしくね? 今の話の流れだと「取り過ぎだ!」って怒られるところじゃん? それなのにカイゼルさんは孤児院長の要望以上の数字を出してきたんだけど! いや、マジで何でっ?!
すると、どうやら孤児院長も同じことを考えていたようで、
「は? 何を言ってるんですか? それに《《少な過ぎ》》って怒り方おかしいでしょう?」
とカイゼルさんに思いっきり孤児院長らしさ全開で疑問を投げつけた。もうそれはそれは豪速球。しかも内角高めいっぱいいっぱい。
ていうか孤児院長さぁ、それはその通りなんだけどさぁぁ! 何でさっきから侯爵家当主に対してこんな強気な発言連発できんの! 孤児院長ってそんな無神経な人じゃないはずなのに何で?!
しかし、幸か不幸かカイゼルさんは孤児院長の言葉を気にしていないようで、孤児院長の言葉にすぐさま反論をぶつけた。
「馬鹿者! じゃがいもは食用となるという発見、さらにはそのじゃがいもを使った加工品『ポテトフライ』の開発。またそれに留まらず『貴族用ポテトフライ』の立案をし、さらにはその貴族用ポテトフライの差別化として『赤い悪魔』といわれる人間にとって毒だと言われてきた『トマト』を使うという発想。しかもトマトもじゃがいもと同じく食べられる上に加工品である『ケチャップ』というものは万能食材⋯⋯などなど、これだけの発見やアイデアはすべてアナスタシアちゃんから出たもの。それを私が横からしゃしゃり出てきて『貴族用ポテトフライ』の売り上げをごっそり取るなどできるわけなかろうがっ!!」
シーン⋯⋯カイゼルさんの言葉に場が静寂に包まれる。そりゃそうだ。今のカイゼルさんの発言は貴族⋯⋯しかも『侯爵』という上位貴族の当主の発言としてはあまりに非常識な発言だったからだ。
それは当然孤児院長も感じているだろう。なので一瞬静寂に包まれたもののすぐに孤児院長がカイゼルさんに返事を返した。
「そういう矜持もわかりますが、しかし私と彼女は孤児院の者です。 それを領主様のフィアライト商会を利用できるのであれば正直半分でもだいぶ吹っかけたつもりだったのですが⋯⋯」
孤児院長、良く言った! 俺もまったく同じ考えです!
しかし、カイゼルさんは同じ考えではないようで⋯⋯。
「フン、そんなわけあるか! 孤児であるアナスタシアちゃんが発見しさらにはアイデアを形にした事業にほんの少し手を貸すだけで利益の半分も取るなど、それこそ侯爵家として恥知らずもいいとこだ!」
す、すごい⋯⋯カイゼルさんって懐深過ぎじゃね? お貴族様ってもっとがめつい強欲なイメージだったけどカイゼルさんはそんなことは全くなく、むしろ懐の深いただのめっちゃかっこいいおじさんって感じだ。
しかし、貴族⋯⋯しかも侯爵という身分でこの対応は大丈夫なのだろうか⋯⋯?
「いやカイゼル様、それはさすがに貴族としておかしい態度でしょう」
しかし、孤児院長は納得いかないということをわざわざカイゼルさんに言って食ってかかった。いや何でそこで食ってかかるのよ孤児院長! それ身分の下の者がやったら絶対ダメなやつでしょ!?
俺は孤児院長の行動に「ひぃぃ」と戦慄を覚えた。やばいって⋯⋯今の発言は絶対やばいって⋯⋯。俺は「もうダメだ」と内心処罰を覚悟する⋯⋯⋯⋯その時だった。
「はぁぁぁ⋯⋯お前こそ何を言っているのだ、《《クロ》》?」
「え?」
クロ? 今、カイゼルさん孤児院長のこと『クロ』って⋯⋯?
「もういい。《《茶番》》はおしまいだ」
「え? 茶番?」
「クロ、言っただろう? 私はアナスタシアちゃんを全面的に支援すると? なのに収益の話でわざわざ私につっかかってきてどうする?」
「え? え? 全面的に⋯⋯支援?」
「私はお前の《《父親》》なんだぞ? 自分の《《息子》》の性格も才能もちゃんとよくわかっておる。そんな優秀なお前のたっての希望だから私はアナスタシアちゃんの支援を受けたんだぞ? それならば収益《《なんぞ》》の話でつっかからずただ感謝して流せばよかっただろうが」
「は? カイゼルさんが孤児院長の《《父親》》? え? え?」
「はぁぁぁ、なぜそこで自ら私のことをバラすのですか⋯⋯⋯⋯《《父上》》」
「ち、ちちちち、父上ぇぇぇ!!!!」




