040「覚悟と決断。そして」
「ポテトフライの販路拡大、貴族との事業展開⋯⋯⋯⋯本気か?」
「もちろんです!」
アナスタシアが手を挙げながら前のめりに孤児院長に訴える。
「さっきも話した通り、ポテトフライはこの領都だけじゃなくて他の領都、いえ国を越えて諸外国にまで事業展開できると思っています。だってこのポテトフライって他では売ってないんですよね?」
「ああ、そうだな」
「あと『じゃがいも』も他の領都同様『人間には毒』ということで食用にはなってないんですよね?」
「ああ、おそらくな」
「であれば、他でもこの領都で起きているような売れ行きになる可能性は高いですし、原料が『じゃがいも』なので利益率も高い! つまり『約束された勝利』だと思うんです!」
「約束された勝利かどうかはわからんが、たしかに君が言う通り売れる可能性は高いだろうな」
「ですよね! そしていずれはポテトフライは国を越えて他国まで及ぶ、私はそう考えています⋯⋯」
そういってアナスタシアは一度大きく深呼吸をする。そして、
「ということで孤児院長、パトロンを紹介してください!」
アナスタシアがドーンとドヤ顔で孤児院長に訴えた。
「君の言っていること、やりたいことは概ねわかった」
「それじゃあ⋯⋯!」
「その前に聞きたいことがある」
「聞きたい⋯⋯こと?」
「ああ。君はポテトフライを⋯⋯いや違うな。君自身これから何をしたいと思っているんだ?」
「え? これから⋯⋯したいこと?」
「ああ。君がやろうとしていることはかなり規模の大きな話だ。それは一体何のため、誰のためなんだね?」
「それはもちろん自分のためです⋯⋯⋯⋯けど!」
そういって、アナスタシアが一度目を瞑り言葉を止める。時間にしてほんの2〜3秒。そして、再び目を開いたアナスタシア、その瞳には覚悟を決めた強い光がたしかにあった。
「孤児院の子供達、いえ、孤児院自体が潤うことで豊かになって貧しさを無くしたい! それはこの領都だけでなく他の街や村⋯⋯それこそ、この国だけでなく他の国もマルっと含めて、この世界から貧しさを無くしたいです!」
「なっ?!」
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——アナスタシア視点
「孤児院の子供達、いえ孤児院自体が潤うことで皆が豊かになって貧しさから解放させたい! それと、これはここだけでなく他の街や村⋯⋯それこそこの国以外の他国もまるっと含めてこの世界から貧困を無くしたいんです!」
「なっ?!」
孤児院長が俺の覚悟を試すようなことを聞いてきたので、俺は「ここだ!」と覚悟を決め『盛大なブラフ』をおもいっきりかました。
正直、俺は「この世界から貧しさを無くしたい」なんて本気で思うような殊勝な人間ではない。ただ、これくらい大きい目標をぶちかましたほうが、孤児院長から貴族のパトロンを紹介してもらえると踏んでの作戦だった。
そりゃ、本当にこの世界から貧困を無くすなんてできればそれはとても素晴らしいことだ。しかし、そんなの俺にできるわけがない。なんせチート能力さえ持っていない『前世の現代知識』があるだけの普通の人なのだから。
そんな俺ではあるが「ここは勝負所!」ということでこのような『盛大なブラフ』をぶちかましていただいたのだが⋯⋯果たして孤児院長にこれがどう響いただろうか。
孤児院長は俺の発言を聞いてずっと考えている。いつもよりも眉間に皺を寄せうんうん考えている。俺は孤児院長の決断をそのまま静かに待った。そして、
「アナスタシア⋯⋯」
「は、はい」
「いいだろう。君にパトロンとなる貴族を紹介してやろう」
「え? ほ、本当⋯⋯ですか?」
「ああ、本当だ」
「あ、ありがとうございます⋯⋯!」
よっしゃ、賭けに勝った! よかった⋯⋯覚悟を決めて盛大なブラフをかまして本当によかっ⋯⋯、
「ということで、アナスタシア。早速なんだが⋯⋯」
「はい?」
「明日、そのパトロンのところへ伺うのでそのつもりで準備しておくように」
「へ? あ、明日⋯⋯ですか!?」
「ああ、それでその貴族のパトロンだが、名は『カイゼル・フィアライト』という」
「カイゼル・フィアライト⋯⋯⋯⋯ん? フィアライトってたしかここの領主様もフィアライトでしたよね? 同じ家名で貴族ということは、もしかして領主様の親戚筋に当たる方とかですか?」
「いや違うな。領主のカイゼル・フィアライトだ」
「あ〜領主のカイゼル・フィアライト様⋯⋯⋯⋯え? 領主?」
「君に紹介する貴族のパトロンとは、この地の領主であるフィアライト侯爵家当主『カイゼル・フィアライト』だ」
「は? はああああああっ?????」




